表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎光の器 ―七つの魂と選ばれた少女―  作者: mamaりこ* chatty
第二章 光の選定、影の目覚め
127/188

第127話 水の記憶、光の前で

リリナは身支度を整え、仕上げに従女マルナに髪をといてもらっていた。


鏡越しに目が合うと、マルナはにっこりと微笑む。


「レンセリオン様から直にお誘いされるなんて、光栄なことですね。

第四騎士団を率いていらっしゃるのでしょう?

騎士様でも在られるなんて……本当に素敵です」


リリナは微笑んで頷いた。


けれど胸の奥には、言葉にしづらい揺らぎが残っていた。


湖面にそっと触れたように、ひやりと波紋が広がる。


――あの、静かな水の瞳を思い出してしまうから。



レンセリオンは、王族専用の馬車でやって来た。


扉が開き、その姿が現れる。


白と金をまとった凛とした出立ち。

多くの女性の心を掴むであろうその姿に、リリナは思わず息を呑んだ。


胸の鼓動が、ひときわ強くなる。


「リリナ姫。

急な申し出に、お時間いただきありがとうございます」


端正な声が耳に届く。


「いえ……そんな。

ルクシオンの塔がどのようなところなのか、とても楽しみです」


差し出された手に導かれ、リリナは馬車へと乗り込んだ。



向かい合って座るふたり。


視線が合い、照れ笑いがこぼれる。


けれどその柔らかな空気の奥で、リリナの胸にはひそやかに“水の気配”が残っていた。


消えない想いは、静かに流れ続けている。



ルクシオンの塔に到着する。


これまで遠目でしか見たことのなかった塔の入り口に立ち、

リリナは思わず足を止めた。


天へと伸びる塔を見上げる。


塔の周囲だけ、空気がわずかに違っていた。


音が吸い込まれるように静まり、

足音さえ、どこか遠くで響いているように感じた。


その頂には――聖光竜ルクシオンがいた。


まるで見下ろすように、静かにこちらを見つめている。


こんなにも近くでその姿を目にするのは、騎士団本部の塀の上で遭遇して以来だった。


「ルクシオンが……こちらを見ています」


リリナの呟きに、レンセリオンも同じように空を仰ぐ。


「ええ。

今日は、僕たちを待っているかのように、あの場所から動かないんです」


リリナは彼の横顔を見て、再び空へと視線を戻した。


「待ってるって……分かるんですか?」


「思い過ごしかもしれません。

でも……今日は、いつもと違う気がするんです」


その言葉に、リリナは息を呑んだ。


――私も、セレフィアでは神獣アウルを何度も見てしまう。

その変化に、心が反応してしまう。


だからこそ分かる。


彼の感じている“違い”は、きっと本物だ。



レンセリオンが扉の前で足を止めた。


「この扉……僕にしか開けられないんです」


「え……?」


驚いて振り向くリリナに、彼は静かに続ける。


「他の者が押しても開きません。

僕が鍵なんです」


一瞬の沈黙。


「……セレフィアにも、そんな場所がありますか?」


視線が重なる。


リリナはゆっくりと首を横に振った。


「思い当たる場所はありません……。

でも……どこかにあるのでしょうか。

私にしか開けない扉が……」


言葉が途切れ、二人の間に静寂が落ちる。


レンセリオンは扉へ向き直り、手を当てた。


次の瞬間――


重い響きを伴い、扉はゆっくりと開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ