23話 金と銀
今日も学校だったからか同じ学校の生徒達が下校してるのを見掛ける。
俺は何かと落ち着かなかった。
涼の仇を討った。
それは分かっているが、何か物足りない気がした。
もしかすると俺は戦闘を楽しんでいる…?
そう思うと、そうな気がしてきた。
いや、でも俺は涼と戦わないために能力者に会って来た。
彼の意思を継ぐためにも俺はもう戦いたくない。
そう思う気持ちもあった。
だが、本能には抗えないのが人間だ。
俺はやはり戦えるなら戦いたかった。
そんな俺は近くに適した場所がある事を思い出した。
そこは山の奥にある工場の跡だが、学生達の間ではこう呼ばれている。
『決戦の地』と。
名付けたやつは中二病なんだろうな。
ちょうど俺はその決戦の地の近くに居た。
もしかしたら戦えるやつが居るかもしれない。
もう今ならただの不良と喧嘩でも良い。
ただ戦いたかった。
少し歩いて決戦の地のすぐ近くまで来た時だった。
「あっはっはっは!! そんな物か!?」
急に少年だろうと思われる声が奥の方から聞こえた。
まさか喧嘩最中か!? 俺はワクワクしていた。
その気持ちを抑えられなくて俺は走り出した。
奥に進むと、金髪の少年と銀髪の少年、そして紐に縛られている黒髪の少女が居た。
それを見た瞬間、俺はもっとワクワクした。
「やはり私は最強の能力者だ!!!」と銀髪の少年は手を広げながら言った。
俺はもう我慢出来なかった。
能力者であると分かった以上、待っていられなかった。
俺はすぐに物陰から出て、彼等の方に歩いて行った。
「楽しそうな事してんじゃん… 俺も混ぜろよ?」と言いながら。
彼等は驚いたようにこちらを振り返った。
「おっと、第三者の出現です!」と銀髪の少年は喜んでいるように言った。
歓迎されてるようなら何よりだ。
「あんたは…?」
目の前に居た金髪の少年は俺に聞いてきた。
でも、俺はこの男を見た事があった。
「あれ、隣のクラスの金剛だよな?」
そう言うと彼も思い出したかのように、「もしかして、成瀬…か?」と聞いてきた。
「あぁ、そうだよ」
俺は頷きながらそう返した。
「同じ学校の仲間なら、頼みがある。俺と協力してあいつを倒さないか」
そう金剛は言ってきた。
俺は正直誰とでもいいから戦いたかった。
とりあえずは協力してみるか。
「あぁ、いいぜ」
俺は賛同して、すぐに銀髪の少年を意識する。
銀色… ん…!? 銀色…!?
銀色の髪って何の能力なんだ…!?
まったく分からない。
火が赤だったり水が青なのはそういうイメージが一般的にあるから分かるけど、銀色の能力…? 何か特別な物な気がしてきた。
そう考えていると、少し離れた所に居た彼は目の前に急に立っていた。
「どうかしましたか?」
目の前に来た彼は俺を馬鹿にするようにそう聞いてきた。
この距離なら一瞬で殴れる。
そう思った俺はすぐに炎で右手を覆って彼の顔を目掛けて殴りかかった。
だが、驚くことに避けも受け止めもせず、急に彼の拳が俺の顔に当たっていた。
まさか攻撃が来るとは思って無かった俺は、耐えようとしていなかった為、少し怯んだ。
こいつの動く速度は人間の速度じゃねぇ…
そう確信した。
だが、もちろんその見た目は人間でしかない。
人間以外生物なんてわけは無いだろう。
そうなると、理由は一つ。能力のお陰だ。
彼の能力が彼の動きを早くしている。
それしか考えられなかった。
でも、そうなると何の能力なのか。
動きが早くなる能力…
ゆっくり考えたかったが、彼はそんな暇は与えてくれなかった。
「何も出来ないみたいですけど?」と彼は目の前で煽ってきた。
俺は両手に炎を包ませて、連続で何度も殴りかかる。
だが全て、当たっているように見えるけど、当たった感触がしない。
避けるのが早すぎて残像に当たっているのか…?
そう思っていた瞬間、目の前から彼の姿が消えた。
どこだ…?と思った時には、後ろから蹴られた。
「やはり私に勝てる人など居ない…!」
そう後ろから彼の声が聞こえた。
そこに不意を突くように金剛は光の弾を当てる。
だが、その金剛の後ろに見えない速度で彼は回りこんでいた。
回りこまれたことに気付いた金剛は振り返るが、その瞬間に腹を目掛けてミドルキックが来て蹴り飛ばされる。
彼は少し動きすぎたのか、暑そうな様子だった。
そして彼は袖を捲くった。
でも、余裕そうな顔を彼はしていた。
しかし、俺は袖を捲くった事により、腕に目が行った。
彼は腕時計をしていた。
そんなに高級そうなやつではなかった。
しかし、それより気になる点があった。
彼の腕時計には異変があった。
誰にでも分かる異変だった。
彼の腕時計の秒針は異常な動きをしていた。
まるでルーレットのように凄い速度で何周も何周も回っていた。
そういう変な時計をしているのかと思ったが、その時計はどう見ても普通に売っている奴だ。
ここまで考えて俺はやっと答えを見つけた。
彼の能力は時を早める能力だ。
腕時計の針が早いのは自分自身の時を早めているからだ。
それなら彼の動きが早いのにも納得がいく。
「お前の能力見破ったぜ」
俺はそう彼に向かって言った。
「お前の能力は時を早める能力だろ? 分かった理由はお前の腕時計だ」
俺は名探偵になりきったようにそう言う。
が、答えは少し違った。
「惜しいですね」
彼は俺を哀れむような目をしてそう言った。
違うのか…?
「私は今からここを動かないので、来てください」
彼はそう言ってその場で棒立ちしていた。
能力を教えてくれるようだから大人しくその指示に従ってみるか、と思ったが。
俺は彼の方に歩こうとしたら歩けなかった。
まるで重力が何十倍にもなったかのように、足が前に出なかった。
でも重さは感じなかった。
ただ動かそうとしても前に出るのが遅かった。
どういう事だ…?と思っていると、
「私の名前は時又 秀! 私の能力は自分自身、そして周りの時を早める事も遅める事も出来る能力です!」
そう彼は自信満々で言った。
早めるだけじゃなくて遅める事も出来るのか…
そしてそれは自分だけじゃなくて周りも…!?
よく考えて見ると、かなり絶望的じゃないか…?
「でも、動けないのは可哀想だから君達を遅くさせたりはしないけどねぇ!」
そう彼は言って俺達を元に戻した。
俺はその挑発に最高に燃えた。
心が熱くなっていくのを感じた。
次回は更なる急展開に…




