雪の道
【簡易キャラ紹介】
アテル 元兵士の両替屋
イヌマ スキル無しの天然
ヘリオス アテルに取り憑く幽霊(アテル・イヌマ・コッペリアには見える。)
コッペリア 可愛らしい女性型のゴーレム
ホーリィ 鍛冶屋見習いのエルフ(金属アレルギー)
オリバー 平凡()雑貨屋
一面の雪景色。
道も人も魔物も全てが不定期に吹き荒ぶ吹雪によって白く白く染められた視界。
一台の幌馬車とコシュタ・パワー(旧式の首の無い馬型ゴーレム)が、雪に埋もれていた。
轍の跡も進むべき方向も見失った馬車はコシュタ・パワーに雪を積もらせ、一時の旅の中断を余儀なくされていた。
「燃料。」
「ホーリィが鍛冶をしなければ問題ない。」
「食料は?」
「売るほどある。」
「防寒具。」
「詳細は、わからんが……一山程度。」
「水。」
「……あまり長期間足止めされると在庫が怪しいな。」
アテルとオリバーが、商品の在庫を確認しながら相談する。
幌馬車の中は外見以上に広い。あちらこちらに木箱や私物が転がり何となくの縄張りが区切られている。
中央に吊り下げられたランプが、風が吹く度に微かに揺れる。
「外のやつ、熱すれば水になるんだろう?飲めないか?」
「ふむ…………どう思う、ホーリィ?」
「耳が……耳の先が冷たすぎて、もげそう。」
「寒い…………コッペリアは、燃料を所望しマす。」
ランプの真下。
売り物のマントや毛布。処理済みの毛皮まで引っ張り出し小山に埋もれる二人の声。
アテルとオリバーは顔を見合わせ、どちらからともなくため息をつく。
「寒いって言ったって、馬車の中なら息が白くなんねぇんだからいい加減馴れろって。」
「コッペリアも。これから、気温がどう変化するのか読めないんだ。燃料は、まだとっておく必要がある。」
「横暴よ!二人とも耳が短いから、この辛さが判んないんだわ……。」
「コッペリアは熔鉱炉が動力源ですから、あまりにも寒いと機能が停止しテしまいます。」
もぞもぞと山の中へさらに深く潜り込みながら二人が言う。
『大変そうだね。生きてる方々は。』
幌馬車の天井(・・)から頭を生やして、ヘリオスがしみじみと言う。
「なんつうとっから、顔出してんだ。偵察。どうだった?」
『やっぱり、ヌシ同士の縄張り争いみたいだよ。大きい魔物が争っていたからね…………後二、三日はかかるんじゃないかな?』
「めんどくせぇな…………。」
ぽりぽり、とアテルは首をかく。
本来ならとっくのとうに、次の国へたどり着いてた予定だ。
思わぬ足止めにどうやって暇を潰すかと、頭を回らせる。
やっぱりここは故郷を出てからすっかりご無沙汰の惰眠か昼寝か……いやうたた寝も捨てがたいな。
「ねぇ?!ねぇ!!」
声と共にびゅおぅっと冷たい風と新鮮な空気が馬車の中をかけめぐる。
寒がり二人はかわいい悲鳴をあげると、それが聞き間違いだったかと不安になる怒声をとばす。
「イヌマ!扉閉めて!!」
「さむい……さむい……ねムい。」
「あっ、ごめんごめん。」
イヌマが寒さと興奮で頬をリンゴのように赤く染めながら、出入り口の幌を閉める。
「見て見て!この雪って言うの、ぎゅって握ると水が出てくる!!水の精晶石の代わりにならないかな?!!」
「……それは、水が出てきてるんじゃなくて、雪が水になってるの。雪ってすごく小さな氷の粒の集まりなの。ほら、持ち込んだ雪、解けて水になってるでしょ?」
「……?でも、雪はさらさらでぼろぼろするよ?氷みたいにツルツルしてないよ?」
「…………あー、もう、ついてきなさい!口で説明するよりも、見せた方が早いわ!!」
「あぁ、外に行くならついでに鍋に雪を詰めてきてくれ。煮沸すれば飲めそうだ。」
「雨水と一緒なんだから飲めるわよ。……ちょっとイヌマ!一人で行かないで!!」
飛び出したイヌマを追うように、ホーリィも馬車の外へと出ていく。
「あいつ、寒いとか言ってなかったか?」
「じっとしてるから、寒くなるんだ。動けば温かくもなるだろ。」
「マイスターは、元気ですね…………それにしても。」
コッペリアは、少し戸惑う素振りをして言った。
「良くあのトラブルメーカーズを外に出しましたね。お二方のどちらかが止めると思ったのですが。」
「いや、流石に馬車から離れない程度の分別はあるだろ。」
「……拾った!」
「この子スッゴク暖かいわ!!」
『わー、ヌシの片方に物凄くそっくりだなー。』
「………………オレの昼寝。」
「アテル、俺達に休息は無いようだ、諦めろ。」
【天火の子】
外見は狐とほぼ同一。
意思により調節可能な高めの体温が特長。
成体となると、日を操る天弧となる。
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