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青で春で馬鹿

作者: 中村雨歩
掲載日:2025/12/28

「稲川くん。僕は乳首の色に興味があるのだが、おかしいかね?」


 また、結城がおかしな事を言っている。いつもと同じように付き合う。


「それは興味深いね」


 その返答に結城は嬉しそうな顔をした。望んでいた応えだったのだろう。


「小泉さんと僕の乳首は同じ色だろうか?」


 この馬鹿の質問は唐突だ。馬鹿がほとばしっている。女子のことになるとアホにターボがかかる。


「同じ、じゃないのかな・・・?」


 アホな質問に恐る恐る応える。目の前のアホは、制服の前を開け、ワイシャツのボタンを外し、その下のTシャツを捲り上げ、見たくもない、乳首を披露してきた。見たくもないから、遠くを見るように目を逸らした。


「ほら、目を逸らした。これが小泉さんの乳首だったら君は凝視したはずだ。間違っても目を逸らしはしないはずだ」


 おっしゃる通りだが、物が違う。


「その通りだけど、目の前の現実は変えられない。俺の目の前にあるのは、結城くん、君の乳首だ。小泉さんの乳首じゃない」


「稲川くん。その通りだ。違うんだよ。全く違う。僕の仮説を聞いてくれるかい?」


「聞かせて下さい」アホに付き合ってやろうと思うが、異常に迫力がある。



「稲川くん。標高線を見たことがあるかい?」


「ああ、社会科の授業でやったね。それが何?」

 もう、段々飽きて来たぞ。乳首と何の関係があるのだと言うのだろう?


「標高が高い所と、低い所では成る実が違う。当然、大きさも色も違う」


 こいつ何も言ってるんだ?こんなんだから、友達が俺ぐらいしかいないのだろう。


「どういうこと?」


「女子は標高が高い」


「は?あ、ああ、オッパイのこと?」


「稲川くん、よくその単語を恥ずかしげもなく言えるね。君は勇者か賢者か、頭がおかしいやつだよ」


 お前に言われたくない。お前は勇者でも賢者でもなく、間違いなく頭がおかしいヤツだ。


「で、何が言いたいの?」


「ズバリ言うと、標高が高い小泉さんの果実の実と僕の実はおそらく違う実りを見せると思うんだ。つまり、平地と産地は違うということだよ」


 小泉さんの実りはともかく、お前のものを実とか言うな、気持ち悪いわ!と叫びたくなる。


「うん・・・違うかもしれないね。それで何が言いたいの?」


「見たいんだ」


「は?」


「見たいんだよ」


「小泉さんのオッパイを?無理だろう・・」


「研究のためだ。人においても標高の違いによって実る果実は違うのか?を知りたいんだ」


「お前何を言ってるだ?お前馬鹿だろう?」


「そう思うよね・・・。こんな学者風で話したら、見せてくるかな?と思ったけど、ダメかな?」


「ダメに決まってるだろ。バカか。下手したら、停学か退学だよ」


「中学生には停学も退学も無いでしょう」


「お前は異例で退学にした方がいいよ。そんなに小泉さんのオッパイが見たいの?」


「うん」


「好きな人って小泉さんだっけ?」


「いや、押沢さん」


「だったら、押沢さんの乳首を見るために全力を尽くしたらいいじゃん」


「押沢さんは、好きすぎて眩しくて見えない・・・」


「お前・・・小泉さんに殴り殺されろ・・・」


 今日も空は青く、雲は白い。そして、隣りのアホもいつも通りだ。


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