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第109話 雨季の始まり

王城から王立学院へ向かう馬車の中。

レンセリオンは昨夜の情景を静かに反芻していた。


昨夜遅く――カーディアスからの報告は、簡潔で淡々としていた。


〈第四騎士団情報班・報告〉

・南区第三倉庫街には“定期的に現れる密輸馬車”が数台確認されている

・運び手は毎回違い、依頼主の特定は困難

・申告名は毎回バラバラ(雑貨・生活用品・工芸品など)

・中身はどれも“安価な小物類”

・脱税額は小さい

・ナイトクロウ商会との関連は“現時点で不明”


つまり――あくまで“小規模な脱税目的の密輸”で、特別な薬物調合に繋がるような痕跡は見当たらない。


ならば、裏で動く馬車を追うしかない。

線がある限り、たどる価値はある。


レンセリオンは視線を伏せた。


昨夜預けた品の記憶がよぎる。


――乾燥した灰紫がかった薄い葉。


ヴィオラから受け取った“夜の気をほぐす品”。

店から出た直後、レンセリオンはすぐにカーディアスへそれを託した。


第四騎士団の薬草鑑定に回している。

結果はまだ来ていない。


(……バリーク草に似ていたが、違う。

 あれは……何の草だ?)


その違和感だけが、薄く胸に残っている。


ぽつり、と馬車の窓を雨粒が叩いた。


やがて雨脚は強くなり、灰色の景色が静かに流れていく。


「……雨季か」


低くこぼれた声には、どこか確信めいた響きがあった。

今日の雨は止まないだろう。


(季節が……動きはじめた)


背筋を正し、レンセリオンは思考を深く沈めた。

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