兄の結婚
兄が結婚した。
年の近い兄だった。
一般的な中流家庭で両親と死別することもなく、両親が離婚することもなく、兄弟それぞれ順当に高校を卒業し、大学を卒業し、特に大きくもなく傾きかけでもなくブラックでもない会社に入ってサラリーマンをしている、そんな一般的な程度に苦労している一般的な兄である。
その兄が結婚した。
私は素直にそれを祝福したい。
そして兄が結婚したわけなので義姉ができた。
ごく普通に主婦をするようだ。
ところで私は一人暮らしをしている。
実家には年末年始に帰ったり帰らなかったりという調子だ。
もう成人して、自分の稼ぎで生活している身であるが、実家に帰ると特に両親を手伝いもせず、両親の子供として振る舞っている程度にクズである。
そして義姉ができたわけである。
年末年始、兄夫婦が実家に帰った場合、義姉は嫁らしく振る舞おうとして台所に立って母の手伝いなどするのかもしれない。
母の掃除を手伝ってなどいるのかもしれない。
実際のところは知らない。
実家に帰っていないからである。
実家はもう私が両親に甘えるクズでいられる場所ではなく、私は相変わらずクズだからである。
兄にとって嫁であるあの人が、私にとって義姉であったところで、彼女が私の世話をするいわれなどないわけだが、私が居合わせれば何かしら関わることになるのである。
そしてその時私はお世話されてしまうだろう。
私は実家に帰っていない。
これからも帰ることはないだろう。
いつか、またいつか。
今少しマシな人間になったら考えるとしよう。
読んでくださりありがとうございます。
粗末な品で恐縮ですが、暇潰しにでもなれば幸いです。
感想等ございましたらお気軽に。