再会
「お待たせしました。キング(略)のシチューです」
黒服にピシッとセットされた頭髪、でも無精ひげという若い男、店長のマンヒルが、大鍋に入れたビーフシチューをテーブルの真ん中に置いた。
焼肉やステーキなどにできないキング(略)の端肉やすじ肉と野菜をキング(略)の骨から取った出汁とトッサム王国ナンコック地方で作られた赤ワインで煮込んだそれはマンヒル会心の出来。
店長自らそれを皿へと掬って配って回る。
「おお、これは美味そうだ」
早速味にうるさい狸族のポーゴが取り分けられたシチューを口に含み
「これは!まったりとしてそれでいて…………」
と、恍惚の表情を浮かべながら感想を述べる。
そんな和気藹々とした食事に終止符を打ったのは、そこへよたよたと近づいてきた汚れた格好のエルフ達だった。
瞬時に”†きらめき†”の三人がシチューを置き、いつでもエルフ達を切り捨てられる場所へと静かに移動する。
ここに居るのはトッサム王国にとって誰一人として欠けてはならない人物であり、”†きらめき†”は、ただ肉を食っていたわけではなく、ジョージからの指名依頼で護衛を行っていたのだ。
イザリーもまた、ジョージの前に立ち、愛刀に手をかけた。
だが、本来は真っ先に動くであろうフリントには動じた様子はなく、シチューに舌鼓を打っていた。
彼らに殺気がないことに気付いていたからだ。
「失礼ですが、マーロック様では」
エルフの一人が、絞り出すように言った言葉に、フリントの様子を横目で確認したマーロックは笑顔を絶やさずに答える。
「確かに私がマーロックですが」
「おお!マーロック様、至急お話ししたいことが!」
エルフの疲れた顔が途端に喜色となった。
「まあ待て、こんな往来で話してもいい内容ではない」
もう一人のエルフが、その場で語り始めようとしたエルフを止めた。
「ふむ、何やら大事な話のようですが、その前に、これでも食べなさい」
グーグーなるエルフの腹の音を聞きとがめたマーロックが、鉄板で焼かれたキング(略)の串焼きを差し出した。
ちょうどその串焼きを手に取ろうとしていたジョージが憮然とするが、気にするものはいない。
エルフに差し出された串を横から奪ったのは、エルフと共に居た、汚れたフードの子供だった。
恐らく数日はろくなものを食べていなかったのだろう、はぐはぐと物凄い勢いで食べるその子のフードがはだけて、素顔があらわになる。
「な!あなたは…………」
普段それほど動じることのないマーロックが驚愕のあまり思わずその名を呼びそうになり、慌てて自らの口を抑える。
いや、マーロックだけではない、その場に居た大部分の者が、現在、もっとも重要な人物である、その子供を知っていた。
ジョージもまた別の理由で、その子を知っていた。
忘れられるわけがない。
薄汚れていてもわかる、その美貌。
金髪ショート、若干垂れ気味の目は碧眼、幼いが整った顔立ちは、どこぞの児童向け人形のよう。
それは滅びたカーガ王国の王女、ミリア姫であった。




