1 謎のコスプレ少女w
僕は自分の眼を疑った。
そして、制服の袖で眼をこすった。
だけど、眼に映るその姿は変わらなかった。
陽光を浴びて輝く銀色の髪。
ロマンスグレーとかそういうんじゃない。
本当の銀色。まばゆく光っている。
僕の方に背を向けているので、その顔はよく見えない。
だけど、陶器のように白いのは遠目でも確認できる。
それだってコーカソイドのそれとは違う。
本当に人間かと思うくらい白い。そして、綺麗だ。
でだ、このことは言及しないわけにはいくまい。
そのボディーだ。
スピードスケートの選手のような体にピッタリついたコスチューム。
それも銀色で輝いている。
全般的にスリムだが、微妙に出るところは出ている。
うむっ! 実に僕好みだ。
という話をしたいわけではなく、僕の眼に映るこの少女のいる場所!
言っておくが、断じてコミケの会場ではないっ!
コスプレの女の子が当たり前にいる場所ではないのだっ!
じゃあどこにいるかって?
聞いて驚け!
この四月にこの僕、新田興宗が入学する高校! そこの入学式の会場なのだよ。
◇◇◇
これも言っておくが、僕が入学する高校は「芸能コース」とかがある学校ではないっ!
ごくごく普通の全日制普通科高校なのだっ!
それが何より証拠には、銀髪の彼女の他はみんーなっ、制服のブレザーです。
異論は認めるが、僕はセーラー服よりブレザーが好きだっ!
という話をしたいわけではなく、銀髪の彼女っ!
一体何なのよ?
更に解せぬのはだ。僕以外の他の新入生、いやそればかりではなく、在校生、先生たちも銀髪のコスプレ少女をまるで気にしていないのだっ!
僕が制服の袖で眼をこすった理由をお分かりいただけただろうか。
ではもう一度、制服の袖で眼をこするとしよう。
またまた言っておくが、制服の袖で眼をこするのは眼に良くない。
良い子は真似しないように。
◇◇◇
やはりだ。やはり銀色の髪に銀色のボディー。
しかも周りは全く気にしていないっ!
何故だ? どうしてだ?
「オキムネく~ん。さっきから何を気にしてるのかな~?」
◇◇◇
むっ、サダヨシ! 本名 本堂貞義。
この学校に何人か来た同じ中学出身者の中で最大の「腐れ縁」な奴である。
「ふむふむ。オキムネの視線の先をたどると…… ほうほう」
サダヨシ。おまえも気付いたか。あのインパクト抜群のコスプレ少女を。
「ちょっと待ってな」
懐からおもむろにスマホを取り出すと何やら調べ始めるサダヨシ。
つーか、サダヨシ。高校になって初めて使用許可が下りたばっかで、もうスマホを使いこなしているのか?
「うむっ! 彼女は剣汰瓜絵栗鼠っ! 風呂岸間中学の出身であるな」