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家電戦争 《Appliance War》  作者: 黒川 想流
炎怒編 (前編)
8/26

8話 緑髪のあの人

まるでラブコメのような展開!

「なりたかった…って何でですか?」


聞いていいのか分からないが、気になって仕方なかった俺は素直に聞いてみた。


「聞いたら驚くと思うけど、まあ言うわ」


そう言われた俺は一瞬でいろいろと考える。


親とか友人がそういう類の人だったとかかな?


そう思っていると、「あたし、高校生の頃は優等生だったの」と風音さんは遠くを見る目で語りだした。


優等生…? いや、煙草吸うような人は優等生では…


「もちろん、その頃は煙草なんて吸ってなかったわ」


え、この人心読めるの? それも能力なの?


「多分今心読めるの?って思ってるでしょ?」


「え、何で分かるんですか!?怖っ!」


俺は驚きすぎて声に出していた。


「これが優等生の証拠よ」と風音さんは自慢げにそう言った。


なるほど、頭が良いから相手の考えてる事なんて予測出来るという事か…


「でも、それで何でヤンキーに…?」


まだ続きを聞かないと分からない俺は、話の続きをして貰えるようにそう促す。


「あたしは子供の頃から親に塾とかに通わされて生きてきたの。毎日勉強だけして真面目に生きるのが人生。そう思ってた。」


風音さんは感傷に浸るようにそう語りだした。


「でも、大学を卒業してすぐ、あたしは暴走族に会った。その時見た、あの人達は今のあたしより楽しそうにしていたの」


そういう事か… おおよそは理解できた。


「なるほど、それでヤンキーに…?」と涼は確認する。


「えぇ、あたしもあんな風になれたら良いなって、それで煙草を吸い始めて、悪い事もしてみた。けど、何も変わらなかった。 確かに今までした事の無い事をした最初は新鮮だった。だけど、楽しいかと聞かれたらそうじゃなかった。」


風音さんは段々声が大きくなっていた。


おそらく感情的になってきてるんだろう。


「楽しい人生はどこにあるんだろ…?」


そう風音さんは俺達に聞いてくる。


そんなのまだ高校生の俺達には分かるわけない。


でも一つだけ分かる事はある。


「悪い事をすれば楽しいなんて事は無いですよ。風音さんのしたい事をするべきです」


そう俺は風音さんに言った。


その時の、風音さんは顔を少し赤くして俺の目を見ていた。


そんな時「おい、もうこんな時間だぜ?」と涼は俺の肩を叩き言ってきた。


時間は既に19時だった。


そうか公園で戦ってから結構経ったからな。


「それでは俺達は帰らないといけないんで!」と俺は言って早足で病室を抜け出した。


「炎怒くん…か…」


そう緑髪の彼女は呟いた。




それから3日後くらいの出来事だ。


結局それからはまったく家電能力者には出会わず、何も分からないまま時は過ぎていった。


しかし、予想外の出来事は突然起きる。


学校のチャイムの音と同時に教室のドアが開かれる。


今まで担任をしていた男教師は少し困った顔で話す。


「えー、急なんですが、本日をもって、僕はこのクラスの担任ではなくなります」とその男教師は言った。


その男教師は話も面白く、フレンドリーな人で、皆からの評判は良かった。


「えーなんでぇ?」と他の生徒複数人からそう声が上がる。


「その代わりに今日から新しい先生が来ます」とその男教師はドアの方を見つつ言う。


クラスの皆もドアの方を見る。もちろん俺も。


その瞬間、ドアがガラガラっと開いた。


そしてそこに居たのは見た事のある姿だった。


綺麗な緑色の長い髪。 幼く見えるその見た目は、クラスの皆を転校生と間違えていないかと惑わせる。


しかしスーツを着てるところからそうではないと分からされる。


その彼女はスタスタと歩き教壇に立つと、「初めまして!今日からこのクラスの担任をします! 川崎 風音です!」と元気良く挨拶した。


もちろん皆は唖然としているだけだ。


少し聞こえてくる声は「優しそうだな…!」とか「可愛いじゃん…!」とか「男子キモい」とか…


ただ俺は黙っていた。


風音さんは周りを見渡し俺を見つけると、「炎怒くん! あたし来ちゃった!」と言う。


その瞬間、クラスの皆は俺の方を見る。


やめろ、何で俺の名前を出した…


数秒沈黙が続いた。しかし、一人が口を開いた瞬間、クラスはお祭り騒ぎとなった。


「おい! お前どういう関係なんだよ!」


「炎怒くんだ!? 何だお前!? お前の人生をエンドさせてやろうか!?」


などなどクラスの男子全員からはそういう声しか聞こえなかった。


俺の人生をエンドさせるのはやめてくれ。


収拾がつかないと俺は困っていた。すると、まるで銃声のように響くバァンと机を叩く音が聞こえた。


クラスの全員は音のする方を見ると、風音さんが悪魔のような顔をしていた。


「テメェら… あたしの炎怒に何してんだァ…!」と言うと、皆は顔が青ざめて席に戻って黙る。


いや、風音さんの物じゃないんだけど俺…と言いたい気持ちは抑えて黙っておいた。


「それじゃ、これからよろしくねっ!」と風音さんは可愛い子ぶってウィンクして言った。


誰も笑顔になる事なく真顔で黙っていた。


そしてホームルームは終わった。


いろいろ聞きたい事があった俺は、すぐに風音さんの所へ行った。


「風音…先生」


俺は呼び方を迷った挙句、恐らく先生の方が良いと思ってそう呼んだ。


「炎怒くん! 会いたかったよ!」


そう風音先生は言うと俺の腕に抱き着いてきた。


少し膨らんでいる胸を押し付けながら。


「あの、教師なら生徒にあまり親しみすぎるのは良くないんじゃないかと…」


俺は冷静さを装い、そう言うが正直心臓は爆発しそうな勢いで動いていた。


「ってか怪我はどうしたんですか?」


そう聞くと「あっ」と我に返ったように、顔色を変え、冷静になる。


「あー、まだ実はこのスーツの下は包帯だらけで…」と風音先生は苦笑いしながら言う。


「え、大丈夫なんですか…?」


俺は普通に心配だったからそう聞いた。


「えっ、炎怒くんあたしの心配してくれるの…!?」と風音先生は言うと俺の腕にまた抱き着きながら「心配してくれるなんて炎怒くん優しいっ!」と更に言ってきた。


うん、大丈夫みたいだ。 もう心配しない。


「だから、教師がそんな生徒に引っ付いてたら駄目ですよ…!」


冷静さを装い切れなくなる前に早く引き剥がそうと俺は手で風音先生の頭を離そうとする。


しかし離れるどころかどんどん近付く。


離れられないと分かった俺は諦めて、窓の外を眺めていた。


何でこうなったんだろう…と考えながら。



最初風音のキャラはツンデレの予定だったのにな…

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