第一章エピローグ
食事中あるいはこれから食事される方は閲覧注意してください。
目の前に川が流れていた。
目を凝らせば、そこに泳ぐ魚の姿も見えたであろう。
しかし、三浦にはそのような余裕はなかった。
川に身を乗り出すと
「お、お、おげーーーーー」
激しくリバースした。
川に流れ込む、麺の切れ端、ピンクなのはナルトの破片だろうか、黄色い卵らしきもの、謎肉の欠片。
転移前に食べたカップ麺である。
それを目当てに魚が集まってきたのだが、もちろん三浦には気づく余裕はない。
テレポーテーションワンドのそれは異世界転移と異なり、とんでもない乗り心地だった。
三浦が最初の会社の先輩に絶対大丈夫だからと誘われて乗った釣り船、歴戦の釣り人までリバースするような大時化を食らったアレですら生易しい。
アレはせいぜい上下と左右の組み合わせだが、テレポーテーションワンドのソレは、あらゆる角度で激しく揺さぶられ、時にひっくり返り時に裏返り、それが感覚として数時間も続いたのだ。
胃の中のものを出し切り、もはや液体すら出なくなってから三浦は驚愕した。
「え?これ?俺?」
川に映ったのは38才のおっさんではなく、恐らく20才前後の自分の若かりし頃の顔だったのだ。
「なぜだ?あ、そうか、死んでるからか」
三浦の予想は当たっていた。
彼は転移前、心筋梗塞で死んでいる。
そのまま転移した場合、死んだ状態で転移することになる。
異世界転生魔法は、そういった死亡事故を避けるため、本来の年齢の半分の年齢となって転移するようになっていたのだった。
三浦が今までこのことに気づかなかったのは、異世界転移してからこれまで鏡に値するものが一切なく、自分の姿が確認できなかったこと、また身体的には、その体力も含めて19才の頃と変わらなかったからだ。
なにせ13才でプログラミングを始め、15才の時には既にプログラミングジャンキーだったのだ、19才くらいから38才のおっさん並の身体能力しかなかったのも当然と言えよう。
「ところで、ここはどこだ?」
誰も答える者はいない。
小川以外はあたり一面、見渡す限り平原。
先に転移した2人が居た痕跡はないし、地平線まで人の気配、建物の存在すら感じられない。
「まあいい、とりあえず命があっただけましだろ俺」
三浦は川近くの草原で持ち物を確認する。
テレポーテーションワンドは色を失ったと同時に粉々に砕けてしまっていた。
もともと持っていたのは、財布(札が数枚、硬貨が数枚、カードが数枚、名刺が数枚)、鍵(キーホルダーは100円ショップの十徳ナイフ)、コンビニの袋、ハンカチ、USB充電ケーブル。
それ以外の持ち物は『マリーたんの魔法入門』だ。
「あー、スマホは机の上か、よし、Java ハイフンバージョン!」
黒い窓が現れ、何やら文字が表示される。
『
jdk version "1.8.0"
JDK Runtime Enviroment
JDK Server VirtualMage
』
「おお、Java8じゃないか、これはうれしい誤算だ!」
VirtualMachineじゃないなどと細かい部分には目を背けながら、三浦は『マリーたんの魔法入門』を開いた。
今となっては三浦の生命線なのだ、読み込まなければならないのだ。
たとえ読めば読むほど苦痛を受ける本(特に、水魔法のところで意味もなくマリーたんの白スク水姿がカラーで描かれていたのを見たときは投げ捨てようかと思った)であったとしても。
実はテレポーテーションワンドはMath.rndom(あるいはjava.lang.Random)な座標に飛ばします。完全ランダムな座標に飛ぶので、ミリアさんと同じ場所に転移することはまずありません。
2016/11/29修正:あとがきでMath.Randomとしていた部分を変更




