予兆1
「今いる者たちであれば問題ないじゃろ」
本来はハイノウン城に連れていくべきなのだが、できるだけミリア姫のことを知られたくないという理由から、ハイノウンギルドの一室に、ミリア姫一行とマーロック、ゴフラン、ジョージが集まっていた。
お茶を配っているのはエミリアである。
「そちらの方は」
エルフが、それ以外の者は有名であり顔も知っていたのだが唯一わからなかったのであろうジョージを見る。
「彼は大魔導師「俺はミリアの関係者だ」」
「…………はぁ?」
ジョージについて説明しようとしたゴフランが、ジョージがミリアに関係があると知って驚きを露わにするが、当のミリアはジョージを見て怪訝そうな顔を浮かべていた。
「俺を忘れたか?」
それでも頭にクエスチョンマークを浮かべているミリアに対して、ジョージが若干楽しそうな笑みを浮かべつつ
「こうすればわかるかな?」
と、手を挙げて棒を振るようなポーズを見せる。
「あ!」
ようやく思い当たったミリアが驚愕すると同時に一気に蒼ざめた。
「あのときは本当に申し訳ございませんでした」
「気にするな。結果論だが、おかげで今の俺が居るのも、あそこで置いてかれたおかげだ」
椅子から飛び降りて土下座しようとするミリアだが、それはジョージに止められる。
「すまないけれど、説明してもらえるかな」
一同を代表してマーロックがジョージとミリアに目の笑っていない笑みを浮かべなが言った。
「つまり、ジョージさんはカーガの秘術によって呼び出された異世界転移者で、いろいろあってはぐれたと。だから知っていて当然のことを知らなかったりしたわけですね」
「だいたい合ってる」
「で、ミリア様が至急ということでこうして集まったわけなのですが」
「そうでした!あまりの衝撃に忘れるところでした!」
ミリアが慌てて話を戻す。
「実は、カーガ城から飛ばされたのはバレリバーの近くで、そのままバレリバーにおりました」
「なんですと!」
バレリバー自治区はトッサム王国ミラーンの森にあるエルフの自治区だ。
その歴史はトッサム王国よりも古いと言われ、住民のほとんどはエルフもしくはエルフの血を持つ者であり、人族であるミリアがエルフの国にいたというのは驚きと同時に、今まで見つからなかった理由として納得のいくものだった。
「わたしを匿ってくださったのは、第一王子のスターン様でした」
バレリバー自治区は自治区ではあるが一つの王国を形成しており、その統治はエルフ王の血を引く者であり、現エルフ王はローン王である。
ミリアはそこで一度お茶を口に含むと、言った。
「今より一週間ほど前、ローン王が崩御されました」
「なんだって!」
一同に衝撃が走った。
ローン王の統治はおよそ150年であり、その間エルフ王として数々の戦争においてトッサムの朋友として戦った偉大なる王の死。
しかし、驚きはそれだけでは済まされなかった。
「そして、スターン様は第二王子であるグランデ様に殺されました」
ポットを落とし割るガチャンという大きな音に一同が振り向くと、そこには蒼ざめた顔をしたエミリアが居た。
おまけに次に彼女の発した言葉が、この混迷した状況にさらに拍車をかけた。
「お義兄様が?」
エミリアはたしかにそう言ったのである。




