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黎光の器 ―七つの魂と選ばれた少女―  作者: mamaりこ* chatty
第二章 光の選定、影の目覚め
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第138話 目覚めの距離

リリナは、静かに瞳を開けた。


呼吸は穏やかで、

頭の奥には、まだ淡い光の余韻が残っている。


天蓋越しに揺れる柔らかな布。


それをぼんやりと見つめながら、ゆっくりと瞬きをした。


(……ここは?)


視線を巡らせる。


すると、とばりの影に寄り添うように――

誰かが、静かに横たわっていた。


――レンセリオンだった。


「レ、レンセリオン様……っ」


思わず小さく声を漏らし、上体を起こす。


その拍子に――


ぱたり、と。


ふたりの手が、離れた。


どうやら、手を繋いだまま眠っていたらしい。


そのわずかな動きで、

レンセリオンがゆっくりと瞼を開く。


一瞬、焦点の合わない瞳。


そして――


「リリナ姫!」


勢いよく起き上がる。


そのまま、距離を詰めるように身を乗り出し――


リリナの身体は、引き寄せられるように

その胸へと倒れ込んだ。


一瞬の、沈黙。


ふわりと、後頭部に添えられる大きな手。


耳元で、かすかに震える声が落ちる。


「……良かった。」


その一言に、

張り詰めていたすべてが滲んでいた。


リリナは、そっと顔を上げる。


近い。


息が触れ合いそうな距離。


胸が、跳ねる。


――と、その瞬間。


レンセリオンは、はっと我に返ったように身を引き――


体勢を崩し、そのままベッドの下へと落ちた。


「れ、レンセリオン様……!」


慌てて覗き込むリリナ。


だが彼はすぐに立ち上がり、

何事もなかったかのように姿勢を整えた。


――ただし。


耳まで、真っ赤に染めながら。


「……っ」


その様子に、思わず笑いがこぼれる。


「ふふっ……」


堪えきれない笑み。


レンセリオンはわずかに視線を逸らす。


リリナは、そんな彼へとそっと手を伸ばした。


指先が触れる。


レンセリオンの指が、びくりと震える。


ゆっくりと振り向くその視線と、目が合った。


リリナは、少しだけ照れながら微笑む。


「ありがとうございます。」


やわらかな声。


「私……眠っていたようですね。」


そして、繋いだ手をほんの少しだけ見つめる。


「この手が……私をここへ連れ戻してくれた気がします。」


その言葉に――

レンセリオンの強張っていた表情が、

静かにほどけていく。


そして。


まるで光が戻るように――


やわらかく、あたたかく、微笑んだ。

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