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ちっぱいメイドは玉の輿&寿退社の夢を見れるか!?~伯爵家の下っ端メイドですが ハニトラしてこいと命令されました~  作者: 岩爺


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王国歴1669年10月21日⑩:魔石と異界の門

「思い返せば26年前…儂がまだ里に居た頃じゃった…」


 グララブは話の合間に料理を頬張る。それは咀嚼する間に昔を思い出しているようだった。

私もその沈黙の間に料理を口に運ぶ。口の中が幸せになり、胃の熱さも少しだけ治まる。


「儂は次期族長と(もく)される程に優秀で、若手のリーダーじゃった。儂の発案で農地を広げる事になり、その為の溜め池を作る計画が持ち上がったのじゃ…そしてその掘削途中、儂はとてつもなく大きな魔石を発見した…それが全ての始まりじゃった」

「……魔石……ですか?」

「魔石については私が説明しましょう」


 私は知らない言葉を素直に聞き返した。するとそれまで静かにしていたシーナルが助け船を出してくれる。


「魔石とは長く生きた魔物などの体内に出来る、魔力の宝石です。魔物は生まれながらに強化魔法のような魔力循環を身体全体に巡らすのですが、それが結晶化した物だと考えられています」


 シーナルは右手を持ち上げると、その指輪に付いた青黒い宝石を見せてきた。その宝石は小指の先程の大きさで、中心がぼんやりと光っているように感じる。


「これは150年ぐらい生きた魔物の魔石です。これでも大きな邸宅の1軒ぐらいの価値があります」

「それが…そんな価値があるんですか?」

「そうですよ。魔石は魔法の威力を高めてくれますし、破壊すれば膨大な魔力を発生させます。この魔石を壊した時の魔力で、街一つを灰燼にできる威力の魔法を使えます」

「そ、それは凄いですね…それでグララブさんが見つけた魔石って、どれぐらいなんですか?」


 グララブを見ると私が作った果実水を舐めている所だった。グララブはグラスを置くと両手を大きく広げて見せる。


「これぐらいじゃ、とても一人では抱えられん程に大きかったぞい?」

「もしそれが本当なら、その魔物は数万年は生きていた事になります。恐らく神話に出てくる原始龍の一体か、女神の使いだった聖獣ではないかと推測できます」


 私は教会に通うものの神話については詳しくないのだが、それでも原始龍や聖獣については聞いた事がある。なんでも山の様に大きかったとか、夜の空に浮かぶ星にまで行ったとか、そんな想像もできないような存在だったらしい。


「まぁ、そんな魔石を掘り当てても儂等ハーフリングでは使い道がない。そんな訳で知り合いの行商に頼んで王都に知らせてもらったんじゃ…今思えば迂闊じゃった…」


 グララブは果実水を飲み干すと、苦々し気に顔を歪ませる。


「行商が旅の途中で話したんじゃろう…奴等が魔石を奪いに来たんじゃ」

「奴等……ですか?」

「邪神崇拝集団『異界の法』と呼ばれる集団です」

「…邪神…異界の法…何だか凄い名前ですね…」


 私の言葉にシーナルが微笑む。それとは逆にグララブは大きな溜息を吐き、ヒイロのワインを飲み始める。


「異界の法の目的は、魔石を破壊した時の魔力で異界への門を開く事なのです」

「それで魔石を奪ったんですか……その異界の門って、開いてどうするんですか?」

「異界の者を呼び込む、または異界へと旅立ち、異界の法…知識を得るんです」


 シーナルは背凭(せもた)れに体重を預けると、天井のシャンデリアを眩しそうに眺めた。


「そう、異界の法…この世界とは全く別の理論で組み立てられた文明…我々が思いも寄らない事を気付かせてくれる切欠(きっかけ)…そんな夢のような知識です」

「…それって役に立つんですか?」


 私の問いに、シーナルは目を細めて微笑む。それは幼子に世界を教える先生の顔だった。


「このヨクアール王国は建国して1669年経ちますが、その初代国王は異界の者…なんて国定禁書には記されていたりします。その他にも言葉、法律、製鉄法、魔法などこの1700年の間に確立されましたが、それは試行錯誤もなく突然確立された知識や技術なのです。実はこれらは異界の者から与えられた知識だという学説があります」

「…なんだか規模が大きすぎて、想像もつかないですね……」

「なんなら人間やエルフ、ドワーフ、ハーフリング、獣人、竜人などの亜人や、ドラゴン、魔獣、魔物、さらには牛や馬などの家畜など、あらゆる生物や植物も異界から流れてきてこの世界に適合したのだという学説もあります」

「…すいません、話についていけません…」

「あぁ…すみません、学説的にはここからが面白い所なんですが、今回はここまでにしておきましょう…そんな訳で、異界の門を開くと新しい知識や生物が増える可能性があるという事です」

「それじゃ異界の門を開けば良い事尽くしじゃないですか?異界の法って、実は良い集団?」


 シーナルは私の言葉に大きく頷くと、満足したように私を見る。


「ところがそう上手くはいかないんです。この世界に適合できる種ならば良いのですが、もし適合できない種が呼び込まれた時はどうなるでしょう?例えばコマイさんが異界に呼ばれ、その世界では皮膚が少しずつ腐っていくとしたら?」

「…う~ん、呼んだヤツを恨む…あとは苦しんで暴れるとか…ですかね?」

「大正解です!」


 私の答えにシーナルは手を叩いた。


「王国の南方領の大半が砂漠だと言うのは知ってますか?」

「はい、植物が育たず人が住めない環境だって聞いた事があります」

「実はあれは350年ほど前、異界の法が門を開いて魔人を呼び出した跡なんです」

「そうなんですか!?」


 私は驚いてしまい、思わず大きな声を出してしまった。しかしビビィは料理に集中しているのか気付きもせず、ヒイロとグララブは知っていたのか驚きもしなかった。


「そうですよ、以前は肥沃な土地だったらしいですが、そこに呼び出された魔人は非常に苦しみ、暴れ、呪詛を吐き、死ぬまでの3年間で全てを砂漠にしてしまったそうです。ちなみに植樹しても植物が育たないのは呪いのせいだと言われていて、生物もその影響を受けるらしいです」


 私はシーナルの説明を整理してみる。異界の門はどうやら大昔から何度も開いており、その度に何らかの知識が得られたのは理解できた。しかし良い事ばかりではないらしい。その時、一つの疑問が浮かび上がった。


「…異界の法ってそんな昔から活動してたんですか?」

「少なくとも350年前の災害は異界の法の仕業ですが、それ以前は不明です。異界の門自体は年を経た魔物が討伐された時に誤って魔石が割れる、経年劣化で壊れる、または異界で莫大な魔力が暴走し門が開かれるなど、そんな自然発生する状況は幾らでも想定できます。異界の門は大小問わなければ、これまでに何千と開いているはずです。その現象を人工的に再現しようとしているのが異界の法なんです」

「へぇ…つまり何が出るか分からないビックリ箱を開けようとするのが、異界の法って集団なんですね?」


 私の言葉にシーナルが悲しそうな顔をする。


「…以前は異界からの知識を研究する真面目な一学派だったんですけどね…100年前まではそれが正道派で、今の邪神崇拝教団と呼ばれる思想集団は邪道派だったんですよ…」

「なんかシーナルさん、凄く詳しいですね?」

「そりゃもう、25年前までは異界の法に所属してましたから」


 シーナルの呟きに私は凍り付く。さすがのビビィもこの時ばかりはシーナルの顔を見た。

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