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終点  作者: 六角オセロ
1/1

ゲゲゲの鬼太郎

「お客さん、お客さん、終点ですよ」

「ここは、どこ?」

「終点の、極楽霊園です」

聞いたことも無い、知らない駅名だった。どうやら、知らない路線に、間違えて乗ったらしい。俺は、かなり酔っていた。

「何時ですか?」

「1時ですよ」

「まだ電車あります」

「戻るんですか?もうありません」

「まいったなあ~~」

「終点ですので降りてください」

「ラクシーありますか?」

「ここは霊園なので、夜になると、ほとんど走っていませんよ」

「まいったなあ、始発は?」

「五時半です」

「五時半・・」

運転手がやって来た。

「お客さん、もうすぐ駅は締まりますよ。早く降りてください」

「降りろって、こんなところに?」

俺の他には、客は誰もいなかった。

「こんなところに降りたら帰れないよ」

「規則ですから、とにかく降りてください」

「まいったなあ~~」

「電車は締めますので」

「君たちは?」

「駅舎に泊まります」

「僕も泊めてくれない?お金は払うから」

「駅舎は旅館じゃありません」

「頼むよ」

「ベッドは二つしかないんですよ」

「どこでもいいから」

「しょうがないなあ、じゃあ、この電車に寝てください」

「どうもありがとう!感謝するよ」

運転手と車掌は、電車から出て行った。電車の外には、霊園の電灯が墓石を照らしていた。

「不気味だなあ~~」

春分の日だった。

「寒気がしてきた」

車掌が戻って来た。

「お客さん、毛布です、使ってください」

「どうもありがとう!」

人の情の温かさに、俺は涙ぐんでいた。

「自販機はホームにあります。電車のドアの鍵はかけてませんので、ご自由に」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

車掌は出て行った。

俺は長椅子に、靴を脱いで横になった。ショルダーバックを枕にして、毛布を身体にかけた。

「毛布だけでも温ったかいもんだ」

「ゲゲゲの鬼太郎が、運動会でもしてるのかなあ?」

ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ~~ 夜は墓場で運動会 ♪

「鬼太郎が、こんな山奥まで来るわけないよな」

「ここ、山奥かなあ?」

「住宅地のど真ん中だったりして」

「そんなわけないよな」

「住民が反対して、できっこないよな」

「くだらないこと考えないで寝よう」

「電車のドアの鍵はかけてないって言ってたなあ」

「オバケが入って来たら、どうしよう」

「鬼太郎や猫娘ならいいけど、知らないオバケはいやだなあ」

「幽霊のほうがいやだなあ」

ホームの電灯は点いていた。

「幽霊は明るいところには出ないって言ってたよなあ」

「電灯を消さないでくれよ」

カラスが、どっかで鳴いていた。

「夜中に鳴くなよ~~」

俺は上体を起こし霊園を眺めた。何かが動いていた。

「何だろう?」

「オバケかな?」

黒い物体だった。

「熊だ」

「何してるんだろう?」

熊は、お供え物を食べていた。

「なるほど、そういうことか」

「熊にとっては、ここは楽園ってことだな」

「熊が出るってことは、やっぱり山奥ってことだな」

「あ~あ、すっかり酔いが醒めちゃった」

「トイレに行ってこよう」俺は電車から外に出た。

「トイレは、だいたい駅の出入り口の近くにあるよな」

「あった、あった」

用を足すと、俺は自販機を探した。

「あった、あった」

「コーヒーは眠れなくなるな・・」

俺は、麦茶を買った。

「よし、これ飲んだら寝るぞ」

電車に戻った。座ると、俺は麦茶を飲んだ。

「ああ、おいしい」

熊は、いなくなっていた。

「さて、寝るか」

俺は、横になって、毛布をかけた。

「これで大丈夫だ。幽霊なんかいない」

「幽霊なんかいない、幽霊なんかいない・・」

「前の座席に座ってたりして」

「ははは、そんなバカな」

「どうして、こう余計なことばかり考えるんだろう、俺は」

「ラジオでも持ってくればいよったなあ」

「目を閉じよう」

俺は、幼い頃に、祖母と一緒に乗った、田舎のバスのことを思い出していた。

「あの頃は、ばあちゃんも元気だったなあ」

どうして、祖母のことを思い出しているのか不思議だった。

「洋一、洋一、わたしだよ」

「えっ?」

俺は目を開けた。

目の前の座席に、祖母が座っていた。

「ばあちゃん!」

「元気かい?」

「うん」

「奥さんとは仲良くやってるかい?」

「うん」

「母さんや父さんも元気かい?」

「うん、元気だよ」

「母さんは心配すると喘息を起こすから、心配させちゃあ駄目だよ」

「うん、分かってる」

「一生懸命に命をかけて、あなたを産んだんだからね」

「分かってるよ」

「なんだい、そのざまは、情けない」

「今日は、ちょっと祝い事があったんだよ」

「こんなところまで来て、奥さんには連絡したの?」

「遅くなったら、友達のところに泊まってくるって言ってある」

「飲み過ぎると、馬鹿になるよ」

「はい」

「こんなところに寝て、ほんとに情けないねえ」

祖母は泣いていた。

「どうして、ばあちゃん、ここにいるの?」

「霊界は繋がっているの。ここも霊界よ」

「この駅も?」

「そう」

「え~~~~?」俺は起き上がった。祖母はいなくなっていた。

「なんだ、夢だったのか?」

「妙にリアルな夢だったなあ」

「霊界は繋がってるって言ってたなあ」

「お墓とお墓は、霊界で繋がってるってことか・・」

「この駅も霊界と繋がってるって言ってたなあ」

「余計なこを考えないで、寝よう」

俺は、再び座席に横になった。

「もう寝るから、ばあちゃん、出てこないでね」

目を閉じた。いやな思い出が浮かんできた。

「アルコールのせいかなあ?」

「消えろ!消えてくれ!」

消えなかった。「まいったなあ~~」

「これじゃあ、眠れないよ」

「洋一、それは、いやな思い出妖怪だよ」

「ばあちゃん」

目を開けると、さっきと同じ席に祖母が座っていた。

「わたしが追い払ってあげるから、お休み」

「ありがとう、ばあちゃん」

祖母は、子守歌を歌い始めた。

「いい思い出妖怪を呼んであげるからね」

楽しかった思い出が浮かんできた。気分が落ち着いてきた。

「ありがとう、ばあちゃん」

・・・

「お客さん、お客さん、朝ですよ」

目を開けると、車掌が立っていた。

「眠れましたか?」

「うん、なんとかね」

「それは良かった」

「ここはねえ、いい思い出妖怪と仲良くすると眠れるんですよ」

「えっ、あなたも?」

「はい、ここは霊界ですから」










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