#1 転校生と失敗
※これは初投稿作品です。
細かいところや修正点を少しずつ直したりしますが、大まかなストーリー変更や勿論登場人物の変更などはありません。
投稿されるまでは少し遅いかも知れませんが、連載作品なので続きを投稿したら、そちらも読んで下さると嬉しいです。
■章タイトル変更と本文を少し読みやすいように改行しました。内容は大きくは変わってないので安心してください。
―――両親を亡くしたライカ・キリシマと一つ下の妹のミウ。二人は周りが羨むほどの仲の良さだった。
しかし、それは一時の幸せでしかなかった。
俺、ライカ・キリシマと妹のミウは二人で暮らしていた。ある日、俺とミウはウェルムの街で買い物をしていた時だった。
「兄さん。あれ、何でしょうか?」
「ん?何だろうな?やけに騒がしいけど」
町の中央広場で謎の暴動が起こっていた。
・・・喧嘩か?
そう思い、ミウと共にその中心に近付こうと歩いて行くと突然騒いでいた皆が突然悲鳴を上げ、逃げ出した。
「な、何なのでしょうか?」
「ミウ、ここで少し待ってて」
「え?兄さん。まさか・・・・・・待ってださい!あまり近づかない方が!?」
そんな声が聞こえた気がしたが、その時の俺は聞こえて いなく、不用意に近づいて行った。
――その後に起こる災厄に気付くことなく…………。
「何なんだろ?いったい・・・みんな急に逃げていったけど・・・・・・ここに何が・・・・・・・・・っ!?」
そこには目を抉られ身体の肉を喰われ、内蔵をはみ出させた死体が転がっており、その傍らには化物がいた。
その変わり果てた人だった者の死体は6歳の子供には早く、そして、とても残酷なものだった
「ァ・・・アアァ・・・・・・」
化物はこちらに気付くと、立ち上がりそのまま呻き声を洩らしながら近づいて来る。
「な、なんだよ・・・・・あれ・・・・・・」
こんな所で殺されて堪るか!!
俺はミウの手を取り、逃げ出した。
「え?急にどうし・・・・・・って兄さん!少し速いです!!・・・・・・・・・きゃっ!」
ミウが転び、そこに化物が近付いてきていた
「ミウ!!」
「兄・・・・・・さん。」
「ミウ・・・逃げ・・・・・・」
逃げろ・・・・・・そう言おうとした時。
「兄さん。逃げてください・・・・・・。私は足を挫いちゃって・・・・・・」
「ミウ・・・こっちだ!」
急いで手を伸ばすももう既に遅く、ミウはそのまま化物に喰われた。
「・・・・・・っ!!あ、あ、ああああああああああああああ!!!」
さっきまでいた化物は霧散していた。
そして、ライカの叫びが暗くなりつつある街の空へ吸いこまれるように響いた。
「――――――っ!!!」
・・・・また、あの夢・・・・・・
俺はあれ以来何度も同じ夢を見る。
大事な妹を化物に喰われ、あれから10年が経った。
あの後、兎に角一心不乱に逃げ回り、そのまま力尽き、倒れた。身寄りを失くした俺は、ヴェルネア・ハルバードと名乗った女性に養子として引き取られた。
ヴェルネア・ハルバード。全盛期はとてつもなく強い冒険者だったらしい。曰く、邪竜を一人で屠る程の実力だったらしい・・・・・・そんな風に見えないんだよなー。結構部屋汚いし。
しかし、邪竜討伐のときに左肩を負傷し、戦うことができなくなり冒険者を引退し学院を開き、己の持っているものを伝えていこう。と言う考えに至ったそうだ。
「ヤベッ。もうこんな時間か。学院行く準備しねぇと」
まあ、今では左肩も治り、授業中にも関わらず教室や訓練場に入ってきては生徒に《訓練》と称し、相手を志願してくる。もしかしたら本当に訓練のつもりなんだろうけど、絶対あれの場合ただ暴れたいだけだろ・・・・・・自由すぎるなぁ・・・仕事しろ。
クレア魔術学院は、初めて一人で邪竜討伐と言う快挙を成し遂げた人物であるヴェルネア・ハルバードによって建てられた魔術師養育機関である。
教師はみんなかなりの偉人で、少なくともこのディオステラ王国内では知らない者はいない程の人たちを集めた世界有数の学院だ。
・・・・・まあ皆、冒険者や研究者という立場を放棄してるのが少し残念だが。
そんなこんなで、あっという間に教室の前まで来ていた。
教室に入り自分の席に着き、落ち着いた頃にいきなり後ろから声をかけられた。
「よお!休み中どうだった?」
「ん?ああ。特に変わり映えのない休みだったぞ」
この朝からテンションが馬鹿みたいに高い男子は俺の親友のナツ・アルタ。いつもテンション高いが今日は一段とテンションが高い気がするな。
「どうしたナツ。今日はいつにも増してうっとおしいな」
「はっはっは。物凄い皮肉を言われた気がするが今の俺は機嫌がいいから許そう」
ん?なんのことだ・・・?ってか妙に偉そうなのが地味にウザイな・・・。
「おっと。何も言わなくても分かるぜ?なんで機嫌が良いか、だろ?」
「・・・そうだけど・・・・・・」
こいつに心を先読みされるとなんか腑に落ちないな。
「んっふっふ。それは…………今日、女の子が転校してくるからだ!しかも美人に加え、このクラスに来るらしい!男ならこれを喜ばずしてなんとなる!そうだろ!!?男子諸君!」
そう、ナツが声を上げるとクラスの男子が「おおおおおおお!!!」と湧き上がった。・・・・・・・・・なんだこれ。
――ガラッ
みんな(一部を除く)で盛り上がってるところに担任の講師のギネヴィア・ヴェルザー先生が入ってきた。
この人もかなりの有名人でこの国では知らない者はいないとされる程の魔術師でもあり学院の魔術科講師である。
「はい、静かにー。今日は皆に転校生を紹介します。入ってきて」
ヴェルザー先生が言うと、転校生が教室に入ってきた。おお。確かに美人だな。
綺麗に整った顔にスラリと伸びた肢体。出るとこは出てて、正しく美人の部類に入るだろう。
「初めまして。 シア・ミルドラです。魔術はそこそこ得意ですが、逆に剣術は殆ど素人です。至らぬ点が多々ありますが宜しくお願いします」
あ。目が合った。え?何?何かしたっけ。いや、何もしてない。してない筈だ。・・・・・・・・・してないよね?
「では、シアさん。そこのライカさんの隣ね」
ヴェルザー先生がそう言うと転校生・・・もとい、シアさんが隣の席に座った。
「えっと・・・シアさん。これから宜しく」
「ええ。宜しくね」
シアさんはそう言って微笑みを返してきた。
「はい!お話は休憩時間にねー。兎に角授業を始めますよー」
そうして一時間目授業が始まった。
授業は基本的に午前中だけの四時間構成になっている。一時間目の魔術の授業を無事に終え、二時間目の授業は霊獣召喚術だ。
霊獣召喚術はその名の通り霊獣と言う魔物よりも若干上の存在を異界から呼び出し、契約をし己の使い魔とするものである。
こればかりは、一人一体としか契約できないので、契約が完了した者はこの時間は自由時間となっている。
因みに、この授業に出ていることから察するだろうが俺はまだ契約できてはいない。はぁ・・・・・・。
「では次。シア・ミルドラ。前へ」
お。今度はシアさんの番か。
シアさんは前に出て、みんなと同じように左手を前に伸ばし、呪文を唱えた
「我が求めるは異界に住まいし霊獣よ。其が求める代償と引き換えに我と契約せよ!!今一度問う。我が声に応じるならば、その身を現せ!!!」
シアが召喚術術式詠唱を終えると地面に描かれていた魔法陣が光り、シアさんの左手の甲に霊獣との契約の証である紋様が浮かび上がる。
その後、光の中からは四足の綺麗な紅色の蜥蜴の所謂サラマンダーと呼ばれる霊獣だった。
霊獣には、下級種、中級種、上位種、特級種、そして、呼べる者は今現在は存在しないと云われる、神位種の五種の霊格と呼ばれる霊獣の存在を格付けするものである。サラマンダーはこの中の中級種に当たる。
あとは、上級者向けとして精霊降術というものがあるが、これは成功率が低い上に、魔力の枯渇や大きな代償を伴うため、許可無しでの使用は禁止されている。
因みに精霊降術で呼べる者は霊獣ではなく、『神霊種』となる。
神霊種と一言で言っても、これにも様々な神格と呼ばれる霊格と同じ『格』がある。
下から下級神霊種、中級神霊種、上級神霊種、特級神霊種。そして、召喚することはできないが、全応神霊種、通称《世界之調停者》と呼ばれる世界を司る神である。
大昔にはこの全応神霊種を召喚び、邪神を祓った。なんて神話じみたものなんかがあるが・・・・・・まあ、作り話だろ。
今はシアさんが召喚した、サラマンダーに名前を付けている最中だった。
そして色々考えたのか、暫く悩んだ後にルビーと名付けられ契約完了し、晴れてシアさんは使い魔を手にいれた。
「次。ライカ・キリシマ。前へ」
俺の番か。今回も成功しないだろうけど・・・・・・まあ、適当に終わらすか。
そんなことを考えながら魔法陣の前に立つ。
「我が求めるは異界に住まいし霊獣よ。其が求める代償と引き換えに我と契約せよ!!今一度問う。我が声に応じるならば、その身を現せ!!!」
――唱え終わる、が。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
はぁ・・・今日も駄目か・・・・・・。周りからは「今日も失敗か(笑)」とか「まあ、分かってたことだよな」なんて声が上がった。当たってるんだけどね?ここにいるってことはお前らも他人の事言えないからね?などと心の中でツッコミをいれてると皆は召喚できてた。
えぇ・・・・・・嘘ぉ・・・マジかよ。
なんで皆にできるのに俺にできないんだろ・・・まあ、才能が無いと言われればお終いなのだけれど
終了の鐘が鳴り、今日の授業は終わった。明日こそは成功させないとなぁ・・・・・・。剣術は得意なんだけどなぁ・・・・・・。
明日も頑張ろう!!と、意気込むライカであった。
しかし、『いつも通りな毎日』はもうすぐ終わりを告げる事をこの時のライカは知らなかった。