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1-1 委任状 *

初投稿です。初めて小説を書いたので読みづらかったらすみません。

誤字脱字あるかもしれません。


少しコメディ寄り、恋愛要素は今のところ薄い予定です。

温かい目で見て頂けると幸いです。


続きはたぶん明日。

 

「……!君に、どうか……学校を、この学校を変えてほしい!」


 突然、どこかで見た事があるような黒髪で眼鏡の男子生徒に入ったことのない教室に引きずり込まれ、ものすごい剣幕で言われた。

 どことなく上級生なのではないかといった雰囲気だが、いきなりそんなことを言われても当然ながらなんのことだかわからない。

 変える?何を?という話だ。


「……は?わ、私……?」


 気の抜けた、間抜けな返事をしてしまった。

 人違いかと思い、周りをきょろきょろと見渡してみるが近くに人はおらず、確実に私に話していることがわかる。


「君だって学校の現状がおかしいのはわかっているでしょう?」

「っ……?」


 一見すると特に目立った特徴もなく普通と言えそうな高校なのだが、確かにおかしい点がある。おかしいという表現よりも自由を売りにしているといった方が聞こえはいいかもしれない。

 私立高城(たかしろ)高等学校。”生徒の自主性を尊重する”、これがこの高校の特色。その傾向があるため行き過ぎた行動をしない限り、教師が口を出すことはほとんどない。

 学校生活のありとあらゆる面を生徒主体で組み上げていく。部活の予算から学校行事のタイムスケジュール、管理等数えだしたらキリがないくらいある。


 その中心になっているのが生徒会だ。

 なので、学校に関することの大半は教師に相談するよりも生徒会に掛け合ったほうが意見が通る可能性が高かったりする。生徒会長の許可さえあればよほど突飛な発言や行動じゃない限り、通す事ができるのである。

 そのため、ほかの学校よりも風紀が乱れていたり……という印象を受けないこともない。

 それは私が入学した頃から……いや、私が入学するよりも前、生徒の自主性を重んじるようになってからずっとこんな感じなのではないだろうか。

 だからこそ私のような入学したての一年生にそんなことを言ったところで何も変わらないと思う。

 それこそ、生徒会長にお願いしているのなら話は別だが。


 とても急いでいる様子の男子生徒は勢いよく、答辞のように綺麗に折りたたまれた紙を私に差し出す。差し出したと言うより押し付けられたという表現の方が正しいかもしれない。訳もわからないまま、受け取らない訳にもいかずその紙を手に取る。

 今思えばこの時無理にでも拒絶するべきだったのだろう。

 折りたたんである紙には綺麗な手書きの文字で“委任状”と書かれている。


「……い、委任状?」

「君に生徒会長の権限を一時的に預ける。」


 ……は?

 いやいや言っている意味が……。


「これでこの学校に変革を起こして!」






挿絵(By みてみん)







「……で?私ははこれをどうしたらいいの……?状況についていけない……。」


 私、三浦早苗(みうらさなえ)は特に特徴もない平凡な高校一年生。成績普通、容姿普通、少しだけ体育が得意。目立った特徴なし。

 服装が比較的自由なので、制服のジャケットの代わりに白いパーカーを着ている以外はどこにでもいる女子高校生だ。

 そんな平凡な私の出来事とは思えないような先ほどの出来事をまとめてみる。


 なんの変哲もない平日の放課後、午後三時ちょっと過ぎ。

 部活に入っている訳でもないので帰宅しようと昇降口に向かう途中、人通りの少ない校舎の片隅で男子生徒に声をかけられ教室に引きずり込まれた。そこで私は委任状と書かれた謎の紙を受け取ったわけである。

 そして、変革を起こしてくれとの一言。

 これで、「はいわかりました!」なんて素直に返事できるほどの理解力は残念ながら持ち合わせていない。

 手紙を渡した当の本人は、目的を果たすとすぐさまどこかへ行ってしまい、一人取り残された私は委任状を受け取ったままの状態で固まっていた。

 何分経ったか、もしかしたら何時間と経っているのかもしれない。時間の感覚がなくなる程度には、私は混乱していた。


 教室から出て、廊下で固まっている私の横を一人の教師が通り過ぎた。

 白衣を着ていてどこか気怠そうな雰囲気の男教師。

 彼はとても珍しいものを見つけた時のように目を見開いてこちらを二度見し、私に話しかけてきた。


「お、お前それは……。」


 ここでやっと私の意識がはっと戻った。先生は、確実に私の手にある委任状と書かれた紙を指差している。


「あ、いっ委任状……ですか?」

「あいつ……あの話本当だったのか……。えーと、それは生徒会長から渡されたのか?」

「せ、生徒会長?」

椎名涼風(しいなすずか)。黒髪で眼鏡で……線が細くて整った顔してる奴。」


 その名前を聞き、先ほど受け取った委任状を見返す。最後に生徒会長:椎名涼風と名前が記載されていた。


「そ、そうです!」


 どこかで見たことのあるように感じた男子生徒はどうやら生徒会長だったらしい。

 総会や入学式で壇上にあがって挨拶をしていたから見覚えがあったのだろう。確かに、思い返してみると腕に生徒会と書かれた腕章があった気がしなくもない。


「何か言われた?」

「変革を起こしてほしいって……。」


 小声でやっぱりと先生は呟いた。そんなことよりも私は手にあるこれのことで頭がいっぱいだ。


「これ、なんなんですか!?」


 委任状を先生に掲げる。先生は溜息を吐き、頭を掻いている。

 視線を泳がせ、なんともいえない表情だがどうやら委任状について知っているようだった。


「……この学校って自主性を尊重しているだろう?社会に出た時に、自発的な行動が取れるようにって考えられた仕組みで、生徒会を主体に行っている。その生徒会の中でもトップの生徒会長は、生徒の代表として発言する機会も多い。教師は自主性を尊重するために極力口を出さないようにしているから実質、生徒会長は教師よりも権限を持ってしまうこともあるわけだ。そのせいっていったらあれだけど、何かあった時に著しく会長に責任が被る。その精神的負担を軽減するために一時的に権限を委任することができるっていうシステムがある……と。」


 先生は丁寧に説明してくれた。

 生徒の自主性を尊重するっていう限度を超えているような気もしなくもない。

 でもまあそのシステムを利用したのがこの委任状ってことだろう。

 ……ん?ってことは?


「それってまさか!!」


 のんきなことを考えている場合ではないことに気がついた。 この紙は私なんかが受け取っていいものではなかったのだ。


「生徒会長は権限を委任する相手を推薦することができる。その相手が君だったってだけだ。他にもいろいろ決まりはあるんだが……細かいことはいいだろう。まあつまるところ、今日から君がこの学校の生徒会長(代理)だ!」

「えええええええええええええええええええええ!!?」


 私の驚愕した声が校舎に響き渡った。若干反響しているのが聞こえる。

 近くにいた教師や教室にいた生徒数名が何事かとこちらを向いている。

 しかしそんなことを気にしている場合ではない。なんかすごく軽く、重いことを言われた。

 いろいろつっこみたいところがある。なんで私なのかとか、私である必要があるのかとか。

 普通に考えて、副会長という立場の生徒もいるだろうからその人にやらせればいいのではないのだろうか。


「大丈夫大丈夫!生徒会長って言ってもあくまで代理だから。それに、この学校を変えて欲しいってのが会長の依頼だろ?それが実現したら終わりだから!」


 先生は私の肩をぽんぽんと軽く叩く。

 人ごとだからだろうか。重要な内容の割に話し方が異様に軽くないか?


「いやいや、私一年ですよ!?無理です!」


 そう。

 生徒会長は確か現在三年生。

 入学して一か月弱しか経っていない、一年生の私なんかに代わりが務まるとは思わない。

 もともと中学で生徒会長をやっていたわけでもない。学級委員長とか部長すらやったことがない。

 人の上に立つとかみんなの代表というような、そんなことが私にできるとは到底思えない。


「心配すんな。他の生徒会役員もいるし手伝ってくれる……と思うから!他の役員みんな二年だし頼りになるだろ?」


 そういう問題ではない。


「な、なんで私なんですか!他にも生徒はたくさんいます!」

「それは知らん。」


 すっぱりと一言で片付けられた。必死になりすぎて額から汗が垂れる。


「委任相手は会長の独断だ。素行不良だとか成績の善し悪しで委任できないような例外もいるけど、基本的にどの生徒にも平等に権利はある。だから何故お前なのか、知ってるのは会長だけだな。」


 愕然として口をパクパクとさせた。いろいろ言いたいことはあるのだが上手く言葉が出てこない。


「そもそも委任状に拒否権はない。」

「はああああ?」


 教師相手に失礼な態度だとは思ったがそんなこと言っていられない。拒否権がないっていうのも横暴すぎる。少しは委任される側の意見を取り入れるべきだろう。

 委任される側のことももう少し労わるべきではないだろうか?

 それに、他の役員が二年生ってことは益々私が代理というのが疑問である。後輩の私が他の役員の上に立つというのは……。


「まあまあ……。あ、君名前は?」

「三浦……早苗です。」

「三浦な。俺は生徒会担当教諭の松原だ、よろしく!じゃあ一旦生徒会室でも案内するか!」

「……。」


 この適当そうな教師が指導っていうのもこれからの希望を見いだせない。

 何もかもわからないまま話が進んでいるが、もう反抗したって手遅れないのだろう。

 今まで散々無理だとかできないといっても聞きとめてすらもらえなかったのだから。

 呆れて言葉も出なくなっていた。







挿絵は田中ゆーあさん

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