デスゲームが始まったので、初期装備のままソロでレイドボスに特攻する。
平原隼には主人公補正がかかっている。
俺は平原隼、東京都に住む主人公補正がかかっているだけのただの高校生だ。
俺は今日、非常に興奮している。
その理由はなぜか、それは、今日が世界初のフルダイブ型VRMMORPG、『けんとまほうのふぁんたじーてきなおんらいん』のサービスが開始される日だからである。
『けんとまほうのふぁんたじーてきなおんらいん』略して『けんまふぁ』は、発売前から世間の注目を集めた。
このゲームには、αテストもβテストも存在しなかった。
その理由は、運営側の、プレイヤーには全く事前情報のない真新しい状態で楽しんでほしいという方針である。
事前に出ているのは、ただの宣伝動画だけである。
しかし、その宣伝動画は世界中の心をわしづかみにした。
圧倒的なヴィジュアル、広大すぎる世界観、そして、無限の可能性を秘めた膨大な量のスキル。
当たり前ながら、世界中から応募が殺到した。
初回発売分はたったの二万だったのだが、あっという間に応募件数はは一千万人を突破した。
当然のごとく抽選になった。
しかし俺は、その気が遠くなりそうな程の倍率を主人公補正で突破して、『けんまふぁ』の初回発売分をゲットすることに成功したのである。
ゲームのスタート時間は12:15分ジャストだ。
ヘッドギア的なアレを装着したまま、電波時計を見つめて時間が来るのを待っていた。
時は来た、ので、俺はけんまふぁの世界にログインした。
キャラクタークリエイトの画面で、アバターは現実の顔をスキャンした物の髪の色を青く変えて、名前は『やと』と入力し、武器は剣を選択する。
そして、俺はゲームを開始した。
すると、なんと、主人公補正のお陰でユニークスキル[御都合主義]を獲得していた。
[御都合主義]
ピンチになると謎のパワーアップをする。
で、例によってデスゲームが始まった。
一般的なデスゲーム同様、ログアウト不可能であり、ゲーム世界で死んだら謎の技術で現実も死亡する、的なありきたりのデスゲームである。
ただし、俺は主人公補正のお陰でログアウトができる。
つまらないからそんなことをするつもりはないが。
デスゲームの序盤において必要なものは何か、それは地図である。
というわけで、主人公補正でアイテムショップのNPCを口説いて好感度をアップし、初期の所持金1000Gで100000Gのマップを購入した。
その地図には、最初の町の周辺のボスやモブの棲息域が描かれていた。
そのなかで俺が目をつけたのは、最初の町周辺における最難関であり、最初のレイドボスである、キラーシーザーである。
俺は何をするか、それは決まっている。
突撃だ。
というわけで、俺は初心者の皮鎧に身を包み、初心者の剣を引っ提げて、キラーシーザーの棲息している森へ向かった。
道中は主人公補正のお陰で敵に遭遇することもなく、キラーシーザーのいる場所までたどり着いた。
普通の場合、レイドボスは一人で挑むことなどせず、複数のパーティーで挑戦する。
しかし、俺は独りで挑戦した。
結局、50回ほど死にそうになったが、主人公補正と[御都合主義]のお陰で辛くも勝利を納めることができた。
こうして、俺は初討伐ボーナスとソロ討伐ボーナスと最大ダメージ報酬と主人公補正によるレアドロップを獲得した。
そして何と、さらに驚くべきことに主人公補正のお陰か俺のレベルは52になっていた。
これなら、他のボスと戦っても余裕で勝利できそうだ。
レイドボスを討伐して、その他の雑魚ボスモンスターもついでに仕留めて町に戻ってくる途中で、主人公補正のお陰でレアモンスターに遭遇した。
エルダートレントといって、トレントの亜種のようだ。
主人公補正でテイムに成功したので、『ペット一号』と名付けて一緒に冒険することにした。
最初の町に帰ると、そこは大騒ぎになっていた。
どうやら、第二の町が誰かの手によって解放されたらしい。
勿論、俺だ。
解放条件どころか、まだ誰もボスに遭遇してすらいないのに、いったい誰が解放したのだろうか、ということらしい。
ここで名乗り出たら英雄になれただろう、しかし、俺は主人公補正がかかっているけれど、とても謙虚で温厚な常識人だ。
決して名乗り出ることなく適当に話をあわせて通りすぎた。
俺が目指すのはどこか、それは、生産職のところである。
俺には初心者の剣と皮鎧があるので、俺自身は装備に困っていない。
しかし、俺は思いやりのある素敵な主人公なので、生産職の人の熟練度上げと他のプレイヤーの攻略の役に立てるために、装備を作ってもらうことにした。
その後、俺は主人公補正で生産職の幼女やフィールドで瀕死になっていた美人の正統派美少女剣士、デスゲームが始まって絶望しかけていた可愛い魔法使いなどを始めとして、合計37人の色々なタイプの美少女達を味方につけ、ギルドを作った。
ギルド名?それは「やととハーレムメンバー達」である。
さあ、可愛い彼女達のために俺は頑張ってこのゲームをクリアするぞ❗
その後、プレイヤー「やと」と、ヒロイン補正がかかった彼のギルドメンバー達はゲームの終わりまで最前線で東奔西走の大活躍をしたという。
なお、平原隼はネットゲームにおけるネカマの割合の高さを未だに知らない。
本当になんでこんなものを書いたのだろうか?
とりあえず、皆様の貴重な時間を下らない文章で奪ってしまったことを謝罪いたします。