試合前夜①
隣接された酒場も混み始める午後5時。
ハイノウンギルドには依頼を達成して報告に来る冒険者がひっきりなしに出入りしていた。
またもやハイノウンギルドの扉が開き、3人の男と1人の女が入ってきた。
その中にジョージの姿を認めると、先ほどまでエミリアと話していたボルトが、そそくさと酒場へと移動する。
ジョージを見てボルトが逃げる、というのはここ数日見慣れた光景であるため、誰も気にしない。
初めはジョージの規格外さに警戒していた冒険者達だったが、数日もすればジョージが人格としては常識人である…………イザリーを突然もふること以外は…………ことがわかり、気安く声をかけたりパーティに誘ったりする者も現れるようになった。
今回、ジョージが一緒に依頼をこなしたパーティ”†きらめき†”もその一つだ。
”†きらめき†”は痛いパーティ名のわりに実力は確かなCランクパーティだ。
攻撃担当の猫族バッカーノ、防御担当の狸族ポーゴ、支援担当の小人族ベルリッサと、バランスも悪くないのだが、魔法戦に弱く、力押しのできる依頼しかこなせないという弱点があったため、今回ジョージに助っ人をお願いしたのだ。
ジョージはある条件を出した上で承諾し、先ほど依頼をこなしたところだった。
「ねぇ、本当にあの条件でいいの?うちらにとってはありがたいけど」
ベッキーが確認する。
ジョージが出した条件とは、”依頼達成と魔石売却によるランク功績を貰わない代わりに、報酬額にイロを付ける”というものだった。
金を手に入れる手段は幾らでもあるが、ランク功績を手に入れる手段は少ない。
よって、ジョージが出した条件は普通では考えられない不利な条件だった。
「ああ、構わない。イザリー抜きでランクを上げる気はないからな」
それがジョージがランク功績を貰おうとしない理由である。
とある理由で今のジョージの横にはイザリーがいなかった。
もちろん、たとえギルドに売却しなくても、他に魔石の売却先があればパーティを組まずにソロのほうが収入は良い。
実際、昨日まではそうやってソロ狩りをし、とある場所で代金の代わりに魔石で支払いもしていた。
その支払いが完了したのが昨日であり、魔石の売却先がなくなったこと、また支払いのためにほぼ全財産を使ってしまい、なんらかの方法で収入を得る必要があったため、こんな特殊な条件で”†きらめき†”に参加したのだ。
「そう言うんならありがたく貰っとくわ。ちょっと達成報告してくるわね」
ベッキーが頭を下げると、バッキーとポッキーもそれに習う。
「俺は酒場で席を取っておく」
そんな三人に背を向けて、ジョージは酒場を見渡し、そこにイザリーの姿がないことを確認してから空いているテーブルに座った。
すぐ後ろに座っていた冒険者がジョージに軽口を叩く。
「ようジョージ、今日はまともな恰好じゃないか」
「あの格好だと剣士と間違われるからな」
今のジョージの恰好は着流しではなく、白いフード付きローブという、”魔法使い標準”の恰好であった。
さすがに”魔法使い標準”だけあって、見た目は弱そうであっても実際の防御力はそれなりに高く、魔力を通すことで強度を上げることもできる。
「ところでここんとこイザリーちゃんは一緒じゃないな、振られたか?」
「ああ、フリントに寝取られた」
「フリント?なら心配ないな。あいつはホモだって噂だ」
「そうなのか?」
「ああ、今俺が作った噂だからな」
もちろん、お互いわかっていて言っている冗談である。




