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家電戦争 《Appliance War》  作者: 黒川 想流
炎怒編 (前編)
5/26

5話 死と隣り合わせの戦い

前回の後書きで風の能力が重要になるなんて書いてありましたけど、大嘘でした。

「ちょっと良いかな?」


ナンパに思われそうな話し掛け方だが、この際気にしてられない。


「何か用?」


如何にも人柄が悪そうな口調でそう彼女は返してきた。


「君も今朝その力に目覚めた人だよね?」と俺は出来るだけ機嫌を損ねないように優しい人を演じて尋ねる。


「はぁ? 『君も』って事はあんたも持ってんの?」と明らかに機嫌を悪くして彼女は聞いてきた。


だが、俺は持ってないですなんて嘘言ってバレたらその時が大変だろうから正直に答える事にした。


「そうなんですよ… お互い大変ですねー…」


なんて世間話のように答えた。


しかし、世間話のままでは終わらなかった。


「ちっ あんたも持ってんのかよ! 折角あたしだけの力だと思ったのによ!」


舌打ちがぎこちない様な気がしたが、そんな事を気にしている余裕は無かった。


やばい。最高に怒らせてしまったようだ。


もうこの感じは嫌な予感しかしない。


「いや、あんたを消せばあたしだけの力になるよねぇ…?」


嘘だろ? そんな悪いやつのような考えをする女の子は普通居ないよね?


あっ、煙草吸ってるような子だった事を思いっきり忘れてました。


「ねぇ、大人しく消えてもらえる?」と彼女は悪魔のように微笑みながら聞いてくる。


「悪いけど、そう簡単に消えるわけにはいかねぇ…」


こうなってしまったらやるしかねぇ。


「涼! 来てくれ!」と俺は自信満々に涼を呼ぶ。


2対1なら勝てる。 根拠は無いけど自信があった。


しかしその考えは儚く散った。


彼女と俺はお互いに目が合ったまま、静かに風の音だけが響き渡った。


俺はまさかと思いつつ後ろを向いた。


そこにあった木の陰にはもう誰も居なかった。


そう、彼は先に逃げていた。


「あいつ…! 嘘だろ…!?」


俺は声に出し訴えた。


「もしかして仲間に逃げられたの?」と彼女は聞いてきた。


その時の彼女の顔はとても優しそうな顔をしていた。


「あぁ… 逃げられたみたいです… という事で今回は無かった事に…」


世の中そんなに甘くない。 そう分かっていたが、少しでも平和にいける可能性があるなら、それに賭けたかった。


すると彼女はニコっと微笑んだ。


その彼女の顔は見ていて安心したが、安心なんてする余裕はやはり無かった。


「逃がす訳ねぇだろ!!」と彼女は言うと、左手を振りかぶる。


それで風を操り、さっき切り落とした木の枝をこちらに飛ばしてきた。


「あぶなっ」


咄嗟に出たその言葉と同時に俺は身体を右に傾けその銃弾のような枝をかわす。


「へぇ、避けるくらいの身体能力はあるんだ」と彼女は俺を睨みながらそう言ってきた。


この一言で俺は次の攻撃を予測できた。


『避けられない攻撃をしてくる』だろうと。


案の定、次の攻撃は絶望的な物だった。


「これでも避けられる?」と彼女は勝ちを確信し油断し切った顔で


そう言って、さっき木に向かってやっていた落ち葉カッターを俺の前方の広範囲から飛ばしてきた。


横にかわす事は出来ない。


落ち葉なら簡単に焼けるんじゃないのか…?


そう思った俺は両手を前に突き出し、盾のように炎を出した。


飛んできていた落ち葉は案外簡単に焼ける音と共に姿を消した。


しかし、俺には計算外の事が起きた。


シャキっと気持ちの良い音が響いた。


それと同時に右足の太もも辺りからとてつもない痛みを感じた。


「うぐっ…」


その痛みを感じた部分をすぐに見て確認する。


見てみるとそこは制服のズボンの上からしっかりと足の肉ごと切れていた。


吹き出した血はズボンを赤く染めていた。


今までいろんな怪我をしてきたが、ここまで血が出た事は無かった。


そこまで深くはない傷だが、戦闘に支障が出るほどの痛みはあった。


「気付かなかったみたいね…! 足元から攻めたあたしのリーヴァーに…」


リーヴァーって何だ…?と一瞬思ったが、この状況ですぐに理解した。


間違いなくあの落ち葉カッターの事だろうと。


「ふふっ、その感じじゃ動けそうにないみたいだけど?大丈夫?」


彼女は悪魔だ。 苦しんでいる俺を見て、これ以上にないくらい黒い笑顔だ。


「それじゃ消えてもらうわよ…」と彼女は言うと、左手を上に上げて、周りにあった木の枝を数本浮かせ、彼女自身の背後に持ってきた。


そして、その枝達は鋭い方をこちらへ向け、今にも飛んできそうな状態で待機している。


間違いなく彼女がその左手を突き出したとき、あの剣のような枝は俺の方に飛んでくるだろう。


そして、今、彼女は死刑宣告をするようにその手を突き出した。



次回は風の能力の特徴が重要になってきます。今回は嘘じゃないです。多分。もしかしたら更に次回になるかも…

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