24話 操り、操られた少年
短い間に急展開です。
心が熱くなった。
それと同時にまた気付いた。
今もう一人の俺が出ようとしている事に。
殺してはいけない。そう思うともう一人の俺を出すのは簡単に制御出来た。
これなら出しても殺す前に止めれば良い。
そう思った俺は、殺す気でもう一人の俺に変わった。
だが、もう一人の俺になったところで、奴の力には及ばなかった。
炎を纏って銀髪の彼に殴りかかる。
避けられ反撃を食らっても、何度も、何度も殴りかかった。
俺が攻撃を食らった時は、金剛が光で援護したりしていた。
だが、いくら攻撃を仕掛けようと、いくら不意打ちを狙おうと、全てを破られた。
でも、それは無駄じゃなかった。
俺にはその攻撃の中で一つの作戦を思いついた。
すぐに俺は彼の隙を見て、金剛にその作戦を伝える。
「それならいけるかもな」
金剛はそう言ってその作戦に乗ってくれた。
俺達はその作戦のために彼に攻撃を仕掛ける。
わざと隙を作って反撃されやすいように攻撃をした。
俺は大きく振り被って殴りかかったり、金剛は光を適当に撃ったりと。
もちろん、全て避けられ、反撃を食らう。
だが、そこまでは計算通りだった。
ここで全力で防御しておく。
そして、俺達は殴られた拍子に倒れこんだ。
もう力尽きた。そう思わせる事に意味があった。
彼が油断するのを狙って俺達は動けないフリをした。
動けないようなフリをしながら、俺はある物を確認した。
それは彼の腕時計だ。彼の腕時計の針は普通と同じ速度で動いているのが確認できた。
俺は勝ちを確信した。
「今だ!!」
俺がそう叫びながら腕を伸ばし炎を出すと同時に金剛も腕を伸ばして光を出す。
だが、俺達の炎と光は彼に当てる訳じゃない。
彼の周りをバリアのように囲んだ。
彼はすぐに気付いたようだった。
俺は確認も込めて、彼に告げた。
「時を早めようが、遅めようが、周りを囲まれたら、逃げようが無いよなぁ!!」
彼は少し悩んでいる顔をしていたが、すぐに笑った。
「あっはっは!! それで勝ったお積もりですか?」
彼は炎と光に包まれながら、そう言った。
俺は少し警戒した。
こいつには勝算があるのか…?
一体何をするんだ…?
そう思っていると彼は腕時計を地面に叩きつけるように投げ捨てた。
そしてガラスの部分に傷がついたその腕時計を踏みにじった。
「この腕時計を見てなんとも思わないのかい?」
そう彼は炎と光に包まれたまま言ってくる。
踏んで壊れた時計は止まっていた…
止まって…?
「まさか、時を…止め…!?」
金剛は俺より先に気付いてそう言った。
俺もそれに釣られて驚く。
まさか時を止めて炎も光も動かなくして逃げれるっていうのか…?
俺達はそれを警戒して身構えた。
「その通りだ…ッ!」と彼は言ってニヤっと笑った。
ここまでしても勝てないのか…
そう思っていた。
だが、あいつの能力はそうはいかなかった。
数秒ほど待ったが、彼はその炎と光の中から出てこなかった。
出て来ないどころか動いてさえ居なかった。
何が起きたんだ…と思いながら彼をよく見る。
すると驚く事に気がつく。
時又の手や足、目や髪など全てがピクリとも動かなくなっていた。
それはまるで、彼自身の時が止まったかのように。
まさか、本当にその通りじゃないのか…?
時又は自分自身の時を止めた。
そう、命までを動かす時を止めたのだった。
彼は今でも恐らく時の止まった世界に意思だけを持っているんだろう。
俺達は炎と光を止めたが、彼が動き出すことはなかった。
時又は一生あのままなんだろう。
何とか勝った…のか…?
俺はそう思うと満足感を得られた。
もう十分戦った気がした。
「杏奈!」
金剛は恐らくそこに居た黒髪の少女の名前を呼んで、彼女の元に駆け寄った。
彼は彼女が縛られていたロープを解くと、彼女に抱きつかれていた。
金剛は彼女と抱きしめあいながら「無事でよかった」などと話していた。
まあ、そういう関係なら俺は邪魔者かな?
そう思った俺はその場を去ろうとした。
そんな時、動かない時又の姿が目に入る。
このままにしておいたらいろいろ問題があるだろう。
そう思った俺はその体を引きずるように運んで、工場の跡の隅に隠すように置いておいた。
ここなら人に見つからないだろう。
そう思いながら俺はその場を去った。
家に帰って、ゆっくりしていた。
今日だけでいろいろとあった。
涼の仇、そして時を操る少年『時又 秀』との戦い。
もう俺は疲れていた。
しかし、そんな俺を休ませたくないように家の電話が鳴った。
掛けてきた番号は全く知らない番号だった。
とりあえず出てみようと思い、受話器を取って耳に近付けた。
「もしもし?」
俺がそう言うと、こう返してきた。
「その声は炎怒だな…」
俺の名前をいきなり言ってきた。
だが、聞いた事の無い声だった。
確実に一回り年上の男の声だった。
誰か分からなかった俺は素直に聞いた。
「どちら様でしょうか?」
そう聞くと驚く返事が返ってきた。
「実の父親の声を忘れたのか?」
父さん…?
次回で一応最終話になります!




