107 この「むっつり肉食系」があっ!w
それでも起こさないとなあ。このまま「あんまりエリスの寝姿が色っぽいので起こせませんでした」などと言って家に戻った日にはだ。
「大事な婚約者を学校に遅刻させるとは何事だっ! お目覚めのキスをして起こして連れて来いっ! 連れてくるまで朝飯は出さんし、学校に行かせんっ! 担任の先生には『うちの息子がヘタレなので、今日は学校を休ませます』とあたしが電話しといてやるっ!」
とか言い出すのは容易に予想できる。
とはいえ、「お目覚めのキス」なんてものは出来るはずもない。ここは頭をポンポンと軽く叩いて起こすことにしよう。
そう思った僕が寝ているエリスに近づくと、「うっ、うーん」、エリスめ。またいいタイミングで色っぽい声を上げてくれる。くそう。
それでもめげずに寝ているエリスの脇に腰を下ろす。頭ポンポンはあくまで最終手段。出来るだけエリスの体に触れずに声がけで起こすべし。
おい、エリス起きろっ!
すーすー
起きろっ! エリスッ! 学校に遅刻するぞっ!
すーすー
エリスッ! 母さんが朝ご飯作ってくれて、一緒に食べようと言ってくれているぞっ!
すーすー
うーむ。こうまで寝起きが悪い奴とは知らなかった。
◇◇◇
こうなった以上、頭ポンポンで起こさざるを得なくなったなあ。母さん曰く「泥酔して大いびきをかいている父さんも頭ポンポンしてやればいびきが止まり、父さんも目を覚ます」と言ってたから、僕もそれで起こそう。
すーすー
うーん。地球人ではないから銀髪の銀色ボディーなんだけど、メタルヒーローズと違って、やっぱ人間なんだよなあ。こう柔らかそうだし、何だかいい匂いがしているような。
いかんいかん。考え込んでいる場合ではないぞ。えーと、まずはこうやってエリスの頭の方に手を向けてだな。
すーすー
うおっ、手のひらにエリスの寝息が当たった。何かこう温かくて……
って、こんなことをやってる場合ではない。再度、エリスの頭の方に手を伸ばしてと……
なでなでなでと。
あ、いかん、頭ポンポンするつもりがなでてしまった。
これでは起きない。再度手を伸ばしてと。
パチ
わっ、エリスが眼を開けた。眼が合った。
◇◇◇
「…… わっ、オキムネッ!」
ガツン
まっ、ままま、待てっ、エリス。急に立ち上がるから、頭が僕のあごに当たって……
「オッ、オッ、オキムネッ! 何をしにきたっ? まっ、まっ、まっ、まさかっ」
いや、単に僕はエリスを起こしにって、エリス、顔真っ赤だぞ。
「あっ、あっ、あっ、あたしの『皇帝の証』を見に来たのかっ?
ああ、「皇帝の証」。そんな話もありましたね。
「この『むっつり肉食系』があっ! よーし分かった。オキムネがその気なら、あたしはオキムネの『金塊』をもらうっ! さっ、今よこせっ! すぐよこせっ! とっととよこせっ!」
うわあああ、急にのしかかってくるなあ。
 




