105 寝起きは襲うな。お目覚めのキスだけにしろw
結局、エリスはふんぞり返ったまま、R-1号を従えて自分の家に帰っていった。と言っても隣ん家だけどね。
それを微笑んで見送る母さん。田舎で暮らしていた厨二だけど素朴で可愛い女の子が隣に住み着いたとしか思ってないんですよね。まさか4.367光年離れた異星の帝国の第五皇女が二体のアンドロイドを従えて建国しに来たとは言えないし、言っても「新刊のラノベの話?」とか言われるだけだろうし。
まあ先のことは分からないし、出来ることをやっていくしかないか。さっきエリスが僕を入れないで「緊急建国対策会議」をやると言っていたのがかなり気がかりだけど。何にしても今日も疲れた。今日はもう寝よう。
◇◇◇
ぐわららああ ぐおおおおお ぴっ
ぐわららああ ぐおおおおお ぴっ
目が覚めた。階下から聞こえる轟音で目が覚めた。
何の音かと言えば、これは父さんのいびきの音である。
その音量から察するに夕べは相当の大酒だったんだなあ。
枕元の時計を見ると朝の六時だ。ちょっと早いが起きるか。
◇◇◇
階下に行くと母さん、もう起きて炊事してた。おはよう。父さん、何時頃、帰ってきたの?
「朝の五時ごろ。それであたしも起きて、あの大いびきだからこっちは寝るに寝られなくて、早めにご飯作り始めた」
さすがに母さん、不機嫌そう。無理ないけどね。でも、よく朝五時に帰ってこられたね。タクシーとかもなかっただろうに。
「さあ。何しろぐでんぐでんに酔っ払っていて『この俺ですら十六で母さんと付き合い始めたというのに、十五で彼女が出来るとはオキムネのくせに生意気だ。でもエリスちゃんが可愛いから許す』と叫んで、そのまま玄関で寝ちゃった。送ってきてくれたアールニゴウさんが寝室まで運んでくれたから良かったけど」
え? R-2号が送ってきてくれたの?
「そうそう。でもアールニゴウさん、お酒強いのねー。全然変わってなかったわ。でも、どうやって帰ってきたの? と聞いたら、うちのお父さん抱きかかえて、空飛んで帰ってきたって言ってたから酔ってはいたみたいね」
母さん、R-2号はアンドロイドだから酔いませんし、父さん抱きかかえて飛んで帰ってきたというのは恐らく本当の話です。
◇◇◇
「まあ、この調子じゃ父さん、お昼まで寝てるだろうし、あたしは早くに起こされて、もう朝ご飯出来てるし、オキムネ、隣行ってエリスちゃん起こしてきな。朝ご飯食べようって」
何かもう母さんの認識ではエリスは家族ですな。まあいいや、昨日の「緊急建国対策会議」とやらで妙なことが決まってないかも気になるし、行ってみることにしよう。
「あ、オキムネ。いくらエリスちゃんが可愛いからと言って、寝起きを襲っちゃだめだよ。アールイチゴウさんもアールニゴウさんもいるからね。お目覚めのキスくらいにしときな」
寝起きは襲いませんし、キスもしません。




