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天上の皇子  作者: ひろやん
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第2話 出会い

 無事にアルビオンのどこかの森に着地できた俺だったが子鬼達に囲まれていた。


 いきなり空から降ってきてナワバリを荒らしたのだから怒って当然である。


 こいつらは全ての人と会話が可能である神言でも会話が出来ないので知性を持たない人型のモノノケだろう。


 食べるためと狩りと明確な敵以外は殺しをしない主義なのでこの場は逃げる事にした。その時だった。


「動かないで!」


 少し離れた場所から霊力の高ぶりを感じ、それから風の刃が俺の横を通り過ぎ子鬼の一体を切り裂いた。


「大丈夫よ!今助けるわ!」


 そう言って近づいてくる少女を俺は担ぎ上げると近くの木の枝の上に飛び乗った!


「ちょっと何をするの!放しな…、いえ落ちるから放したら駄目よ」


 最初少女は喚いたが、今自分が何処にいるのかを思い出して大人しくなった。


「助けようとしてくれたのは嬉しいけど逃げられるから。無駄な殺しはせずにこの場を去ろう」

「何を言っているのよ!私はゴブリンを討伐に来たのよ!このまま帰れるわけが無いでしょう!」


 あの子鬼達はゴブリンと言うのか。それと討伐…


「討伐?」

「そうよ!ゴブリン達がここに住み着いて近くの村を襲うようになったから討伐に来たの」

「1人で?」

「これでも私はドルイドよ!」


 よく分からないけれども霊力を使っていたから法術士のたぐいだろう。あとこいつらは人里を襲うのか。


「なら人の敵だな。人を襲う野生の生物は始末しないといけないのが人間社会の掟だ」

「そう、ようやく分かってくれたのね」

「それで、ここからならさっきの風の刃は撃ちたい放題だと思うのだけど?」

「無理よ!怖くて下を見れないもの!」


 少女はそう言って俺の服を掴んだ手を放そうとはしなかった。


「じゃあ、したに降りるぞ」

「ちょっと待って!心の準備が」


 準備をさせていたら何時までたっても下には降りれない。事前に声をかけたのが優しさである。


「いやぁぁぁ!!!」


 少女が叫ぶ中俺は木の根元に降りた。そして片手で少女を担いだまま空いた手で布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)を抜いて襲い掛かってきたゴブリンを切り裂いた。


 そう言えば剣で命を奪うのは初めてだな。宮中を抜け出して剣を覚えた時、教えてくれた人は危ないから剣を人には向けるなと言われた。皇子として魔を退治する時はキリュウに戦ってもらって切り結ぶ事はさせてもらえなかった。


 そんあ事を考えながら近くにいた2体目のゴブリンに向かって剣を振った。ゴブリンは棍棒で受け止めようとしたが、布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)の切れ味は凄まじく、棍棒を豆腐のように切り裂いてそのままゴブリンの体も真っ二つにした。


 分かっていたが切れ味が凄すぎる。もし人と戦う時は気をつけないといけない。相手の剣と切り結んだらそのまま相手の剣を真っ二つにして相手も切りかねない。


 そう考えていると残りのゴブリンは恐れをなして逃げようとしていた。


「キリュウ!」

『ギャー!』


 そこで俺はキリュウを呼び出して回り込ませ逃げ道を塞いだ。


「何、何?一体何が起きているのよ!」


 ちなみに少女は頭が背中に来るように担いでいるので何が起きているのか見えていなかった。最終的にキリュウが吐いたブレス(霊力を使った炎は任意の物だけを燃やす事ができるので延焼は起こさない)に追い立てられ、逃げてきたところを俺が切る伏せて終わるのだった。


 そして、ゴブリンが全滅した事を確認した所で途中で大人しくなった少女を降ろしたのだった。


「…。仕事、片付けてくれてありがとう」


 降ろした後少女は最初は何も言わなかったがしばらくしてそう言った。


「いや、成り行きだから」

「でも助かったから。お礼としてご飯くらいは奢るわ。村に行きましょう」

「それはいいけど、討伐の証明とかいいのか?」

「こういうのは後で村人を連れて来て安全が確保した事を確認してもらうのよ。依頼の内容は安全の確保だから」


 なるほど、たとえ100匹のゴブリンを殺したとしてもまだ、数十匹残っていて村を襲っては意味がないという事か。


「私の名前はミーよ。あなたはヤマトの武人さん」

「ワタルだ。俺がヤマトから来たという事が判るのか」

「ええ、育ての親がヤマトの人だから…」

「ん?」


 今アルビオンにいるヤマトの者はクオウとサクヤだけのはず…。この子はひょっとしてあの時の子か。


 昔、死にかけていた幼女を助けてクオウに託した夢を見た事が有る。天照から夢で見たことは俺の意識が体から抜け出して霊獣に近い状態で(というよりも姿は黄龍だったので霊獣となってと言ってもいいだろう)やったことだと聞かされた。


 そうか、あの時のガリガリでぼろぼろだった子がここまで立派に育ったのか。助けたかいがあった。でも言っても信じてもらえないだろうしもしかしたら覚えてもいないかもしれないからミーには言わなでおこう。

 

 そんな事を思いつつ、ミーが依頼を受けた村に着いたのだった。


 ついた村はそこそこの大きさで酒場を兼ねた宿があり、そこで食事を奢られた。そう言えばこの国のお金を俺は持ってはいなかった。換金性の有る宝石類は持ってはいるがこの規模の村では換金は出来ないだろう。仕方が無い、食事が済んだらキリュウに乗ってクオウの所に行こう。


「料理が来たわ。食べましょう」

 

 この国の食べ物の事はよく分からなかったのでミーに任せたのだがなかなか美味しかった。


 が、その後失敗した。酒場には村の男達が集まっていたのだがミーは彼らに俺がゴブリンの討伐を手伝って(殆ど俺が倒したのだが)くれたと紹介した。


 そうしたら村の男達がお礼にとお酒を奢ってくれた。ミーも一緒になって飲んでいたのだが、飲んだ事の無い異国の酒だったため飲む量を見誤ってしまった。キリュウがいるから危険は無いだろうと油断した俺は最後には酔いつぶれてしまった。


 そして翌朝、俺は誰かに首筋を舐められて眼が覚めた。


 起きたら、俺は宿の寝床らしきものの中で裸で寝ていた。そして同じく裸のミーが俺に抱きついていて、俺の首筋をペロペロと舐めているのだった。

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