しかし回り込まれてしまった
足元の魔法陣も消え去ったことを確認し
「なんでやねん」
思わず似非関西弁でつぶやく三浦だった。
それも仕方ないだろう。
本来は一緒に逃げられるはずだった魔法陣から一人弾き飛ばされ、孤立無援の状況で敵に迫られているのだ。
魔法がJavaだったことで、もしかして俺が主人公?という高揚した気分は消え去り、三浦は途方に暮れていた。
(ヒロインを逃がして身代わりに死ぬ?どう見ても噛ませ犬じゃないか)
もちろん、三浦はそんな立場に甘んじて、あっさり殺されるつもりはなかった。
ここで死んでも生き返るかどうかわからないし、試すわけにもいかないのだ。
(まだだ、まだ絶望には早い)
このような絶体絶命の状況でも三浦は諦めていなかった。
なんとか先生じゃないが諦めたらそこで人生終了なのだ。
もちろん、三浦もまったくの無策と言うわけでもない。
三浦には左手に持つ『マリーたんの魔法入門』から得た魔法という切り札があった。
先ほど目を通したときに、幾つかのページのプログラムを脳内エディットし、魔法一覧に登録しておいたのだ。
三浦としてはクズと評価したこの本に頼るというのには抵抗があるのだが、そうも言ってられない。
なにせ死は目前に迫っているのだ。
「死ねや!」
慎重に三浦に近づいてきた男が、三浦の反応が鈍いのを見て手にした剣を振り被る。
確実に仕留めるべく大ぶり、隙だらけの一撃だが、元はただのプログラマーの三浦にはそれをかわす技術も技能もあるわけがない。
唯一できるのは…………
「Java MagicMissile」
そう唱えた途端、三浦の頭上に光の矢が誕生し、男めがけて飛んで行く。
それが見事に命中すると、男は数メートル弾き飛ばされた。
「やったか?」
しかし、三浦の期待は裏切られた。
男はすぐに頭を振りながら立ち上がり、怒りの表情を見せた。
ダメージを与えた様子がないのは、しょせんは初心者用魔法だからだろう。
それでも距離を稼ぐことはできた。
「貴様魔法使いかっ」
「見ればわかるだr…………いや、わからんか!わからんよな!これでも魔法使いなんだよ!」
思わず突っ込みを入れようと思った三浦だが、自分の姿を思い出してみると、納得せざるを得ない。
三浦の乏しいファンタジー知識では魔法使いと言えば黒いとんがり帽子に黒いローブ、手には杖と魔導書だ。
一方、現在の三浦の恰好といえば、転移する前の姿、つまりGパンに青無字のTシャツ、まぁローブとは程遠い。
右手には杖っぽい棒…………未だ黄緑色の光を放つスティックを持っており、左手には女の子のイラストの描かれた『マリーたんの魔法入門』。
惜しい!だが違う!!
「しかしだ」
男はにやりと笑うと三浦の左手を指さす。
「貴様、手に持っているそれは『マリーたんの魔法入門』、つまり初心者だな!」
「マリーたん有名だな!!」
別のところでショックを受ける三浦だった。
この世界で『マリーたんの魔法入門』は魔法使いを目指す人のバイブルとして100万部を超える発行部数を誇り、絶対的バイブルとして扱われています。
誤字修正
左手には女の子のイラストの描かれた『マリー単の魔法入門』。
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左手には女の子のイラストの描かれた『マリーたんの魔法入門』。




