114 「彼ピ」って一体何だ?w
「あー頭痛い。昨日は張り切って飲み過ぎたー。何の騒ぎー? 頭に響くんだけど」
見るからに二日酔いという体で、トレードマークの猫耳を付けて現れたのは、はい、自称R-2号の彼女、養護教諭のねこや先生であります。
「って、!」
はいこれは目にされましたね、ねこや先生。「彼ピ」のR-2号が女子生徒のみなさま方に囲まれているのを。
「はいはいはいはい」
ぱんぱんと手を叩いて、猫耳ぴこぴこ動かしながらR-2号とそれを囲む女子生徒のみなさま方にゆっくりと近づいていくねこや先生。
「あー先生っ! おはようございまーす」
「先生。このお兄さん凄いんですよー」
「そうそう。さっきね。凄いアクロバット見せてくれたの」
「おまけに金髪碧眼でかっこいいんですよー」
「うんうん」
引きつった笑顔で女子生徒のみなさま方のお言葉を聴くねこや先生。怖い。これは怖い。
「確かにかっこいいよねー」
「「「「かっこいいですよねー」」」」
ねこや先生の言葉に笑顔で唱和する女子生徒のみなさま方。見ている僕の方が冷や汗が出てきます。
「でもね、この人、アールニゴウさんはねこや先生の『彼ピ』なんだよー。みんな手を出しちゃダメだからねー」
「うわああああああ」
断末魔のような悲鳴をあげたのは女子生徒のみなさま方ではありません。サダヨシです。
「アッ、アッ、アッ、アールニゴウさんは保健室の先生という『彼女』がいながら、女子高生のみなさまにもモテモテッ? ズルイッ! キタナイッ! トイレから出て手を洗わないっ!」
そう叫ぶとまたいずこかへと走り去るサダヨシって、待て待てっ! 学校へ持ち込んだ横断幕とチラシを片づけてから行けっ!
それから見ると女子生徒のみなさま方は強かった。
「えーっ、ねこや先生の『彼ピ』なんですかあ?」
「かっこいい『彼ピ』ですねえ」
「うらやましいなあ」
「ねえねえ、どうやって知り合ったのですか?」
このリアクションにねこや先生ご満悦。猫耳もぴこぴこぴこぴこ。
「『彼ピ』はねえ、私に会うために、保健室の窓を叩き割って入ってきたのよ。情熱的なの」
いやそれは、ねこや先生に会うために保健室の窓を叩き割ったんじゃなくて、エリスがねこや先生の治療を痛がったからなんですけど。この場でそれを言う度胸は今の僕にはありません。
「オキムネ。オキムネ」
む。R-2号。女子生徒のみなさま方がねこや先生のコイバナを聞きに行ったから、こっちに来たのか? サダヨシは横断幕とチラシを放り出して、泣いてどこかに走り去ったから、R-2号が片付けてくれよ。
「イヤ、オキムネ。サッキカラミンナ『彼ピ』『彼ピ』ト言ッテイルガ、『彼ピ』ッテ一体何ダ?」
R-2号、頼むから今この場でその疑問を口にしないでくれ。非常に面倒くさいことになるから。
「ちょっと新田君、剣汰瓜さん、これは一体どういうこと?」
わあ、担任の鵜鷺先生が左手に例のチラシ持って、右手で真っ赤になって項垂れているサダヨシの手を取ってやって来た!




