111 いっくぞーっ、ちこくちこくーw
エリスは僕のそんな疑問も華麗にスルー。サダヨシに命じて、付近を歩く高校生たちに避けてもらっている。まるでロケが始まるみたい。
なもんで、みんなそのまま学校に行かないで、こっちをじーっと見ている。おまけに人が集まってきた。やだなあ。また悪目立ちしそうだぞ。
「よーしオキムネ。ここに立っていろ。サダヨシはあたしが合図したらオキムネの背中を押せ」
何だかよく分からないまま、エリスの指示どおりセッティングされる僕とサダヨシ。
「いっくぞーっ、ちこくちこくー」
角の反対側からチクワ二本くわえて走ってくるエリス。これはひょっとしてあれってあれか?
と思った時は「もう遅い」。エリスの「今だっ! サダヨシッ!」の声とともに僕はサダヨシに背中を押され、走ってきたエリスと激突!
尻もちをついたエリスはチクワを口から離し、右腕を胸の前に持ってきて一言。
「きゅうううん」
くっ、何か可愛いぞ。
「うっ、うっ、うっ、うわああああああっ!」
◇◇◇
後方から上がる激しい叫び声の主は、言うまでもない、サダヨシだ。
「おっ、おっ、おっ、俺はいったい何を見せられているんだあっ!」
その気持ちは分かるぞサダヨシ。逆の立場だったら、僕も絶対そう思っていた。
「くっそーっ! オキムネのリア充ッ! ナチュラルボーン愛妻家っ! 不純異性交遊っ! 言ってやろ言ってやろっ! 先生に言ってやろっ!」
まっ、待てっ! サダヨシッ! 最後のやつは何だ? これのどこが「不純異性交遊」なんだっ?
走り去ろうとしたサダヨシを追いかけようとした僕の右肩をエリスががっちりと掴む。。
「オキムネ……」
どっ、どうした? 何だか涙ぐんでいるようにも見えるが? エリス?
「オキムネッ! このあたしが『きゅうううん』と言ったのだから、オキムネも『きゅうううん』と返せっ!」
え? えーとお。
「オキムネッ! オキムネはこのあたしに『きゅうううん』としたくないのかっ!」
うわあ、完全に泣いちゃっているよ。どうしよう。これ。
♪ちゃらんちゃん ちゃらんちゃん ちゃらんちゃん ちゃらんちゃん
ちゃらっちゃちゃちゃらららららー ちゃーららら ずんずん ずんずん ずずんずん
こっ、このテーマソングは?
◇◇◇
ばびゅーん
わあっ、エリスが泣いたもんだからR-2号が飛んできた。
ざわっ
ざわつく観客たち。今までは何だ何だこの小芝居は? と思っていたのが空飛ぶ金髪男が現れればそりゃあざわめくでしょう。ああ、頭が痛い。
R-2号の飛来に走り去ろうとしていたサダヨシも思わず足を止めた模様。
何故かこちらではなくつかつかとサダヨシに歩み寄るR-2号。え? 何でそっちへ行くの?
「サダヨシ。報告ダ。コノ写真ヲアゲヨウ」
ぶっ、それは今朝方、寝起きのエリスが僕にのしかかった時の写真じゃないか。
 




