21話 復讐のために
炎怒編(後編)の始まりです!
樋川… 樋川… 樋川…
俺はずっとその男の名を心で呟いていた。
涼を殺した… 殺人鬼…
そう思うとまた怒りが湧いてくる。
俺は学校を早退して、その殺人鬼を探そうと思った。
それで、学校から出ようとした時だった。
「炎怒くん?どこ行くの?」と風音先生の声が聞こえた。
後ろを振り返ると彼女が立っていた。
「あ、ちょっと用事があるんで早退します」と俺は微笑みながら言ったつもりだった。
でも彼女はすぐに気付いた。
「嘘だ、殺人鬼を探すんでしょ?」
「…そうですよ、絶対に許せないんで」
俺は嘘をついても仕方ないと思ってそう言った。
「あたしは先生として、人間として、そして仲間として炎怒くんを止めないといけないと思う。でも私は炎怒くんを止めない。君がそうしたいならそうすればいい」
そう彼女は言ってきた。
「でも、その前に一つだけ確認させて。絶対に殺しちゃダメ。炎怒くんもその殺人鬼と同類になっちゃうからね?」
そう彼女に強く念を押されて少し冷静になった。
「分かりました。 瀕死でやめます」
俺はそう言って、去ろうとした。
「ちなみに片手で戦うつもり?」
後ろから彼女はそう聞いてきた。
俺は怒りの余り忘れていた。
自分の左手が無い事に。
忘れてましたなんて言ったら、笑い話になりそうだからここはその気だった事にしておくべきだろう。
「もし、そうだとしたら?」
俺は振り返りながらそう聞いた。
「あたし、良い物知ってるよ?」
そう言って彼女の車で俺は知らないところに連れて行かれた。
何があるのかと思っていると、研究所のような場所に連れて行かれた。
何だ? 俺で人体実験でもするのか?
そう思いながら車を降りた彼女に俺は付いていった。
中に入ると、若い男の人達が居た。
話によると、彼等は風音先生が大学時代に知り合った科学系の勉強をしていた人達らしい。
風音先生はその人達にこう言っていた。
「みんなが作ってたやつ試作品でいいから、貸してくれない? 見ての通り彼左手が無いの」
そういうと彼等の一人が奥に行って、何かを取ってきた。
その男が持っていたのは義手だった。
肌色で結構普通の人の手のようだった。
少し間接の部分などが機械らしい感じだったが。
それから俺は彼等の指示に従って、その義手をつける作業を行った。
尋常じゃない痛みを付ける時に感じたが、少し時間が経てば平気だった。
「動かせるか?」と近くに居た男が話しかけてくる。
俺は動かせるかどうかを試した。
するとその義手はぎこちなくも動き出した。
すぐには思った通りに動かないらしいが、十分に動いていた。
動きは本当の左手と何も変わらないくらいだった。
「どう? 新しい左手は」と風音先生は聞いてきた。
「最高ですよ、これなら奴も殺…しかけれますよ」
やっぱり殺意は収まらなくて、殺したいという気持ちがあった。
でも俺は殺してはいけないという抑制心も忘れなかった。
「殺したい気持ちは分かる、皆瀬くんと短い付き合いのあたしでさえ、奴が許せないから」と彼女は俺の近くで囁く。
「だから、あたしからの願いも込めて言うね」
「奴を懲らしめてやって…!」
そう彼女は少し泣きそうになりながら言った。
俺は黙って頷いた。
俺の怒り、そして復讐心に火が点いた気がした。
俺のこの炎のような怒りで終わらしてやる。
そう思いながら俺はその建物から抜け出した。
俺はそれからすぐに涼が戦ったと思われる、公園に行った。今は誰も居なかった。
俺はずっと涼が戦ったはずの場所で立っていた。
いつか奴が戻ってくると思ったからだ。
奴はこの周辺で何人も殺してきている。
だから絶対にここに来る。
だが、日が暮れるまで待っても来なかった。
俺は仕方なく家に帰って、その日は普通に寝た。
翌日になって、俺は学校にも行かず、その公園で立っていた。
何時間もずっと、黙って立っていた。
いつか殺人鬼のそいつが現れると信じて…
もうまた日が暮れるという時だった。
俺はまた今日も来ないことに気が立っていた。
冷静じゃなかった俺は炎を出して、木にぶつけた。
木は炎の当たったところから折れて倒れた。
地震のように地面が少し揺れて、重い物が落ちたような音が響き渡った。
そんな時だった。
「オマエ、能力持ってルな?」
そう後ろから聞こえて、振り返ると、そこには水色の髪の男が立っていた。
今まで会った能力者は俺が赤い髪で炎、涼が青い髪で水、風音先生が緑髪で風、頼堂は黄髪で電気。
だから俺はすぐに確信した。
水色のこいつは氷だと。
そして氷ということは…
「樋川ァァァァァァァ!!!!!!!」
そう俺は叫びながら炎を出して、その男に殴りかかった。
復讐の時は来た。




