第147話 婚約の儀 ― 光花の誓い
ルクヴェル城・光聖の間。
聖堂のように高い天井。
壁には、歴代の“光の契約”を描いた壁画が静かに並んでいる。
中央には、金の彫刻が施された円卓。
その上に、二国の紋章が刻まれた誓約書が静かに置かれていた。
リリナが入室すると、
控えていた臣下や騎士たちが一斉に深く礼をする。
レンセリオンはすでに席の前に立っていた。
その視線が――リリナを捉えた瞬間。
わずかに、柔らかく揺れた。
それは、儀礼ではない色だった。
リリナは、胸がきゅっと締めつけられるのを感じた。
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アウレイン王が一歩進み出る。
「本日、ルクヴェル王国は――
セレフィア王国との盟約の証として、
レンセリオンとリリナ姫の婚約をここに正式に結ぶ。」
セリウス王もまた頷き、重々しく言葉を紡ぐ。
「光と命の国は、互いを支えあう友邦として、
未来をともに歩むことを誓う。」
静寂が降りる。
その中心に――ふたりが立つ。
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◆ 誓約書への署名
最初にペンを取ったのは、リリナだった。
震えそうになる指先をそっと押さえ、
自らの名を、静かに書き記す。
続いて、レンセリオンが署名する。
その筆跡は凛として、揺るぎなく、美しかった。
筆が置かれた瞬間――
儀式灯のやわらかな光が誓約書の金糸に反射し、
静かにきらめく。
アウレイン王が封紐を結び、
その結び目に軽く触れた。
控えていた騎士たちが、右拳を胸に当てる。
――それが、誓約が正式に結ばれた合図だった。
「……これで、形式は整いました。」
その言葉が、静かに“戻れぬ一線”を示していた。
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◆ 王家の証・光花の首飾り
レンセリオンが侍従から白金の小箱を受け取る。
蓋が開かれた瞬間――
光花を象った首飾りが、静かに光を返した。
淡い琥珀石が、胸の鼓動に呼応するように揺れる。
「リリナ。」
レンセリオンが一歩、近づく。
「この首飾りは……
ルクヴェル王家が婚約者へ贈る“証”です。
あなたが選んだ道を、僕も共に歩むという誓い。」
その声は、儀礼の言葉ではない。
ひとりの青年としての――本心だった。
リリナの呼吸が、わずかに揺れる。
「……受け取っていただけますか。」
リリナは、ゆっくりと頷いた。
「はい。光栄です。」
レンセリオンは慎重に手を伸ばし、
細いチェーンをリリナの首元へとかける。
光花が胸元に触れた、その瞬間――
やわらかな温もりが、静かに灯った。
胸を包む、不思議な安心感。
家の証。
未来の証。
そして――彼が差し出した、静かな想い。
すべてが、そこにあった。
レンセリオンは小さく微笑む。
「……とても似合っています、リリナ。」
その呼び方に――
リリナの胸が、もう一度あたたかく満ちていく。
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「これにて、両国の婚約の儀は成った!」
アウレイン王の声が響いた。
臣下たちが一斉に膝をつき、
光聖の間には荘厳な静寂が広がる。
その中心で――
リリナとレンセリオンは、しばらく視線を重ねた。
そして、そっと微笑み合う。
形式ではない。
義務だけでもない。
ふたりの心に――
ほんの小さな光が――
確かに、灯った瞬間だった。




