2話 普通ではない関係
バトルと言える程の物ではないかもしれませんが一応バトルな展開です…
学校に着くと何故か涼は門の前で仁王立ちしていた。
鞄は地面に置いていた。
その涼の顔はどことなく殺意や悪意に満ち溢れた顔に見えた。
涼はさっき見たSNSアプリの写真じゃ黒髪のショートヘアだったのに、いつ青髪にしたんだ?と疑問に思う点もあったが、今はそれどころじゃなかったので、
「よぉ! 遅刻するぞ! 早く行こうぜ!」
と俺は気にすること無く遅刻しないように注意を促すと、涼は突然叫んだ。
「待てやオラァ!」
そう叫ぶと涼の右手の手の平からホースで放水しているかのように水が飛び出した。
その水は重力で落ちる事無く真っ直ぐ俺の方へ飛んできた。
「うおぁ!?」
何が何だか分かってない俺はとりあえず鞄を持っていない左手で弾こうとした。
その瞬間だった。 何故か俺の手からは気を失う前に見た炎が出ていた。
俺の炎と涼の水は競り合いをし、数秒するとお互い同時に止まった。
「チッ やっぱテメェもかよ…!」
涼は舌打ちをしてから俺を鋭い目付きで睨み、そう言ってきた。
「何の事だよ?ってか今の何なんだよ!?」
何も分からない俺はただ涼に疑問をぶつけるしかなかった。
「お前、朝、変な事起きなかったか?」
涼はそう聞いてきた。
俺は恐らく「変な事」というのがこれだと思い、
あの事を伝えた。
「あぁ、オーブンから炎が大量発生して気を失ったよ。」
「こっちは風呂に入ってたら水が大量発生して溺れたんだよ。」
涼は少し冷静になったようで、いつもの様に話してくる。
水が大量発生して溺れる?そんな事ありえるか?と思ったが、こちらも異常な事が起きている以上、信じれるか信じれないか、と聞かれればまあ、信じれる話だ。
「しかし、そんな事はどうでもいいだろう」
涼は決め付けるようにそう言った。
「何でだよ?」
純粋な疑問だった俺は素朴に返答した。
しかし返ってきた言葉は予想外だった。
「お前はここで死ぬからだぁッ!!!」
涼はそう吐き捨てるように叫ぶと同時に殴りかかってきた。
殴り合いの喧嘩は慣れていた。
だからそれには驚かなかった。
だが、ただの腕ではなかった。
それは見た事の無い光景。
涼の腕は水に包まれていた。 だが、俺は怖気づく事は無かった。
『こいつに出来るなら俺も出来る』
そう確信したからだ。
すぐさま俺は目を閉じ頭の中でイメージした。
自分の腕が炎に包まれて、それをコントロールする自分の姿を。
そして、目を開けるとそこにはイメージ通りの光景があった。
案外簡単だな… もしかして俺天才?
なんて思ったが、そんな事を考えている余裕は無かった。
殴りかかってきていた涼の拳を押さえると自分の掌に伝わった感触は、ただの拳だった。
自分の炎があいつの水を抑えているんだろう。
これなら何も問題は無い。
ただの殴り合いになるだけだ。
涼はせっかちな人間だから次にもう片方の腕で殴りに来る。
そう思っていると案の定、涼は雄たけびのような声と共にもう片方の腕で殴りかかってきた。
それを易々とかわし、俺は全身の力を右腕に集中させ涼の頬に拳を叩きつける。
腕にしかバリアの無い涼の頬への攻撃はこれ以上に無い会心の一撃だった。
涼は悲しみ混じりの叫び声を上げながら体一つ分飛んでいった。
飛んでった後にはもう水の力を出してはいなかった。
俺は歩いて涼の元へ向かう。
涼は倒れたままこっちを睨んでいた。
「早く殺せよ」と涼は目を閉じつつ言う。
「何で、俺がお前を殺さなきゃいけねぇんだよ?」
俺には涼を殺す動機が無い。
そう思ったからそう返した。
「俺はお前を殺そうとしたんだぞ?」
なるほど、意味は分かった。
だが、俺には関係なかった。
「お前が殺そうとしようが、お前は俺の友達、いや、親友だからな。 殺すわけねぇだろ?」
俺はそう言った。
すると涼は目を潤わせ「そうかよ…」と少し微笑みながら言った。
そして、涼は立ち上がり満面の笑みでこう言った。
「いつか飯奢るからそれで今回の事は許して!」
殺しに来たやつに笑いながらそう言われたら他の人は堪忍袋の緒が切れるだろう。
だが、俺は笑い返し、「おっけー」と言って2人で教室へ向かった。
3話は日常的な話です。