123 何をぬかす。このヘタレがあっ!w
何やかやでみなさんそれぞれの教室に向かう。変人いやもとい個性派揃いの学校だけど、こういうところは真面目なのだ。
朝から泣いたり叫んだり大忙しだったサダヨシも当たり前のように教室に向かう。
そして、エリスだ。これがまた普通に教室に向かっている。意味が分かって向かっているのか、周りがみんな向かっているからとにかく向かっているのか、さっぱり分からない。
とにもかくにも何事もなかったように僕の前を歩いて行くエリス。まあこのまま無事に収まればいいんだけど。
と思っていたら、いきなり振り向くエリス。うわ、何か怒っている顔しているぞ。
「オキムネッ!」
なっ、ななな、何かな?
「このヘタレ」
エリスはそれだけ言うと、またプイと前を向き、すたすたと歩いて行った。
何なのよもう。
◇◇◇
クラスの中はわいわいがやがや大騒ぎ。だけど、今朝の僕の巻き込まれた案件ばかりが話題になっているわけではないことにホッとする。
エリスは相変わらず不機嫌そうな顔で座っているし、気にはなるけど。余計なことを言うとを藪蛇つつきそうで怖い。
そうこうしているちに鵜鷺先生が入ってきた。
「はいっ、ちゅーもーく。今日は職員会議が押しちゃったんでちゃっちゃとやるよ。えーと」
はいはい。職員会議が押したのがサダヨシとR-2号が余計なことをしまくったからですよね。申し訳ないです。
「伝達事項はこれで全部かな? あ、そうそう。新田君に剣汰瓜さん、アールニゴウさんが今日戸籍謄本持参してきたのよね。綺麗な金髪碧眼だけど、親類の剣汰瓜さんと同じ日本国籍なのね。ビックリしたわ。社会科の教員である私が言うのもなんだけど、国際化進んでいるね」
「何を言うかーっ! ピョンちゃん先生っ!」
わあエリスが立ち上がったぞ。
「このあたしは誉れ高き『地球ケンタウリ帝国皇帝』なのだっ! そして、R-2号は最新型の高性能アンドロイドなのだっ! 断じて『日本国籍』などではないモゴモゴモゴ」
「あーっ」
慌ててエリスの口を右手でふさぐ僕を指差すサダヨシ。何だ何だ?
「わーん。ピョンちゃん先生―っ、オキムネがまたエリスちゃんに『顎クイ』してるー」
ザワッ
またこれかー。えーい、エリスが余計なことを言い出すのを止めるたびに『顎クイ』と言うのはやめい。
「わーん。ピョンちゃん先生―っ、オキムネがまたキスしようとしているー」
サダヨシー。煽るなー。
「キース」
「キース」
「キース」
また、このパターンか?
「オキムネッ!」
わっ、ビックリした。何だ? エリス。
「こっ、こここ、今度こそキスするのかっ?」
せんっ! さっき校長先生に人前でするなと言われたばかりだろうがっ!
「何をぬかす。このヘタレがあっ!」
えーいヘタレヘタレと。このまま行けば鵜鷺先生が止めてはくれるだろう。しかし、今日は朝一から挑発を続けよってからに。かくなる上はだなっ!
 




