予兆2
「どうやら話せばならぬようじゃの」
ショックのためか体調を崩したエミリアを退出させると、ゴフランが事情を説明した。
「エミリア・ヴィヴィアンは知ってのとおり、うちのギルドでも人気の高い受付嬢じゃな。じゃが、彼女の出生には秘密があるんじゃ」
「行方不明のローン王の長女、本名はアリシア様ですよね」
マーロックが確認する。
「そうじゃ。バレリバーのローン王と人の娘の間に産まれたアリシアはローン王唯一の女児じゃったこともあってな。それはそれはローン王にかわいがられて幼少をバレリバーで過ごしておったんじゃが」
お茶を一口飲むと、ゴフランは続けた。
「母フランソワ・ヴィヴィアンの不審死。恐らく王位継承権を持つ誰かによるものによる暗殺じゃろう。それが運命を変えたんじゃ。このままでは愛娘が殺されると思ったローン王の手によってアリシアはトッサムのガーランド家に預けられたんじゃ。ところがガーランド家はそれを勘違いしたんじゃ。ハーフエルフだったこともそうじゃが、本名はローン王の偽装指輪によって誤魔化されておったこともあってローン王から事情持ちの邪魔者として押し付けられたと思ったんじゃよ。おかげでエミリアとなったアリシアは厄介者として、それはそれは雑に扱われ、ガーランド家が領地移動となったときに着の身着のまま家を追い出されんじゃ。そのことを知ったローン王は激怒し、それがガーランド家が消滅するきっかけとなったんじゃが、とにかくアリシアはバレリバーに戻ることもできず、ハイノウンに辿り着き、ギルド受付嬢エミリアとして採用されたんじゃ」
「ゴフランはなんでそのことを知ってるんだ?」
と、これはジョージの質問だ。
「偶然じゃよ。たまたま偽装指輪を外しておったときに、わしが査察したので気づいたんじゃ。あのときは驚いたわい。前に見たときはエミリアじゃったのがアリシアになっておったんじゃから。それで問い詰めたら全てを語ってくれたんじゃ。それ以来、わしは彼女に目をかけておった」
「ついでだ、スターンとグランデについて何か知ってることがあれば教えてくれ」
ジョージに言われ、ゴフランが答えた。
「スターン様はどちらかというと武辺派として知られておるが、根は優しい男での。エミリアの話じゃと時々ガーランド家にもお忍びで様子を見に来ておったらしい。さすがにギルド嬢になってからは会うことはなかったようじゃが。グランデ様はスターン様の補佐というイメージじゃな。情報を集め、作戦を練る。トッサムでのマーロックみたいなもんじゃ」
「あー、そういえばマーロックって参謀長だったんだっけ。フリントの上司ってイメージしかなかった」
「酷い言われようですね」
苦笑するマーロック。
「なにせ奥さんといちゃついているか、書類の束の前で唸ってる姿しか見てないからな」
「ちょ」
マーロックがジョージに反論しようとしたところで扉をノックする音が聞こえた。
「誰だ」
「私だけど、入れて貰えるかしら」
「どうぞ」
扉を開けて入ってきたのはメリッサであった。
「ここに皆が集まってると聞いて…………これはこれはミリア様、お久しぶりでございます」
そのローブの端をつまんでお辞儀するメリッサ。
「これから呼びに行くところじゃった。ちょっと困ったことがあってな」
「私も困ったことがありますわ。実はバレリバーから魔導通信がありまして」
「なんと!ちょうどバレリバーのクーデターについて話しておったんじゃ」
「なんですって!だからこんなものを送ってきたのね」
メリッサが手に持っている羊皮紙をテーブルの上に置いた。




