122 人前でなければ「金塊」ゲットw
「はいはいはいはい」
校長先生、ぱんぱんと手を叩いて前に出てくる。このパターン、前もあったけど、やっぱここは止めてもらわないと。
「映画やドラマの撮影じゃないんだから、人前のキスはほどほどにね。はいはい。もう教室に行って。鵜鷺先生、職員室行くよ」
「「「ブーッ!」」」
たちまち起こる女生徒のみなさまからのブーイング。
「みんな、キスは人にけしかけるんじゃなくて自分でやりなさいな。あ、根小屋先生、アールニゴウさんにチラシと横断幕を燃やして出来た消し炭も片づけるように言って」
「イエッサー。校長先生。アールニゴウさん、あの消し炭を片付けるんだって」
「消シ炭ヲ片ヅケル?」
「要はあの場所からあの消し炭をなくせばいいんだよ」
「アノ場所カラナクナレバイイノカ?」
「そうそう。さすが私の彼ピ、理解が早い。
ん? 何かこの展開、さっきもあったような気がしますよ。ねこや先生。
◇◇◇
ギュオオオオオーン オーン
はい。この音はですねえ。消し炭に近づいたR-2号が大きな口を開け、消し炭を全て吸い込んだ音ですね。まあ消し炭と一緒に校庭の土も吸い込んでますが。これ一台で火炎放射器と強力掃除機の機能を併せ持ちます。これは便利! 一家に一台ケンタウリ星製のアンドロイド。とか言っている場合でもないよね。はあ。
「キャーッ! アールニゴウさん、凄い! イケメン筋肉質は肺活量も抜群!」
ねこや先生は通常モードだからいいとして、他の方々の反応は?
キーンコーンカーンコーン
うわ、ついにチャイムが鳴った。
「うわっ、チャイムが鳴った。職員会議始めないと。行くよ、鵜鷺先生。さんはい、アールニゴウさんは『奇術師』」
「はい。校長先生。アールニゴウさんは『奇術師』」
「アールニゴウさんは『奇術師』」
「アールニゴウさんは『奇術師』」
校長先生と鵜鷺先生、「アールニゴウさんは『奇術師』」と言いながら、脇目も振らず、職員室に向かって歩く。うーん。時にはそういうことも必要なのかもしれませんが。
「はーい。チャイムも鳴ったし、みんなは教室にね」
校長先生と鵜鷺先生が行ってしまったので、ねこや先生がみなさんに声をかける……のはいいけれど、R-2号にぶら下がったままですが。
それでも、
「へーいへい」
「くっそーっ、ねこや先生はいいなあ。彼ピがいて」
「そういえば……ちゃん。……君のことはどうなの?」
「あー、あれはねえ」
終わった。永遠に終わらないんじゃないかとも思えた四日目の朝が終わった。
「オキムネ」
わ、何だエリス。急に顔を近づけるな。びっくりするじゃないか。
「キスはどうした? キスは?」
いやだって、それはさっき校長先生が言っただろ。映画やドラマの撮影じゃないんだから、人前のキスはするもんじないって。
「ほう。では人前でなければいいのだな?」
いっ、いやそれは……
「よし、人前でなければ『金塊』ゲットと」
結局それかよ。いやそういう話ではなくてだな。




