脱出
三浦は次の手を打った。
「Java StoneWall 20」
これまた『マリーたんの魔法入門』の初歩魔法ではあるが、呪文を唱えると、三浦を中心に半径2メートル、高さ3メートルの石の壁がそそり建つ。
さすが魔法、材料をどこから調達しているのかは謎だ。
ただでさえボロかった城の壁が、さらにボロくなったように見えるのは気のせいだ、気のせい。
「ああ、20は半径の引数か。単位は10cmのようだな」
実は『マリーたんの魔法入門』では後ろの20という数字はなかった。
三浦がコードを打ち込んだときに、恐らく半径にあたる数字と思われる10という値を魔法発動時に設定できるように変更したのだ。
(本当はもっと改造したかったのだが時間がないため、最低限の改造に終わってしまったんだよなぁ)
プログラミングジャンキーたる三浦には、魔法の効果はともかく、あの酷いコードを最適化できなかったことが悔しいのであった。
「小癪な!Java EnchantAir!」
石の壁の内側にいるせいで外の様子は見えないが、先ほどの男が魔法を唱えたようだ。
魔法名からして恐らく風の魔力を剣に付与したのだろう。
(エンチャント系、いいよなー炎の剣とか念願のアイスソードとか、『マリーたんの魔法入門』にも載ってるといいな)
「どうした、ミリアは居たか?」
扉のほうから別の男の声がした。
どうやら仲間が来たようだ。
「ミリアには逃げられた!こいつが情報を持っているようだ!」
「なに!おいこっちだ!StoneWallを破るぞ!」
ミリアというのは、恐らくあの少女の名前だろう。
先ほどの叫び声を聴いたのか、扉の向こうから複数の足音が近づいてきた。
ぞくぞくと増援が現れているようだ。
同時に、石の壁に何かを打ち付けている音も聞こえてくる。
先ほどの男が剣で切り付けているようだ。
三浦の知識では、この石の壁がどの程度保つのかわからない。
(頼むぞ!お前が頼りだ!)
三浦は慌ててテレポーテーションワンドを振った。
そう、テレポーテーションワンドはまだ黄緑色に輝いているのだ。
再度魔法陣が描かれれば、自分も脱出できる。
これが三浦の考えた起死回生の一手だった。
しかし、彼を絶望に陥れる一言が聞こえてきた。
「アーティファクトを使用した後だ!もう魔力は残ってないぞ!」
自分の魔力がどのくらいなのか、三浦は把握していない。
ステータスを見る方法はあるはずだが、知らないのだ。
(大丈夫だ、大丈夫だ、きっと大丈夫だ。駄目なら諦めよう)
弱気になりつつもテレポーテーションワンドを振るしかなかった。
床に黄緑色の魔法陣が浮かび上がり、先ほどと同様ぼやけたりくっきりしたりを繰り返す。
石の壁には亀裂が走り、複数の打撃音と共に破片が舞い落ちる。
恐らく砕ける寸前なのだろうが、自分の残魔力が不明であるため、これ以上魔力を消費するリスクを負うわけにはいかない。
石の壁が崩れ落ちると同時に、魔法陣のぼやける間隔が消え、三浦は白い光に包まれた。
間一髪。
転移に成功したのだった。
やっと名前が出ました、ミリアさんは王女です。
一般人のMPは8Mくらい、最低限魔法使いと呼ばれるには50Mくらい必要です。
(一部設定変更により訂正)ベテラン魔法使いで160Mくらい、魔導士と呼ばれているクラスで320M、大魔導師だと640Mを超えるという例もあります。
ミリアさんのMPは20Mなので一般人よりは多いですが、魔法使いとは呼べません。
テレポーテーションワンドに必要なMPは1人転送あたり192Mくらい。
MagicMissileが4MP、半径20のStoneWallは2*2*3.14*3で38M(半径10で10MP)。
本人は気づいていませんが、三浦は既に426M使用しており、少なくとも魔導士を超えるMPを持っている可能性があるということになります。




