戦争2
ジョージが作った魔法は、魔法の常識を覆すようなとんでもない魔法であった。
本来、魔法は術者と対象の距離によってコストが決まる。
そのため、遠方に対して攻撃する場合は術者の近くにElementを発生させ、矢や球といった形状に乗せて遠方に飛ばすのだが、ジョージの魔法は制限付きではあるが距離の問題を解決し、遠方にいきなり魔法を発動させるものだった。
『
Effect effect=new MagicWall(1);
effect.addElement(new FireElement(400));
effect.setTarget(Magic.getTargetObjectList().stream().findFirst().get());
try {
Thread.sleep(Long.MAX_VALUE);
} catch (InterruptedException e) {
} final {
effect.start();
}
』
実はそれほど難しい呪文ではない。
400度、半径10センチの火柱を生成する、いわゆるFireWallの魔法だが、生成だけして発動はせずに術者のコンソールが終了したときに発動する、遅延発動の仕組みが入れられていた。
これは魔法の発動距離は最初にEffectを生成し、Objectをaddしたときであり、その後術者が移動してもコストは変わらないという点をついた裏技を利用しているのだが、当然万能ではなく、最初に設置した目標にしか発動しないこと以外にも、この魔法を保持している間はMPが消費されたままで回復しないという欠点を持っていた。
ジョージのようなMPの化け物ならいざ知らず、通常の魔法使いにとっては魔法が発動した直後、つまり本来の魔法戦時にMPが減った状態での戦いを強いられるという致命的な欠点なのだが、ハイノウン連合の魔法使いはそれを魔法回復薬を飲むという無理矢理な手段で解決していた。
魔力回復薬は極めて高価であり、その材料もなかなか手に入らない上級オークの新鮮な肉というものなのだが、たまたま最上級魔法回復薬の原料となるジェネラルマジシャンデリシャスウィザードカイザードルイドオークの新鮮な肉がどこかの冒険者の手によってハイノウンのギルドに納品されたばかりであり(CF:閑話「マリーたんの秘密」)、それを原料に生成された魔法回復薬をトッサム国王が買い取ったのだ。
「全軍前進!」
守りを固めていたハイノウン連合は、ここぞとばかりに双方の魔法戦距離まで前進し、ジョージ以外の魔法使いが、青色の毒々しい、そしてとてつもなく不味い魔力回復薬で魔力を回復して、本来の自分の魔法をバレリバー軍に叩きこむ。
「突撃!」
「おおおーー!」
魔法がバレリバー軍に叩きこまれたのを確認して騎士団を中心とした切り込み隊が突撃したことで、戦場は混戦状態になった。
これには意味がある。
通常、魔法は味方に誤爆しないように敵に対してだけ発動させるのだが、混戦になってしまうと、どれが敵でどれが味方か判別がつかなくなり、魔法を使うのが困難になるのだ。
あとは力の勝負だが、先ほどの遅延発動魔法によって大量の負傷者を出したバレリバー軍は個々の平均戦力は高くとも数での劣勢を強いられ、魔法も混戦によって封じられ損害が多すぎて連携もろくにできなくなっており、被害の少ないハイノウン連合切り込み隊の連携に打ち取られていく。
戦況はハイノウン連合が圧倒的有利となっていた。
「そろそろ行ってくる」
「気をつけてな」
ジョージはマーロックと短い挨拶を交わすと、いつものように左手でイザリーの手をしっかりと握り、右手を上に突き出して魔法を唱える。
「java AirHold,java AirHold,java Fly,java Fly,java Fly…………」
混戦の中、飛行魔法で一気に上昇したジョージに気を留めるエルフはほとんどおらず、また気づいた数人も目の前の戦闘に気を抜くことができず、どうすることもできなかった。
たとえこの戦闘で勝利したとしても、それは戦争の終結には繋がらない。
ジョージとイザリーが目指すのは、この戦争を終結させるためのただ一つの方法。
すなわち僭主王グランデの確保だ。
グランデがどこにいるかはジョージにはわからない。
だが、イザリーには分かる。
「ミウラーさま、あっちです!」
超加速状態で知覚を完璧に制御できるイザリーには、高速で飛びながらでも空から戦場の奥、コノウフォーレスト近くで形勢不利と見て逃走するグランデが、はっきりと見えたのだから。
環境によってはコンソール終了ではfinal句に入らないこともありますが、この世界のJava環境ではfinalによるクリーンアップが実行されると考えてください。




