第三章エピローグ
「よし、これで間違いないか?」
先ほどの部屋に戻った一行は、これまたどこから現れたのか不明な猫族のメイドが入れたお茶を飲みながら、ジョージのギルド入会手続きを行っていた。
ゴフランの見せた白銀の身分証明書には、”ジョージ・ミウラー 人族 ランク仮、加入経過日0”と記述されており、その下にはハイノウンのギルドマークが刻印されていた。
「ああ、間違いない」
「では、これを渡す前に冒険者ギルドについて簡単に説明するぞ」
ギルドには依頼票があり、その依頼票を受ける場合は受付に持っていき、達成すれば報酬が支払われる。
受けられる依頼はランクによって制限される。
(もちろん魔物の討伐依頼もあるが)依頼以外にも魔物を倒して魔石を持ってくればギルドが買い取ってくれる。
冒険者にはランクがあり、初めは”仮”からスタートし、E-、E、E+、D-と上がっていき、最高ランクはS+。
B+ランクまでは依頼をこなした量と買い取られた魔石の量によって決まり、それ以上はランクアップ試験が必要である。
冒険者《ギルドメンバー》は武器や魔道具などの割引特典があり、また他の町に行った場合に、ある程度のランクがあれば便宜が図られることもある。
こういったゴフランの説明は、ジョージが前世でライトノベルやアニメで得た知識と似たようなものであった。
ただ、唯一違ったのは、ギルドカード発行手数料だった。
「そういうわけで、ギルドカードの発行手数料は1年以内にギルドに納める必要があるのじゃ。これが納められるまで、ランクは”仮”。1年以内に納めないとカードは失効するのじゃ」
「360日で100万ベーブか」
ベーブはこの世界の通貨である。
おおよそ1ベーブは1円と考えてよい。
「高額のように見えるが、なーに、お主なら、ちょいと依頼をこなして、ちょいと魔石売ればすぐに溜まる金額じゃよ」
「俺一人ならそうだが…………」
と、ジョージをイザリーを見る。
「おっと、そこの狐族の娘さん、イザリーちゃんじゃが」
「あ、はい!」
まったりとお茶を楽しんでいたイザリーが突然自分に注目が集まり、若干緊張気味に返答する。
「イザリーちゃんはジョージの従者「ペットだ」」
「私は、ジョージさんの身の回りを世話する付き人っていうk「ペットだ」」
ジョージを睨むイザリーだったが、当のジョージは柳に風とばかりに気にしない。
ついに諦めたイザリーは涙目になりながら
「…………ペットでいいでs「良心だ」、え?」
「こいつは」
ジョージはイザリーの頭を軽く撫でながら言った。
「こいつは俺の良心だ。こいつがいる限り、俺は世界征服に邁進したり、国を乗っ取ったり、盗賊となって人々を襲ったりという悪意を持たないことを誓おう」
「ほお」
皆が一様に驚きの表情を浮かべていた。
その中でも特に驚いているのはイザリーだ。
ハイノウンまでの道のり、イザリーの扱いは、もふられ要員であり調理役であった。
だから、ジョージにペットと言われても、怒ると同時に納得する面もあったのだ。
「情が移ったのかしら」
「さあな。なんにせよ、こいつ、イザリーの分の身分証明書も頼む。合わせて200万ベーブ、俺がなんとかするさ」
「ふむ、ではイザリーちゃん、お主の分のカードを作るぞ。このカードに手を当てるのじゃ」
ゴフランが新たに白銀のカードを取り出し、イザリーが手を当てると”ディープグラス村のイザリー 狐族 ランク仮、加入経過日0”の文字が刻まれる。
イザリーには名字がないため出身地が記載されたのだ。
「ところで」
とジョージは背負っていた大きな巾着の中から、ぱんぱんに膨らんだ10センチほどの袋を取り出すと、中身をテーブルの上に広げる。
「これを買い取って貰いたいんだが」
それはジョージが村からの道中に狩った魔物の大小様々の魔石であった。
明らかに高額買取対象のものも含まれたそれを見て、ゴフランは言った。
「まさか渡した初日にランクを書き換えねばならんとはな」
その日のうちにジョージとイザリーはランクC-の冒険者となったのだった。




