予兆3
「エルフ文字だから読めない人もいるわね。ようするに、ある人物を引き渡さないと力づくで奪うって内容なのだけど、その人物が一人はミリア様、もう一人がよくわからないけど、エミリア・ヴィヴィアンって人なのよ」
「なんと!エミリアのことを知られておったか」
「エミリアさんはハイノウンギルドのハーフエルフの受付嬢ですよ」
「あー、あのエミリアのこと?男に媚び得るので有名なハーフエルフよね。マーロックも知ってるでしょ、噂は」
メリッサが吐き捨てるように言い、それに対してマーロックは
「そう言われても、僕は妻以外の女性には興味がないので」
と、心底興味なさそうに答える。
「そう言わんでやってくれ。彼女が生き残るためにはそれしか道がなかったんじゃ」
「どういうことよ」
「エミリアさんの本名はアリシア、行方不明のローン王の長女ですよ」
「ガーランドのところの?ああ、なるほど、あそこはアレだったから苦労したのね。それじゃあ、ああなっても仕方ないわね…………ごめんなさい」
ガーランドがどのような人物なのか知っていたのだろう、メリッサが頭を下げた。
「謝るなら本人にどうぞ。それにしてもこれは皆様が思っているよりも大事ですね」
マーロックが続ける。
「エミリアさんを要求したということは、恐らく自治領内の王位継承者は全員殺されてますね。実は最近エイヒーンの動きが活発になってきて、国境の騎士団と小競り合いが絶えないのです。つまり国境の騎士団は動かせない。このタイミングでクーデター、グランデ様は恐らくエイヒーンに通じています。ミリア様はエイヒーンとの取引材料で、エミリアさんを抑えれば王位継承者が自分だけになるという判断でしょう。こちらが動かせる騎士団は常駐の3騎士団1800人、相手が全権掌握したなら5個大隊3000人、少なくとも3個大隊1800人との戦いになるでしょう。勝ち目は…………エルフ相手だと厳しいですね。持久戦に持ち込んで近場の2騎士団が駆けつければ互角といったところです。これはかなり前から計画していましたね」
「だからってミリアを引き渡すつもりはないだろ?」
「もちろん、トッサム王国として、武力に屈するなどありえません。私の全身全霊を持って負けない戦いをしますよ」
ジョージの確認に、”無敗の軍師”マーロックは言い切った。
「宮廷魔導士たちも力を貸しますわ」
「残念なことにギルドは基本中立じゃから直接手助けはできぬが、ギルドメンバーがどうするかは自由じゃよ、ジョージ」
「そんな間接的に言わなくてもわかってるさ。俺も力を貸す。イザリーも今なら戦力になるだろう」
「剣術だけなら幸いハイノウンには十強の一人フリントがいますが、エルフは魔法にも弓にも長けてますので総合力で見ると騎士団の一般騎士では分が悪いんです。多数のエルフ相手ですとジョージさんでも厳しいと思いますが、現在のハイノウンの最大戦力はジョージさんです。なにとぞよろしくお願いします」
深々と頭を下げるマーロックだった。
ちなみにフリントは自分では十強のうち8番目か9番目と言っていますが、単純に武力だけで言うなら十強で1か2番目、つまりトッサム最強の剣士です。
実力では第一騎士団団長か第二騎士団団長も狙えますが、独身なのでお金もいらないですし、他人を指揮するのが面倒で、その暇があったら自分を鍛えていたいという現場主義のせいで第三騎士団副団長に甘んじています。
プログラミングのためにマネージメントを断ったジョージに相通じるものがありますね。




