12 「みんな違って、みんないいっ!」とはそういう時に使うのか?w
うっわー、見るからに楽しそうだ。女の子も満更じゃなさそう。
何となく見てると、サダヨシも僕が教室に来たことに気付いたらしい。それはもう満面の笑顔で振り返った。
そして、隣の詩田文子さんに「いろいろありがとう。またね」と言うと、僕のところに来た。
「オキムネ。おはよう」
おはようって、おまえ、もう今朝一回会ってるじゃん。
「彼女は詩田文子ちゃん。見ての通りクラスメイトだよ」
ツッコミはスルーですか? さっきのあの騒ぎは何だったんだ?
「車が好きなんだって。学校出たら、自動車教習所の教官やりながら、カーレースもやってみたいって。素敵じゃん。かっこいいじゃん」
うんまあ、一本筋が通った夢を追う娘っていいよね。
「あ、オキムネ。おまえは駄目だぞ。おまえには絵栗鼠ちゃんがいるんだからな」
いや、僕は絵栗鼠と付き合ってるわけじゃないっつーの。と言うか僕は詩田さんと付き合う気もないから。つーか、サダヨシ。おまえ、詩田さんに告白するの?
「いや……」
サダヨシは真剣な顔。こんな顔は見たことないぞ。今回のこと本気なのか?
サダヨシはおもむろにスマホを操作。ある画面を僕に見せてきた。へ?
「見ろ。彼女は神田間咲」
なっ、何? カンダ・マサキ?
「いや、『カンダ・マサキ』ではない。『カンダマ・サキ』。ここ大事!」
そこ大事なのね。で、彼女がどうかしたのか?
「彼女はアニメの声優さんたちが大好きでな。本人も演劇部に入部するつもりでいる。更に恋愛小説を書くのが好きで『なろう』に投稿しているのだ。素敵じゃないか。かっこいいじゃないか」
おまえさっき「なろう民」を悪口に使ってなかったか? それに最後の二つのフレーズ、使い回していないか。つーかそもそも「二股」か?
「『二股』ではないっ!」
サダヨシは僕の前に仁王立ちになると堂々と言い放った。そして、更にスマホを操作すると僕に見せてきた。
「見ろっ! 他にも素敵な女の子ちゃんはたくさんいるのだっ!」
おまえそれ「気が多い」と言わないか?
「自分は悪くないっ! それぞれに素敵な女の子ちゃんがたくさんいるからなのだっ! うむっ! 『みんな違って、みんないいっ!』」
なんでいい話みたいになっているんだ? おまえ、恨みを買うような話にだけはならんようにな。
◇◇◇
放課後。サダヨシは「素敵な女の子ちゃんの更なる調査」と称し、行ってしまった。
絵栗鼠はつかつかと僕に近寄ると
「オキムネ。あたしは早くも計画を実行に移すぞっ! 稼ぎ始めるからなっ! また夜に会おうっ!」
と一気に言い走り去ってしまった。
ままま待てっ! 大丈夫なのか? 絵栗鼠? 嫌な予感しかしないのだが……




