第四章エピローグ
「おっ、かわいい狐っ子見っけ」
ギルド併設の酒場を覗いた青年が、そのテーブルに一人で座っている少女を見かけて近寄ろうとした。
「ばっ、よせっ」
慌てて、仲間の冒険者が青年を止める。
「なんだよいいじゃん。あの子、超好み」
「ちょっ、おまっ、やめろって」
仲間の制止も気にせず、青年は少女の向かいの椅子に座る。
「へーいかわいこちゃん、名前教えt「すみません、この馬鹿はうちらでどうにかしますんで」」
仲間が二人がかりで青年を強引に立たせ、コメツキバッタかというくらい頭をぺこぺこと下げて、酒場から引きずり出す。
「なんだよ、人の恋路を邪魔するんじゃn「あの子が電撃狐のイザリーさんだよ馬鹿!」え?マジ?ジョージさんの相方の?」
「そうだよ。お前、シルフィードクラフトでなますにされるぞ…………」
「うわっ、助かった…………」
あの試合の前まで、イザリーの立場は、頑張り屋のイザリーちゃんというマスコットキャラクターだった。
それが、あの試合の後、冒険者から一目置かれるようになり、呼び方もイザリーさんに変わっていた。
おかげでジョージがいなくても今のようなナンパをされなくなったのだが、
(なんか、知らない間に二人ともとんでもない二つ名がついてます…………)
イザリーは耳まで赤くしてテーブルに突っ伏す。
(あの試合だって、装備のおかげで勝ったようなものなのに)
たしかに試合中にイザリーが履いていたブーツは、フリントを通してマーロックから贈られた魔法のブーツ、その効果はEnchantAirによる加速効果を若干上げる、というものであった。
だが、イザリーは元々足が速かった上、フリントの特訓によって重点的に速さを鍛え上げられており、決して装備のおかげだけで勝ったわけではない。
そもそも魔法は知覚までは影響しないため、”怪力を付与した人がコップを持とうとして粉々にする”のと同じで、速度が上昇すれば”ちょっと曲がる”という行為ですら困難になるのだ。
たとえばジョージがイザリーと同じことをやろうとすれば、接近しようとしてずれた上、止まれずに横を突き抜けるか、相手にぶち当たり、受け流ししようとしてスカるという残念な結果になるだろう。
だから、フリントはジョージがイザリーと試合形式で戦っても勝てない、と言ったのだ。
超加速状態で、それを完璧に制御しているのは、イザリー本人の才能と努力の賜物であった。
(しかも、こんな大層な小剣まで)
今は背中から降ろして左脇で抱えている、精巧な彫刻の施された鍔や鞘を見ただけでもその価値が伺える、一本の小剣。
試合の後、ジョージから無造作に渡された、その小剣の名はシルフィードクラフト。
筆頭宮廷魔導師メリッサの指導の下、ギルドマスターゴフランの伝手で、王国一と言われる鍛冶師ビビランテが、マーロック所有のミスリル剣をベースに一週間かけて作った最高傑作という経緯からわかるとおり、好意という名の大人の事情によって大分抑えられたとはいえ、とんでもない費用…………具体的にはジョージが全財産をはたき、それでも足らずに6日分の必死狩りの魔石を追加で支払った…………がかかっているだけあり、イザリーが持つとイザリーの固有魔法と同期して体感する重さは3分の1に減るわ、イザリーの特性属性である風魔法の効果を倍増させるわ…………EnchantAirすれば鉄すらあっさり斬れる…………、もはや魔道具どころではない、魔剣と言ってもよい小剣だった。
「よう、お待たせ」
テーブルに臥せっていたイザリーの頭が撫でられ、身を起こすとメリッサに呼ばれていたジョージの顔が見えた。
(私なんてまだまだだから…………でも、いつかきっと…………)
「どうでした、ミウラーさま」
「ああ、Flyのほうはいいんだが、ちょっと厄介なことが起こったようだ」
ジョージの話を聞きながらイザリーは
(いつかきっと…………いつかきっとジョージさんと呼べるようになってみせるの)
胸の中でそっと呟いた。
特性属性というのは、個人が生まれつき保有する有利属性のことです。
具体的な効果としては特性属性の消費MPは半減、逆属性は消費MPは倍増というのがあります。
イザリーは風属性のため、addElementする際にAirElementのインスタンスだと消費MPが半減し、EarthElementのインスタンスだと消費MPが倍増します。
なお、狐族で最も多い特性属性は火属性で、イザリーの風属性というのは稀です。
火属性の狐族が多い理由は英語読みするとFireFoおや誰か来たようだ




