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Javaで学ぶ魔法入門  作者: つむらてんほ
閑話
50/64

ニアミス

年内最後の更新です。

1月のどこかから最終章を開始する予定です。

「モォォォォォ!」

 ハイノウンから北北西、馬車で6時間ほどかかるミラーンの森にモンスターの断末魔の叫びが響いた。

「これ頼んだ」

「お安い御用なのよ」

 たった今、イザリーがシルクラで仕留めたA-ランクモンスター、キングエンペラーロイヤルカイザーアデリーミノタウロスにPGが手をかざすと、それは一瞬で消えた。

 PGの中に保存されたのだ。

「java AirHold,java AirHold,java Fly」

 本日の仕事を終えた一行は、ジョージの魔法で空を飛ぶ。

 キングエンペラーロイヤルカイザーアデリーミノタウロスは高級食材であり、別に誰かに依頼されたわけではなく、美味い肉が食いたくなったジョージの気まぐれで狩られたのだが、A-ランクモンスターともなると首都(ハイノウン)近辺には居ないため、Flyで遠出していたのだ。


「ん?」

 ハイノウンまでの1時間半ほどの道のりを30分ほど飛んだところだろうか。

 上空からは生い茂る木によって大地を見ることはないミラーンの森で、唯一の例外、ミラーン川のほとりに人影が見えた。

「PG」

 ジョージはプログラミングジャンキーな癖に、裸眼視力は2.0あるのだが、さすがに遠すぎてよく見えず、PGに頼った。

「誰か追われてますの。追ってるのはエルフかしら。追われてるのもエルフかしら。追われてる方には人も混じってますの。あっ」

「なんだ?何か気づいたのか?」

「なんでもないですの。ジョージはどうしますの?ボクは追われてる方を助けたほうがいいと思いますの」

「んー。面倒だな。それより肉が食いたい。とりあえず」

 ジョージは脳内エディタを起動すると、AbstractEnemyAttackを継承したクラスを作成し、さくっとコードを記述した。

「お、ちょうどいい。java BigFireBall」

 川べりでは逃げきれぬと悟ったのか、追われてる側が止まり、追っ手と対峙しており、その中間に恐らくFireWallあたりを発動したのだろう、炎が上がっていた。

 ジョージのMPを136消費して、直径1メートル、温度600度という巨大な火の玉が形成され、それがFireWallを目標として飛んでいく。

「あれだけでかいFireBallが飛んで来れば、どっちも逃げるだろう。その上で爆発が起これば逃げる時間くらい稼げるはずだ。あとは運だな」

 そういうと、ジョージは何事もなかったようにFlyで加速し、ハイノウンを目指す。

 今のジョージの心の中は、眼下の争いより肉だった。


「java FireWall」

 エルフの一人が呪文を唱え、追っ手との間に火の壁を作る。

「相手には水特性属性持ち(使い)がいます。長くは持ちません。今のうちに戦う準備を!」

「心得た」

 もう一人のエルフが、人族の女性戦士に促すと、戦士は長剣を抜刀し、構えながら、じりじりと後ろに下がって追撃に備える。

 戦士は振り返らずに少女に言葉を投げる。

「姫、私の腕では長くは保ちません。今のうちに逃げてください」

「フランシスカ…………」

「姫、早く!」

 姫と呼ばれた人族の少女の躊躇は戦士の焦った声で断ち切られた。

「ごめんなさい!行きます!」

 少女は護衛のエルフ1人とハイノウンまでの街道に出る川沿いを駆ける。

「java WaterWall」

 呪文を唱えたエルフを除く4人の追っ手のエルフが壁が対消滅すると同時に、死を覚悟して対峙するエルフと戦士に向かって突撃したそのとき。

 巨大な火の玉が空から降り、ちょうど突撃したエルフの真ん中で爆発した。

 ジョージの予想とは異なり、戦場では誰も空を見る余裕などなく、ジョージの放ったとんでもない威力の込められたBigFireBallは完全奇襲となり、一瞬で4人のエルフの命を奪う。

「なんだ、何があった!」

 一人残された追っ手のエルフが狼狽している間に戦士が駆け寄り、彼を一刀両断した。

「何があったかわからないが、とにかく助かった、ミリアに合流しよう」

 戦士とエルフが川沿いに駆け出す。


 こうしてカーガのミリア姫は、ジョージの肉のついでによって追っ手から救われたのだった。

よいお年を!

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