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黎光の器 ―七つの魂と選ばれた少女―  作者: mamaりこ* chatty
第二章 光の選定、影の目覚め
146/158

第146話 王たちの言葉、娘の胸に灯るもの

ルクヴェル城・謁見の間。


高天井から垂れる光紋の旗が静かに揺れる。

磨かれた白の大理石は、冬の湖面のように澄んでいた。


扉が開き、

セレフィア王セリウスとユスティーナ王妃が進み入る。


レンセリオンは国王アウレインの隣に立ち、

リリナはその背後で、胸の鼓動を落ち着けようとしていた。


――父と母の姿。

二ヶ月ぶり。

だけど今は“姫としての顔”を崩してはならない。


深く息を吸い、表情を整える。



アウレイン王が一歩進み出る。


「ようこそお越しくださった、セレフィア王。本日は遠路の訪問、心より礼を申し上げる。」


セリウス王は、古い友へ向けるような静かな眼差しで答える。


「こちらこそ、丁重なる迎えに感謝いたします。

……娘を預けている身として、この訪問は果たすべき務めであった。」


リリナは胸がじんと熱くなる。


“娘”の名を口にする――

それは公式の場ではめったにない。


アウレイン王は穏やかに頷き、息子へ視線を移す。


「レンセリオンは……実によく、リリナ姫を大切にしてくれている。

そのうえで、両国が望む形として“婚約”を結ぶのは自然な流れであろう。」


セリウス王の視線も、レンセリオンへ向けられた。


「レンセリオン殿下。」


レンセリオンが、静かに一歩踏み出す。

威厳と誠実さが同時に漂う、落ち着いた動きだった。


「娘を……どうか、よろしく頼む。」


国として、父として――

その言葉には重みと祈りが込められていた。


レンセリオンは胸へ手を添え、迷いなく応える。


「はい。

リリナ姫を……僕が守り抜きます。」


アウレイン王は満足げに頷き、

謁見の場は締めの空気へと移る。


「では、控室にて……両家で小さな茶会を設けよう。」


「賛同いたします。」


深い礼が互いに交わされ、

儀礼の幕は静かに降りた。



扉が閉じられた瞬間――

公式の空気はすっと消えた。


その途端、ユスティーナ王妃は娘へ駆け寄る。


「リリナ……!」


「お母様……!」


二ヶ月分の想いがあふれ、

母娘は強く抱きしめ合った。


温かい。

懐かしい。

この上なく安心する香り。


ユスティーナは娘の髪を撫でながら震える声で言う。


「あなたは……よく耐えましたね。

勇気ある娘です。誇りに思いますよ。」


リリナは涙をぬぐい、微笑む。


「婚約の儀が終わったら、一度帰りましょうね。

ルナも……あなたを待っていますよ。」


「……ルナ……!」


愛犬の姿を思い出した途端、

胸がほぐれ、笑みが浮かんだ。


その横で、セリウス王が静かに呼びかける。


「リリナ。」


「はい、お父様。」


リリナは姿勢を正し、父と向き合った。


セリウスは娘の肩に手を置き、

一瞬だけ言葉を探すように目を閉じてから告げた。


「……セレフィアの未来を、おまえに背負わせてしまった。」


リリナは、小さく首を振る。


「お父様とお母様は、とても仲睦まじくて……幸せです。

だから……私も、レンセリオン様とそうなります。」


それは――

政略結婚だった両親の歩みを理解した上での言葉。


静かな決意。

幼さではなく、“姫の覚悟”。


セリウス王は驚いたようにまばたきをし、

次いで、深く優しく娘を抱き寄せた。


「……強くなったな、リリナ。」


その一言には、

父として、王として――

あらゆる感情が静かに滲んでいた。

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