心の敬語
心の敬語について話します。私は老人介護施設で働いているのですが、もしあなたのご家族が暮らす老人介護施設でお年寄りに
「便所?」
と聞いていた職員がいたとしましょう。
あなたはどう思いますか? 普通は
「おトイレに行かれますか」
などの言葉かけの方が相応しいと思うのではないでしょうか。
ですから、トイレに行きたいかの声掛けに
「便所?」
と言うのは言葉遣いとしては乱暴に聞こえます。
しかし、「便所?」と聞くには理由があります。
そこを少し話していきます。
まず、
「おトイレに行かれますか」
と
「便所?」
の言葉の長さを考えてみます。
当然、
「おトイレに行かれますか」
のほうが長いですよね。これが耳の遠くなったお年寄りには聞き取りづらい場合があります。
そこで老人介護施設の職員は
「便所?」
と聞くわけです。こちらの言葉の方が短くて聞き取りやすいですからね。
もう一つの理由として、「トイレ」という言葉が分からないと言うパターンが想定されるからです。
まず、トイレと言う言葉は今から60年前に東京オリンピックが開催されるにあたって日本で使われ出した言葉です。
今老人介護施設に入居あるいは通所しているお年寄りの半数以上は後期高齢者に当たる85歳以上の方たちになります。そうなりますと、トイレと言う言葉を使い出した時期は東京に住んでいた場合で25歳、地方や更に高齢になってくると30歳以降に使い出す事になります。
つまり、お年寄りにとって「トイレ」と言う言葉は今でいう所の「エビデンス」とか「バズる」だとか比較的新しい言葉に近く意味が通じにくい場合があり得ます。
高齢の人や認知症の症状のある人には「トイレ」より「便所」の方が伝わると言う事です。
そして、敬語であったり尊敬語は標準語より言葉が長くなる傾向があり、難聴を持つお年寄りには聞き取りづらい言葉遣いになる可能性が高く、それ故に私たち介護職員は敢えて乱暴に聞こえる「便所?」という言葉を使う事になる訳です。
これを私は「心の敬語」とよんでいます。
お相手の立場や状況によって敬語を使う事が敬意を表していない可能性がある訳です。逆に敬語を使わない事でお年寄りの自尊心や自立心を敬い、敬意を表する。と言う事です。
敬意を持っているからこそ敬語を使わない。相手の聞き取りやすい言葉で話す。
敬意は言葉以外、行動で示せばいい。
これが私の考える心の敬語です。
ご清聴ありがとうございました。
どっかのブログに書いたものです。




