11 ハートマークがたくさん書かれていた日には鬱陶し過ぎるw
「オッ、オキムネ。告白しないって言ったのに……」
いや、告白してないのは本当だから……
「こっ、告白してないっ?」
サダヨシのバックが真っ黒になり、ガーンガーンガーンという音が聞こえた(汗)。
「なっ、ならば貴様。彼女の方から告白したと言うのか? ぐっ、ぐぬぬぬぬ」
いや、絵栗鼠と僕はそういうんじゃなくてね。
「えっ、絵栗鼠ーっ!? 貴様、もう下の名前で呼ぶ関係なのかっ?」
いかん、何を言ってもドツボにはまる。
「うっ、わーん」
そうこうしているうちにサダヨシは泣きながら走り出した。わあっ、待て待て。話はまだ終わっていないぞ。
あわててサダヨシを追いかけようとする僕の腕を絵栗鼠が掴んだ。
「どこへ行くオキムネ。あたしの話をまだ聞いてないだろう」
するとサダヨシ、ちょっと離れた所で立ち止まり、こっちの様子をうかがっているし。猫か。おまえは?
「オキムネ。あたしも考えたんぞ。オイタニがいろいろ本とかDVDとか残していってくれたの見てな」
相変わらず僕の右腕を放さない絵栗鼠。
「きっ、昨日の今日で腕組みデートッ! オキムネ、貴様という奴はっ!」
だーかーらー違うんだってっ! サダヨシ。
「うわーんっ! オキムネの裏切り者ーっ! むっつりドすけべいっ! 合法ロリ好きいっ! 貧乳マニアーッ! R18ギリギリラノベコレクターッ! なろう民ーっ!」
なっ、なっ、これだから変にお互いを知ってる奴は嫌だ。じゃなくて、待てーっ! サダヨシッ! そうじゃなくてだなーっ!
「うわーんっ!」
もはや僕の言葉にはまるで耳を貸さず、サダヨシは泣きながら走り去って行った。絵栗鼠に腕を掴まれた僕は追いかけようがない。
それから絵栗鼠は僕の腕を放さず、いろいろ話してくれたが、ほとんど頭には入らなかった。
これで学校に行ったら、黒板に「オキムネくん・エリスちゃん結婚おめでとう」の文字とともにハートマークがたくさん書かれていた日には鬱陶し過ぎる。
それに何よりまだ生活基盤が確立していない絵栗鼠が妙な形で注目を浴びるのも好ましくないだろう。
学校に向かう僕の足取りは重かった。
◇◇◇
「オキムネ。何故教室の扉を開けないのだ?」
絵栗鼠は不思議そうに聞いてくるが、これには事情ってもんがあるんだよ。
そうは言ってもいつまでもこのままというわけにもいかないので、僕はゆっくりと扉を開けた。
◇◇◇
おっ、黒板には何も書いてない。
そして、絵栗鼠はあっさり僕から離れ、自分の席に向かった。おっ? おっ?
いやそれよりもサダヨシだ。奴はどこだって、えっ?
何とサダヨシ。教室の片隅で女の子と二人で楽しそうに話してやがる。
座席表で見ると彼女の名前は詩田文子さんだ。




