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ちっぱいメイドは玉の輿&寿退社の夢を見れるか!?~伯爵家の下っ端メイドですが ハニトラしてこいと命令されました~  作者: 岩爺


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13/21

王国歴1669年10月21日⑦:再び土下座!そして号泣!!

 私はキースの部屋に移動した後、ソファに座ったキースの前に正座した。

キースの部屋の内装はヒイロのと大差ないのだが、ベッドだけは天蓋付きと違っている。床には2人の脱ぎ散らかした衣類と、カリーナが回収していたのか私が被っていた女優帽が鏡台の椅子に置かれていた。


「あの~この度は…本当に申し訳ありませんでした!」


 私は素直に土下座した。

カリーナと同じローブ姿のキースは、バンダナで隠した頭を軽く掻く。


「あ~…怒ってねぇとは言わねぇが、俺に女を殴る趣味は無ぇ。今回は特別に許してやる」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし酒は禁止な?お前ぇ、相当に酒癖が悪いぞ?」

「…お酒、駄目ですか?」

「駄目に決まってんだろ!これを見ろ!」


 キースはバンダナを外すと、首を左右に振って両側頭部を私に見せる。左右の耳の上辺りに拳大のハゲが出来ていた。


「こんだけ毟られたんだぞ!これでもまだ酒を飲むってぇのかッ!?」

「ご、ごめんなさい!…けど、ヒイロさんと話をしたいので…」

「………どういう事だ?」


 私の返答にキースが眉を顰める。

私は素直にヒイロと話したい事、しかし男性とまともに話した経験がないので酒の力を借りたい事を話した。そしてグララブにはすでにお願いしており、昨日より量を減らす事を約束する。


「ヒイロさんとは、もっと…話してみたいんです。けど自分じゃ自信が無くて…あと9日しか居ないんだったら、出来る事はしておきたいんです!」

「あ、この馬鹿ッ!!」


 キースは私の言葉に驚き、そして頭を抱えた。

ふと見るとキースの横に座っていたカリーナが呆然とし、私とキースの顔を交互に見比べる。


「………えっと……キース?……あと9日で……この街を出ていくの?」

「あ~~~…カリーナ、そういえば言ってなかったな……」

「……また戻ってくるの?」

「い、いや…そのまま次の街に行くから……もう戻って来れねぇと思う…」

「………そっか」


 カリーナはソファから立ち上がると、ローブを脱いで裸になった。そして床に脱ぎ捨てられた服を拾うと順番に身に付けていく。最後に鏡台に置かれた装飾品を身に付けると髪を整え、私の方を向いた。


「コマイ、帰ろっか」

「え?」

「お、おい、カリーナ…」


 驚く私と戸惑うキースに、カリーナは半眼のまま高楊枝をカリリと嚙んだ。


「『天井知らず』は9日後に街を出る、それは決定してるのよ?ハニトラは失敗したわ。これ以上ここに居るのは無駄なのよ」

「…けど、私…グララブさんとシーナルさんと約束して…」

「……そぅ…それじゃアンタは残りなさいな、お金はコーモノに言って届けさせるから」


 カリーナはそう言うとメイクボックスを乱暴に掴み、女優帽を被ると扉の方に向かう。


「な、なぁ、カリーナ…言わなかった事は謝るからよぉ…」

「さよなら、キース」


 カリーナは振り向きもせずに廊下に出ると、後ろ手で勢いよく扉を閉めた。何も言えずに見送った私は恐る恐るキースの方を振り向く。キースは膝に腕を乗せて項垂れたまま、身動き一つ取らなかった。


「わ、わたし…秘密にしてたなんて知らなかったから…」

「………はぁ………お前も帰れ……」


 溜息交じりのキースの言葉に、私は小さく頭を下げると部屋を出た。

廊下に出ると階段を目指すカリーナの姿が見える。私の気配に気付いたのかカリーナは軽くこちらを見たが、すぐに前を見ると足早に階段を駆け下りていった。

 私も1階のロビーに駆け下りると、カリーナは宿屋の付け待ちの馬車に乗り込む所だった。


「あれ~?そんなに急いでどうしたの?」


 背後から幼い声が飛ぶ。振り向けばグララブとヒイロが中庭からロビーに戻ってくる所だった。


「あ、あの、カリーナさんが…私、知らないなんて知らなくて…」

「す、すまん!嬢ちゃんに口止めするの忘れておったわ!」


 私のしどろもどろの話で理解したのか、グララブは頭を抱えた。私が馬車に視線を戻すと、その姿はすでに消えていた。





 私達3人は食堂に移動すると、とりあえず入り口の手近なテーブルに着く。深刻な話になりそうなのでシーナルとビビィの席とは離れた場所を選んだ。


「…そうか、キースはカリーナに言っておらなんだか…」

「…まぁ、言いにくい事ですからね…」


 困った顔で天井を仰ぐグララブに、ヒイロは窓の外を見ながら同意した。


「いつかは伝えねばならんが…他からバレるのは痛いのぉ…」

「……そうでしょうか?自分で伝えるのも辛いものがありますから…逆にコマイちゃんが零した事が良かったかもしれませんよ?」

「ふぅむ…ものは考えようじゃのう…」


 2人の煮え切らない話を聞きながら、私はちょっとした疑問が思い浮かんだので聞いてみた。


「あの~、聞いてもいいでしょうか?」

「なんじゃ、何が聞きたい?」

「みんな、今生の別れみたいに言ってますけど…冒険が一段落ついたら街に戻ってくればいいじゃないですか?すぐに次の街に旅立つ必要も無いですよね?」


 私の問いにグララブとヒイロが顔を見合わせる。


「まぁ…そうなんじゃがな…」

「ははは…そう率直に言われると困るなぁ…」

「嬢ちゃん、先にも言ったが儂等は先の事が判らん。なんなら明日死ぬかもしれん」

「まぁ…そんな事も言ってましたね…」

「そんな立場に居るとな、何かこう…居場所が無いんじゃ」

「居場所が…ですか?」


 私の言葉にヒイロは再び窓の外を見る。グララブは腕を組み、表情を硬くした。


「冒険は生き様じゃ、問題事があれば首を突っ込まざるを得ん。そんな人間は一所(ひとところ)に居辛い。人と出会えば必ず別れがある。別れる時は、それが最期と覚悟して別れるんじゃ」

「けど、出来るならやっぱり戻るべきだと…」

「それじゃあ嬢ちゃん、ちっと想像してみい…これが最期と涙して別れた友と、3日後に再会する気まずさを」


 私も腕を組んで想像しようとし、よく似た過去の光景が浮かんできた。

豪農の家に嫁いだ次女が3か月で出戻った時の、何とも言えない空気を思い出したのだ。帰ってきた次女の気まずさ、出迎えた両親の引き攣った笑顔、祝って送り出した私達の無駄になった感情。出来れば二度と体験したくない雰囲気だった。


「そ、それは…顔を合わせづらいですね…」

「そうじゃろ?だから冒険の後は戻らず、次の街へ行くんじゃよ」

「けどそれじゃ…いつまで経っても家族なんて作れませんよ…」

「痛い所を突くのぉ…もちろん儂等も家庭を持ちたいが、問題事を知る度に家を飛び出す阿呆に女子(おなご)を付き合わすのも酷じゃろ?」


 私はグララブの話に納得しかけ、途中で思い直した。


「…女性に迷惑かけたくないなら、近付かなきゃいいじゃないですか?」

「嬢ちゃん、それはあまりに酷じゃ…明日も知れぬとなれば不安も凄いんじゃよ?女性とキスしたいし、乳の一つも揉みたいんじゃ!」

「やっぱりスケベなだけじゃないですかッ!!」


 憤慨する私にグララブはケラケラと笑うが、すぐに寂しそうに笑った。


「嬢ちゃんの言う通り、付き合わないのが互いの為…そう思っておるのがヒイロなんじゃ」

「……え?」


 グララブの言葉に、私は思わずヒイロを見た。ヒイロは私の視線に気付くと、いつものように優しく微笑んだ。


「このヒイロはの…13の時から儂等のパーティに入っておる。もう9年になるが、まだ…その…女を知らんのじゃ…縁ができれば、お互いが傷付くと考えておる」

「そんな!………そんなのって………」


 私は自分の発言も忘れ、ヒイロの考えを悲しく感じてしまった。冒険の為に独りを選び、誰の記憶に残らずに死んでいくと言うのだ。

 私の困惑を察したのかグララブは私の頭を撫でてくれた。


「嬢ちゃんは優しいのぉ…だからヒイロと仲良くしてほしいんじゃ。儂も、シーナルも、キースも冒険者として覚悟しておる。しかしヒイロは付き合わせてしまっただけじゃ」

「グララブさん、俺だって冒険で死ぬ覚悟をしてますよ」

「それはただの捨て鉢じゃよ…男は女の為に死ねれば本望…”世界の為”なんて御題目は嘘くさいぞ?せめてこの世を、女を楽しんでから言う言葉じゃな」


 グララブの乳を揉む仕草に、ヒイロは頬を赤くしてそっぽを見る。なんだかその仕草が可愛く思え、私は思わず笑ってしまった。


「ヒイロさん、何だったら私のを揉みますか?結婚してくれたら存分にどうぞ!」

「嬢ちゃん、そりゃ揉む物があってから言うもんじゃ!翼が無ければ飛べんわい!」


 私の冗談にグララブが爽快に笑い、ヒイロの頬はさらに赤くなった。私はそんな2人の人間臭い仕草に、何だか涙腺が緩みそうになる。


「…こんな話を聞いて、私はみんなの事を忘れられなくなりました。多分死ぬまで憶えているし、これからは沢山の人に話すと思います。だから詳しく話せるように、私はもっとみんなを知りたい…もっとみんなと話したいんです!!」

「……嬢ちゃん……別れが辛くなるぞ?」

「だったら別れなければいいんです!みんなが帰ってきたくなるぐらい…私に惚れさせてみせます!」


 私は椅子から立ち上がり、2人を指差して宣言する。

2人は驚いたように目を丸くした。そしてグララブは微笑み、ヒイロは困惑したように顔を背ける。


「ふむ、何とも頼もしい嬢ちゃんじゃ…嬢ちゃんががもう少し大人だったら、本気でヒイロの嫁にと考えてしまう所じゃ」

「失礼な、これでも立派なレディです!来年早々には16歳になるんですから!!」

「「16歳!?」」

「…え?」


 目の前の2人は飛び上がらんばかりに驚く。私は2人が驚く理由が判らなかった。


「…儂ゃてっきり、13歳ぐらいだと思っておったわ…」

「お、俺は10歳ぐらいかと……」

「うわぁぁぁぁぁァァァァァッ!!」


私はその場に崩れ落ちて号泣した。

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