7話 幼く見える彼女
未成年の喫煙や飲酒は駄目ですよ?
彼女はその場に倒れていた。
風の力が出せなくなっていて、既に意識を失いそうになっていた。
彼女の身体は涼によって降り注がれた水の弾によって無数に穴があいていた。
だが、心臓や頭など致命傷な部分には当たっていないようだった。
いくら相手が恐ろしかったとはいえ、死んでいない事には安心する。
「うっ…く… 痛いよぉ…」と涙を流しながら彼女は呟いていた。
流石に俺達は見殺しにする程、悪魔的じゃない。
俺はすぐに携帯を取り出し119に電話する。
「救急車お願い出来ますか?場所は○×公園です」
彼女は救急車を呼んでいる俺を見て、更に涙を流しているように見えた。
何も出来なかった俺達は、救急車が来るまでただ見守っていた。
5分くらい経っただろうか、救急車から出てきた救急隊員は彼女を担架に乗せて救急車の中に運ぶと「ご友人のお方でしょうか?それでしたらご同行をお願いできますか?」と俺達の方へ向かってそう言ってきた。
知っていないわけではないからな…
俺と涼はお互いの顔を見合って黙って頷いた。
「はい、そうです」と俺は言って2人で救急車に乗った。
病院に向かうまでずっと、彼女は涙を堪えるように目を閉じていた。
病院に着き彼女はどこかへ運ばれて行ったが、俺達は近くのソファに座って待った。
2人とも無言が続いていたが、涼が突然口を開いた。
「何かさ、戦いって嫌だな…」
涼は下を向きながらそう言った。
「言わなくても俺も同じ気持ちだよ…」
俺もそう思っていた。
勝ったはずなのに何も嬉しくない。
それどころかこっちまで悲しくなった。
「俺はもう戦いたくないな」
そう涼は下を向いたまま言っていた。
「そうだな…」
俺がそう返すとまた沈黙が続いた。
彼女の治療は無事終わり、至って正常らしい。
俺達は彼女が寝ているという部屋に、医者の案内で行った。
その部屋の中を入り口の付近から見ると、彼女は寝そべって窓の外を見ていた。
その彼女はもう泣いていなかった。
それどころか嬉しそうな顔をしていた。
しかし、俺達が来た事に気付いた時、その顔は一瞬で暗くなっていた。
彼女が寝そべっているベッドの横まで行って「大丈夫か?」と俺は声を掛ける。
彼女はこっちを睨むように見て「うん」と小さい声で呟くように言って頷いた。
そんな時、涼は俺の横に並ぶように立って、いきなり頭を深く下げ「ごめん、ここまでするつもりじゃなかったんだ」と頭を下げたまま謝った。
俺も彼女もこれは予想外だった。
俺は変に謝ったらこの子なら怒るんじゃないかと思ったから謝らない方が良いかと思っていたが、そんな事は無かったみたいだ。
彼女は「あたしこそごめん、喧嘩売っちゃって」とさっきまでの強気な感じは一切感じられないくらい大人しくなっていた。
俺はこんな悲しい状況耐えられそうになかったので、「まあまあ、お許しも貰った事だし、これからは協力関係でいきましょう?」と少しでも雰囲気が明るくなるようにと思い、少し笑いながら言った。
「そうね、あんた達の方が強いって分かったし、協力してやるわ」と彼女は言った。
良かった良かった、これで一件落着ですな。
「それじゃ、とりあえず自己紹介でもしますか」と俺はお互いの情報を確認するためにも、そうするべきだと思ったからそう提案した。
「あたしの名前は川崎 風音 22歳よ。」
「「えっ??」」
俺と涼は2人とも驚きのあまり声に出ていた。
「どうせ22歳には見えないと思ったんでしょ?」
自覚があるのか、彼女は俺達の心を読んでいた。
「ちなみに何歳だと思ってたの?」
彼女はそう聞いてきた。
俺は素直に15歳くらいだと思っていたから「15くらいかと…」と言った。
すると涼は「18歳かと思ってました」 と言い出した。
「いやいやいやいや!お前、絶対もっと下だと思ってただろ!? 嘘言うんじゃねぇよ!!」
「嘘じゃねぇよ! 18だとおも、思ってたよ!?」
今動揺して噛んだな?
「噛んでるじゃねぇか! 絶対思ってないだろ!」とそんなやり取りをしていたら、「どちらにしろ幼く見えてるんだけどなぁ…?」とちょっと機嫌悪そうな声で彼女は言ってきた。
「「ごめんなさい」」と俺達は謝ると、彼女は「冗談よ」と優しそうな笑顔でそう言ってきた。
とりあえず何を話すべきかと考えたが、いろいろ気になる事があるから、まずは質問させて貰おう。
「えーと、それで川崎さんは…」と俺が質問をしようとした時、「風音でいいわよ」と彼女は言ってきた。
「えっ?」と聞き返すと、「あんな戦いの後にそんな他人行儀でもねぇ」と彼女は言った。
なるほど、確かにそれもそうかな。
「それじゃ、風音さんはいつその能力を?」と俺はまず一番重要な事を聞いてみる。
「今朝よ」
やはりか、やはり今の所この3人とも今朝、この能力を発現しているな。
「その時何をしていたんですか?」と次は触れていた物があるのかを確認する。
「確か起きて、すぐで暑かったから扇風機をつけようとしたら、急に扇風機から凄い風が起きて、部屋の壁に叩きつけられて、気を失ったの」
もう俺達は法則をほとんど理解出来てしまったみたいだな。
「これはもう確定じゃないか?」と俺は涼に聞く。
「あぁ、だろうな」
涼も同じ確信を持っていたようだ。
「え、何の話?」と風音さんはまだ知らないから頭の上に?マークがあるように首を傾げた。
「俺達も今朝この能力が発現して、俺はオーブンを触って、涼は風呂に入っていて能力が発現したんですよね。 恐らく触っていた物で変わっているんじゃないかと」と俺は分かっていた事を全て話す。
「なるほどね、確かにそれならあたしの状況とも合ってるわね」と風音さんは全てを理解し、納得していた。
「ってか風音さんってもしかしてヤンキーですか?」と突然涼は一番聞くのが怖い事をすんなりと聞いた。
返ってきた答えは予想していない答えだった。
「んー、ヤンキーになりたかったんだよね…」
なりたかった…って…?
次回は彼女が何故煙草を、ポイ捨てしていたのか。 その真相に迫る…