第137話 光の夢、魂が名を呼ぶとき
リリナは、夢を見ていた。
それは――言葉ではない。
けれど、心の深層へと静かに染み込むように、
ひとつの“理”が、ゆっくりとひらいていく。
――正義の魂。
――光の王。
――聖光竜ルクシオン。
幼い頃から知っていたはずの神話が、
まるで自分の奥底に刻まれていた“古い記憶”のように甦る。
視界が澄みわたる。
白い光に満ちた空間。
その中心に――ひとりの男が立っていた。
レンセリオン。
だが――違う。
その姿の奥にある“何か”を、
リリナは言葉ではなく、魂で理解した。
(……ルクシオン……?)
その存在は、静かに口を開く。
「黎光の羽よ。
ようやく“呼吸”を交わせたな。」
低く、澄んだ声。
どこまでも深く、遠くへと響いていく。
歩み寄るその動きは、人ではない。
光そのものが流れるように、
空間を滑ってくる。
「おまえの光は、まだ幼い。
だが確かに――“希望”の理を宿している。」
リリナは、無意識に後ずさった。
だがその眼差しは、
恐れではなく――どこか、見守るような優しさを帯びていた。
「怯えるな。
おまえの魂は、われが見守る光。」
ゆっくりと、手が伸びる。
リリナの胸――印の位置へ。
「これより先の道を歩むならば――
われを連れてゆけ。」
その言葉は、命令ではなかった。
けれど――
抗えない響きを持っていた。
「……ルクシオン……?」
胸の奥で、光が脈打つ。
印が、静かに熱を帯びていく。
そして――
避けることのできない理として、言葉が落ちた。
「器よ――
正義は、光なくして生まれぬ。」
その一言が、
まっすぐに心の中心を貫いた瞬間――
世界が、揺らいだ。
光がほどける。
境界が、崩れる。
白い輝きが、ゆっくりと遠ざかっていく。
沈んでいくように――
リリナの意識は、
まぶたの裏の光の中へと、静かに溶けていった。




