閑話 少女の夢
side ミー
ああ、これは夢だ。
幼い頃の私。悪魔つきの忌み子として迫害されてきた私は飢饉で食べ物が無くなった時、あっさりと森の中に捨てられた。
その時の私は誰からも愛されず、人のぬくもりと言うものを知らなかった。何日も口にしたのは水だけで、着る物もボロボロの布着れ1枚の格好のだった私は飢えと寒さで苦しみながら死ぬはずだった。
そのまま私の命の火が消えそうになった時だった。天から金色に輝く龍が降りてきたのは。もっともその時の私は龍という生物の事は知らなかった。私には龍の姿は私に取り付いていた悪魔とどこか通じるものを感じさせただけだった。
だから私は私に取り付いた悪魔が仲間を呼んで一緒に私の事を食べようとしているのだと思ってしまった。生きる気力が無かった私はこの苦しみが終わるのならそれでもいいかとも思っていた。
『これを舐めなさい』
だから龍が手にしていた綺麗な珠を私の前に差し出してそういった時、私は素直に言うことを聞き差し出された珠を舐めた。
すると私は飢えを感じなくなった。後で知ったことだけど龍の持つ珠は命の力が宿っていてそれを舐めた事で私は命の力を分けても貰ったのだと分かったのだった。
それから龍は私を中心にとぐろを巻くと私の体を温めてくれた。物心ついたときには親から疎まれていた私にとってこんなにも満たされて他人からの温もりを貰ったのは初めての事だった。
そして私は龍の体に身をすり寄せた。すると龍はもっとな舐めてもいいよと言うかのように私の目の前に珠を差し出してきた。
私は赤子が母親の乳を求めるかのように珠を舐めて、そこで急に龍と引き離されて眼が覚めた。
そして目の前に昨日知り合ったばかりの男であるワタルの顔が有ったので驚いてベッドから落ちてしまったのだった。
今回の話はとある国の民話を参考に書いていたりします。