#1 人生終了
「おお、勇者よ 死んでしまうとは情けない....」
「は?」
いつもの寝室で起きたつもりだった。ただ違う点が一つあった。
そこにいたのは一匹の白い羽に覆われたフクロウだった。
「死んでしまうとはってどういうことだよ。てかなんでお前は鳥のくせにしゃべることが出来るんだよ。突っ込みどころ満載だろ。」
俺はベッドの横にある椅子に座ってトリのほうを向いた。
「うるさい方ですねぇ。」
「だからそのままの通りの意味ですよ。あなたは死んでしまったんですよ。勇者の叙勲式を終えて壇上から降りるときに階段から足を踏み外して。」
「え?は?え?」
俺はその時初めて体が異常に軽く感じた。
「まったく情けない最後でしたねぇ。勇者は死んでも復活するみたいな噂あったんですがねぇ。」
「まあ勇者一人いなくなったところでこの世界は回っていきますからなんとかなるでしょう。」
「お疲れさまでした。とりあえず成仏しないのもなんかアレなんで成仏してもらってまた下界の人足りなくなったら呼びますんでその時までゆっくりお休みくださいな。」
目の前のフクロウは淡々と話を進めていく。それこそ他人事のように...
「いやいやいやちょっとまて勇者いなくなったらいろいろ困るだろ。魔王は誰が倒すんだよ!この世界の平和は誰が保つんだよ!ドラゴンとかと契約結んで世界を思うがままにして、そんで王様の娘と結婚するとかいろいろあるだろ!」
立ちあがってそう抗議した。
「最初のほうは勇者の役目ですけど、最後は下心と未練たっぷりじゃないですか...」
「と、とりあえずあんた、いわば天使的なやつなんだろ?つまりあんたが俺のこの後の行き先決められるんだろ?」
「そうですねそれが私の仕事ですから。」
「じゃあもうちょっと俺の魂をここに残しておくことだって可能なんだろ?」
「それは可能ですけどはっきり言ってそれは私とカミの契約違反なのでできませーーん。」
羽を広げて馬鹿にしたような態度でそう言ってきた。
「いや そこをなんとかぁぁ」
情けない声でそう俺は頼んだ。もう正直今の俺に勇者としての威厳は残っていなかった。
「どんだけ頼もうが出来ないものはできませーーん。いいからおとなしく成仏してさっさと天上の人となってください。私も人としゃべるの疲れるんですよ。普段こんなに話しませんから!」
「ほんとにこの仕事人手がホントに足りてないんで面倒ごと増やされるのホント勘弁なんですよ。」
........
「今なんて言った?」
「だーかーらー 人手が足りてないからさっさとくたばれって言ってるんですーーー」
「ふんふん なるほどぉ じゃあその仕事俺も手伝ってやるよ。」
「だから何回いわs... 今なんて言いました?」
「人手が足りてないなら、俺がその人手になってやるよ。」
「ここにいれば下界のこともたくさん知ることが出来るから飽きも来ないしな。」
「はい じゃあここにサインしてくださいね。書いたら渡していただければ魔法陣が展開しますんで成仏完了です。」
「え 今俺が言ってたことちゃんと聞いてた?」
「んー? なんか戯言言ってたのはしってますけど面倒ごとっぽいんで聞き流しました!第一ここで働くのもカミに認められたものでないと働けませんからーーーーーーー」
今までで一番の声量であった。
そしてその時目の前に白髪の執事の服を着た青年が現れた。
「え カミサマ?」
「コリンあんまり意地悪しちゃいけないよ。」
「別に意地悪してるわけじゃありませんよ。..ただこの元勇者もとい[下心山積み男]がヘンなことばっかり言うので..」
話を聞き終えるとカミは俺のほうを向いた。
「ふむ なかなか悪い奴ではないようだな。本当にここで働くのか?」
「まだ成仏するのはイヤだからな。この先の世界を見ていたい。」
「ほお、ならばコリンとともに仕事をしながら下界の様子を確認するといい。無論こんなことを許すのは初めてだがな。少しばかりお前がかわいそうだからな。」
「コリンは天使の中でも問題のあるやつを対処することが多いから一緒にいると楽しいと思うぞ。」
「ちょちょちょちょっとカミサマ?あなた正気ですか?なんでこんな[むさくるしい下心満載の洟垂れの現世に未練たれたれ野郎]と一緒にいなきゃならないんですか!反対です!」
「おい さすがに言いすぎだろぉお前ぇ!」
でもこのカミサマというやつは俺がここにいるのは賛成らしいな。
だったらこの機会を逃す馬鹿はいないな。
「えーっと、カミサマ?でしたっけそのお考えしかと承りました。私めをここで働かせてください。」
「決まりだな じゃあ細かいことはコリンから聞くがよい。私はそろそろ戻るとしよう。あとこれを渡しておこう。」
そういって渡したのは緑?いや青?それとも赤?..とても怪しげにそして魅力的に光る石だった。
「これはこの現世と天界をつなぐこの場所にいつまでもいられるように成仏しないように繋ぎ止めておくためのクサリのようなものだ。ペンダントにでもして身に着けておくといい。」
「なるほど ありがとうカミサマ。」
「えぇ ちょカミサマ私の言い分はぁ?」
そう言い終わる前にカミは姿を消していた。