11.3日後「勇者だって!?」
…今回はサブタイトル詐欺です。
あらかじめご了承ください。m(__)m
あの日から3日たった…
またしても病院から退院している所だ。
ぶつけた脛はひびが入っていたらしく、折れてはいなかったが酷い状態だったらしい。
またきて、とほざいていらっしゃった兎さんも、まさか3日とせずに帰って来るとは思わなかった様で、俺を見て苦笑していた。
そんな中俺はと言うと、
「…借金が、かさむなぁ」
と、手元の小銭を見て、返せる当てのない借金に思いを馳せていた。
1つ良かったことは、路地裏で出会ったアレにまだ再会していない事だろうか…
「まぁ、再会してたら死んでるな」
「?何の話」
「こっちの話」
今回の退院は、前回はいなかった引率付である。
前回来れなかったリベンジにと、ノアが来てくれていた。
クレナも来たがっていたらしいが、両親が元気になって宿の経営が元に戻り忙しいんだそうだ。
冷やかされたのは、まぁ、余談だ。ノアが平然としていたのには割と傷付いたが…
また、ここに入院していた間、1人の時間が多かったので手に入れた情報にも、気持ちにもある程度の整理がついた。
1つ目、あの殺人現場…あの赤い目の人物は刀と鋏を持っていたこと。
思い出したくもない記憶だったが、危険人物の特徴や得物は情報として整理しておきたかったのだ。
あの屠殺者は刀で突き刺した相手の首を、左手の大して大きくもない鋏で斬り飛ばしていた気がする…
声からして女性。もしくは少女。
2つ目、あの神どもの会話こと。
あの神を名乗る者たちの話を聞いて、重要だと思ったことは『天秤』『獅子』『蟹』という、渾名か何かであろう神の名前。
この町にいるであろう『蟹の最強候補』、それを狙って来る『獅子の駒』…んで、最低クラスだと言われた俺のステータス。
分かったことはこれぐらいだろうか。あれらの言っていたことが全て本当だと仮定すれば、だが。
…俺のステータスの話だけは真実としか思えない所がまた、腹立たしい。
ふと前を見れば、兎さんが見送りに来てくれていた。
嫌な予感しかしない。
「またのご入院をお待ちしてまーす」
「そんな気軽に入院したくねぇよ!!」
「あぅ…ご、ごめんなさい」
…はぁ。シュンとした兎さんをある程度慰めてから病院を後にした。
実は、あの神どもの名前が何から来ているかは、ある程度の推測が立っている。
問題はそれが向こうの世界の物だって言うことで…
「…ぃてる?聞いて…ない。サクヤ、怒るよ?」
「え…悪い、聞いてなかった。何の話だっけ?」
歩きながら考え事をしているとノアが怒っていた。
俺が悪かった。悪かったから、その射抜くようなジト目はやめてくれ。
「…全く。サクヤの言っていた事件現場のこと…何も残ってなかったみたい。家の方で調べてみてもらったけど、何も出て来なかった。被害者の遺体どころか、血の一滴も…」
ノアの報告を聞いて、赤目の屠殺者の危険度が俺の中で跳ね上がった。
血の一滴も残さずに殺される。と言うのはつまり、殺されたとしても最悪行方不明で処理されかねないということだ…
俺の場合は誰も探してくれる人がいないので、1人の時に見つかったら詰む。
「…俺の見たのが幻覚だって言うんなら話は早いんだがなぁ」
「いちおう、調べるのは続けてもらった…」
「悪いな」
「…気にしない。領地の安全な運営には必要」
「…そっか」
割と誇らしげに尻尾がピンッと上を向いているのを見て、そう言えばコイツ貴族の一人娘だっけな…と今更なことを思った。
尻尾を立ててこっちを見ているが、もしかして褒めてほしいのだろうか?
…素直に褒めるのは何だか負けた気がするので、と言うか、まぁ実際に全てにおいて負けているのだが、スルーして「さっさと行くぞぉ」と言ってみたら、後ろから蹴飛ばされた。
身体能力の差か、軽く蹴られたはずなのに顔面から地面に激突する。
「…いってぇ」
「…さっさと来ないと、置いて行く」
まるで捨て台詞か何かの様にスタスタと先に行こうとするノアを必死で追いかけた。
今、はぐれると死活問題だ…
「――と言うか、ホントにちょっと待って!?」
幾らか進むと前にも来た商人街の辺りに来た。
前は通りがかったり、尾行していたりで店の冷やかしなどもしなかったが、今回は用事があって来ている。
来ると毎回思うが、やはり活気が凄い。凄いん…だが……
この町って、こんなに人多かったっけか…
この間の尾行の時には、こんなことにはなっていなかった気がするんだが、何かお祭りでもあるんだろうか?と思うぐらいには人が多い。さっきから人ごみの中をはぐれない様について行くのが大変になってきた。
不機嫌そうに前を歩くノアに聞くのは少し怖いが、いい加減このままと言うのも耐えられそうにない。
話しかけるきっかけにはちょうどいいだろうと思い、話題を投げかけてみることにした。
「なあ、ノア?」
「…なに」
や、やっぱり、何だか不機嫌なご様子だ…
「あ、ああ、何だかこの間来た時より明らかに人通りが多い気がするんだが…」
「………はぁ」
「何で溜息だよ…」
ノアはこちらを見て何かをあきらめる様に溜息を吐いた後、幾分態度を軟化させた。
終始、渋々と言った感じが抜けなかったが…
「獅子人族の領から勇者が来る」
「………え?い、今何っ…ゆ、勇者だって!?」
言われて数瞬、俺は頭が思考を止めてしまった様に感じた。
勇者――数々の物語において悪とされたナニモノカを倒す、または救う人物。人によって何を成すかはそれぞれ違うが、結果としてその世界を救ってしまう人物。そう言ったモノを俺は勇者と呼ぶと思っている。
「…サクヤも勇者にあこがれた派?なら、一緒!」
「あ、ああ、まぁ、あこがれたことも………あった、な」
確かに、そういうのに憧れたことが、あったかなかったかと言われたら、あった。
でも、俺たちのいた世界は、そうじゃなかった。あこがれや夢は、早々に破れて、千切れて…
そう言えば、居たな。うちの部にも。高校生にもなって、自分はいつか勇者になるのだと言ってた後輩が。
ちょこっとだけだが…ホームシック、なんだろうか…
「勇者って、かっこいい…ね」
気付けば、ノアの不機嫌さが鳴りを潜め、実に楽しそうにしている。
こちらの世界では勇者と言うのは子供のあこがれらしい。
ただ、俺が勇者と言う言葉に必要以上に反応したのは、憧れとかそういうんじゃない。
そいつが『神を名乗るナニモノカ』について、何か知っている可能性があるからだ。
勇者と呼ばれるモノ達は出自によって分けることが出来る。
仮称するなら――
神に神託を受けた――神託勇者。
実力を示し、そう呼ばれるに至った――称号勇者。
代々勇者となる家系に生まれた――血統勇者。
そして、今俺が一番会いたい、異世界から呼ばれた――召喚勇者。
一番情報を得られる可能性があるのは、おそらく神託勇者だが、一番会いたいのは間違いなく召喚勇者だ。
情報はもちろん欲しいが、それ以上に俺は強力な後ろ盾が欲しい。
召喚された勇者ならお互い異世界出身同士だから、親しみを持ってくれるかもしれない。
勇者の友人と言う肩書きは、おそらく一番の後ろ盾になってくれるだろう。
ノアの協力があるとはいえ、シェンダートの後ろ盾があるわけじゃないからな…
ちなみに、一番会いたくないのは血統勇者だ。
「どうにかして会えないものか…」
「?会えるよ?」
「………は?」
「………?」
理解の追い付いていない俺に、コテンと首を傾げるノア。
いや、そんな風に可愛く小首を傾げられましても…
「え?マジで?」
「ざっつらいと」
な、何故に英語…
翻訳機能仕事しろ。
「い、いったいどうやって…」
嘘を言っているわけじゃないだろうが、勇者に会うなんてかなり難しいことだと思うんだが。
そんなの一体どうするつもりだ?
すると、ノアは自分を指さして自慢げに言った。
「領主の娘」
「………わ、忘れてた」
割と本気で殴られた。
で、人ごみを何とか切り抜けた俺たちは今、武器屋前にいる。
ここの武器屋はシェンダートでは有名な、ドワーフの営んでいる武器屋だそうだ。
ドワーフの親方は、何と言うかズングリムックリな筋肉男と言った感じだったが、かなり気さくで性格のいい人だった。
今回商人街にまで来ていたのは、ここに迷宮に潜るための武器を受け取りに来るためだ。
正直、このままの俺のレベルじゃ、何時死んでもおかしくないから。
現に今も――
「坊主…大丈夫なのか?それ」
「ふぇえ、ふぁいふぉうふふぇふふお(ええ、だいじょうぶですよ)」
「いや、もう、何言ってんのか全然分からねぇんだが…」
ノアに殴られ顔が腫れ上がっている。
大丈夫とは言ったが、HPもほぼ限界値だ。何時死んでもおかしくないレベル。
早急にレベルを上げなくてはならない…
「平気、気にしなくていい」
「ホントかよ…ノア嬢もちょっとやり過ぎじゃ――」
「なに」
「…いや、何でもない。それじゃ、もう出来とるから持って来る」
そう言うと、サッとノアから目を逸らし店の奥に消えていく親方さん。
その気持ちはよく分かるので、逃げたとか言えない。
「…そう言えば、俺の武器の作成ってノアに頼んでからまだ1日も経ってないよな?何でもう出来てるんだ?」
「ん?そのこと?」
実は今回の武器作成を頼んだのは昨日のことだ。
あの映像の中で、これからこの町で『蟹』と『獅子』の戦いが起こると、あの神たち(便宜上神と呼んでやることにした)は言っていた。
ならば、何とか切り抜けるだけの力が必要になると。俺はそう結論付けた。
理由?そんなの、あの『天秤』とか言う俺の担当が、俺が関わらないという事を許してくれる気がしないからだ。それ以外に確固とした理由があるだろうか?いや、ない。断言できる。
そうして、強くなることを望んだ俺は、今回だけ…今回だけシェンダート家の力を借りることにした。と、いう訳だ。
なのに、どうしてもう武器が完成しているのか…
鍛冶仕事ってもっと時間がかかるものじゃないのか?
それともアレか?また俺の常識を覆すビックリドッキリ発明があって、鍛冶の時間がバカみたいに短縮されてやがんのか?
考え出すときりがないので、ノアの返答を静かに待った。
――しかし、返って来たのは予想の斜め上をいく答えだ。
「前から依頼していた。それだけ」
もう、黙るしかなかった。
つまりなんだ?俺が頼まなくても、俺の武器は今日、俺の所に来ていたと?
目の前で、そんな事より褒めて?と言わんばかりの態度をとるノアに、呆れを通り越して恐怖の感情が湧く…
だってそうだろ?俺が何もしないでも、こいつの善意で俺の借金は爆発的に増えていくんだぞ?
「…なにそれ、コワイ」
「?」
しばらくすると、ガチャガチャと金属音と共に親方さんが戻ってきた。
手には短剣とガントレットらしきもの。
短剣は意匠の見事な鞘に収まっていて、確実にお高いであろうことが窺え、俺のSAN値はガリガリと、それこそ鉛筆削りにかけられた鉛筆の様に削れていった。
「ホレ、坊主。オマエさんの武器だ。持ってみな」
手渡された短剣を抜き、眺める。
刀身から柄にかけて、持ち手のグリップ以外全てが薄い黄色味のある乳白色で出来た艶やかな短剣だった。
形状は一般的な短剣とは違い、なんと表現するか迷う。おそらく直刀を短くした物に西洋剣の鍔を合わせたかの様…と、言うのが正しいんじゃないだろうか。
俺はまだ武器に明るい訳じゃ無いから、何とも言い難いが。
ただ、何と言うか…俺は、これを――
「――見た事がある?」
妙な既視感を感じ、短剣を『注視』する。
◆
≪毟り取った≫≪ユニーク≫≪変幻≫
魔爪プルケット・オフ
UniqueSkill
変幻EX
◆
危うく短剣を取り落とすところだった。
何なんだ、これは…!?
今までこんなユニークスキルの付いたアイテムは見た事が無かった。いや、本当に俺が見た事が無いだけって線もあるが…
これは………やはり、すごくたっかいのでは?
そして、しばらく眺めて俺は気付く。
この既視感の正体、≪毟り取った≫爪、と言う単語に…
「これ、もしかして――ラージマウスの爪、なのか?」
恐る恐ると言う言葉がピッタリだと自分で思うぐらいに、恐る恐る2人に確認を取った。
「…なぁ、嬢ちゃん。こいつにゃ、何も知らせてねぇんだよな?」
「…ん」
「なら、どうして――いや、詮索は無しだったな。まぁ、アレだけのモン弄らして貰ったんだ。文句はねぇよ。そうだ坊主。それはお前が武器として使っていたラージマウスの爪だ」
やはりそうらしい。
でも、あの爪がここまでの物になるとは思わなかった。
今鏡を見れば、俺はきっと信じられないと言った顔をしているだろう。
「…………あの」
「なんだ坊主?」
俺の質問に親方は何だかすごく誇らしげに何でも聞いてくれと言った。
実は、と言うか、最初からだが、俺にはどうしても聞いておきたかった事があった。
「――コレ、ぶっちゃけ御幾らです?」
空気が固まった気がしたのは、きっと気のせい…
◆
高原 作也
人族・18歳・男
≪天秤に触れし者≫≪恐怖を忘れえぬ者≫
≪迷宮初心者≫
職業 学生
Lv.2
HP3/20 MP15/15
Str.7
Vit.5
Int.5
Fai.4
Dex.40
Agi.6
Skill
全ての物の歯車Lv.1(0/10) 槍術Lv.1(0/10)
受け流しLv.2(8/20) 投擲Lv.1(0/10)
魔力制御Lv.1(7/10) 指導Lv.1(2/10)
追跡Lv.1(5/10)
EXP.220
NEXT EXP.300
Equip New!
≪毟り取った≫≪ユニーク≫≪変幻≫
魔爪プルケット・オフ
UniqueSkill
変幻EX
◆




