1/136
第1話 光に満ちた世界(プロローグ①)
光が世界を満たしていた時代。
人々はその世界を、ルミナリエと呼んだ。
その東に、セレフィア王国という国がある。
豊かな水脈と緑に抱かれ、風は歌い、陽はやさしく降り注ぐ。
その地に生きる人々は、命の循環を信じ、与えることを尊びながら日々を紡いでいた。
王都の中心には、国の象徴である大樹がそびえている。
枝は天を抱き、根は大地の奥で眠る魂たちと結ばれていた。
人々はその樹を“息吹の母”と呼び、日々の恵みと命の巡りに祈りを捧げてきた。
この国に伝わる教えは、こう語る。
――「命は奪われず、姿を変えて還る」
奪うよりも、与えること。
争うよりも、照らすこと。
それが、この国に流れる“光の理”であり、
セレフィアの血を継ぐ者たちが守り続けてきた祈りだった。
だが、その穏やかな時代にも、
ひとつだけ――逃れられぬ宿命があった。
「器は、希望を生むために在る」
それはまだ記憶に新しい出来事だった。
先代の王妃――かつて“器の魂”を宿していた者が静かに息を引き取ったのは、ついこの春のこと。
国中が祈りと沈黙に包まれる中、王妃は「次の光は、あなたの手の中に」と言い残して逝ったという。
そしてほどなくして、現王の妃が懐妊した。
誰もが、あの言葉の意味を悟っていた。
――器の魂は、巡ったのだ。
そして、まだ誰も知らない。
その光が、
何を止めるのかを。




