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Javaで学ぶ魔法入門  作者: つむらてんほ
第五章 PG迷宮編
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侵略!PG迷宮

(なんだ?)

 PG迷宮最下層である128階層、転移門の前に居座るレッドドラゴンは訝しがっていた。

 この迷宮に捕らわれてから千年以上。

 迷宮から得られる魔力によって空腹を感じることもなく、誰も攻略に訪れるものはなく、思考の末に編み出したDragonFireMissileを使う機会もないまま、ただ無限とも言える時間を思考し続けて過ごしていたレッドドラゴンの住む部屋に入るための、密閉された扉。

 その扉に何かがぶつかる音が聞こえてきたのだ。

(これはいったいなんの音だ?)

 ついに攻略者が現れたのだろうか、レッドドラゴンは始まるであろう死闘の予感に歓喜し、戦いのために軽く体を動かし(ストレッチを)始めた。

 だが、ついにその扉が開かれたとき、レッドドラゴンは予想外の事態に混乱した。

 とてつもない濁流。

 それが来訪者の正体だった。

(うぉぉぉぉぉ!)

 濁流に飲まれぬように必死に耐えるレッドドラゴンだったが、徐々に押し流され、ついに転移門に入ってしまった。


「いきなり大物来た!レッドドラゴンだ!」

 PG迷宮入り口では、貫通の報告(水が出たという声)を受けて、特に戦闘力の高い冒険者や騎士たちがモンスターを待ち構えていた。

 ジョージのBigIceBallを中心とした魔法使い部隊の一斉氷魔法攻撃、アーノルドのアイスソードを含めた、剣士部隊の一斉攻撃。

 本来はS+級モンスターとして圧倒的な強者であるはずのレッドドラゴンだったが、濁流によりへろへろになったところへいきなり最大攻撃を食らい、その真の力の片鱗も見せられないまま力尽きる。

「やったぞ!ドラゴンが倒れた!」

「俺たちだってS+級モンスターも倒せるんだ!」

「おおー!かあちゃんやったよ!俺はドラゴンスレイヤーになった!」

 無数の歓喜の声が飛び交う中、ジョージが叫ぶ。

「油断するな、次のモンスターが来るはずだ!」

 その言葉のとおり、水浸しでよろよろになったケルベロス(S級モンスター)が転移してきた。

 これもまた、交代で配置についた冒険者騎士魔法使い連合に集中攻撃を食らい力尽きる。

「しかし、まっとうにやったら無補給で最終階層まで辿り着いたところでレッドドラゴンとは、えげつない迷宮だな」

(いや、あんたも十分えげつない)

 ジョージに対して、その場の全員が心の中でツッコミを入れた。


 ジョージが行った作戦とは、運河を作って海水を運びPG迷宮に流し込む、という、ある意味シンプルな作戦だった。

 港町であるハイノウンは当然海に面しており、PG迷宮も海からさほど離れていない位置に転移していた。

 もっとも、PG迷宮自体は、ほぼ海抜と同じ位置にあるため、ただ運河を作ったとしても海水を流し込むことはできない。

 そこでジョージはサイフォンの原理を利用した。

 ジョージが水を注ぎこんでいたパイプ。

 運河が開通する直前に両端をFireElement(-10)で凍らせ、イザリーがAirEnchantした愛刀(シルクラ)で切断(ちなみにパイプの太さが80センチなのは、シルクラの刃渡り上、これ以上太いと切れないから)、運河によって穴側のパイプが海水に浸かったところで、迷宮側の先端をFireElement(25)で溶かす。

 迷宮側は地下1階までパイプが通っており、海抜マイナス8メートルほどの所に出口があるため、その標高差から1秒間に約63リットルの海水が時速約45㎞で流れだした。

 この速度で海水が迷宮内を駆け巡り、ついに最下層まで到達、レッドドラゴンを押し流して転移門から出現。

 迷宮が水没したわけではないため、まだまだ水は迷宮内に流れ込み続ける。

 転移門に返ってきた水も加わり、水量は増え続けるという永久循環である。


 その後も押し流されてくるモンスターを倒してはどかし(さすがにモンスターの死体で入り口が埋まりそうになるので)、倒してはどかしを繰り返していく、攻略部隊。

 しかもその手段より、本来とは逆順の最下層のモンスターから流れ出てくるため、レッドドラゴンやケルベロスのような、総力戦になるようなモンスターはおらず、徐々に弱くなっていき、中には既に息絶えたモンスターまで現れる始末。

「そろそろ水を切るぞ。イザリー!」

「はい!java AirEnchant!」

 イザリーがシルクラでパイプ中央の溶接部分を切断すると、パイプから出る水は減っていき、ついに途切れた。

 ただし、転移門から沸いた水は迷宮に循環されるため、水流が止まることはない。

「マーカーを!」

 ジョージの声で、3メートルほどの金魚鉢のような物体が10個、水流に投げ込まれ、迷宮へと消えていった。


 PG迷宮攻略は最終段階に入った。


水が落下したときのエネルギーはmgh=mv^2/2なので速度vは√2ghで、8メートルだと√(2*9.8*8)=約12.5m/秒。時速45kmほどになります。

このとき流れる水量は断面積πr^2×速度なので、3.14*40*40*12.5/1000=約63リットルになります。


このかわいそうなレッドドラゴンさんの「ぼくのかんがえたさいきょうまほう」は、エピローグ後の幕間で公開予定。


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